緊急事態宣言が解除され、都民の森の登山道とバスの運行も再開されたため、三頭山に行きました。今回は三頭山の大まかな植生も併せて紹介します。
森林館(標高1043m)から三頭大滝(標高1115m)に向かいます。
三頭大滝~ムシカリ峠(標高1430m)は沢沿いのコースです。沢沿いではカツラ、サワグルミ、シオジなどが優占種です。カエデ類(特にオオイタヤメイゲツ)も多かったです。
カツラ。葉は単葉でハート形です。根元からひこばえを出すのも特徴です。
サワグルミ。幹は真っ直ぐに伸び、葉は奇数羽状複葉です。クルミ科ですが、オニグルミとは大分違った実をつけます。
シオジ。縦に割れ目の入る樹皮と奇数羽状複葉の葉がサワグルミに似ていますが、小葉はサワグルミよりも少ないです。サワグルミがクルミ科なのに対し、シオジはモクセイ科です。
ムシカリ峠から山頂(標高1531m)にかけての東側斜面はブナ林です。今回は行きませんでしたが、石山の路・深山の路~大沢山(標高1482m)~ムシカリ峠にもブナが多いです。西側斜面はミズナラ・クリなどの二次林になっています。
太平洋型ブナ林です。日本海型ブナ林に比べるとブナの密度が低く、イヌブナ・ミズナラ・カエデ類などとの混交林となります。三頭山ではブナの実生や稚樹が殆ど育っていないため、将来は消滅することが予測されます。
三頭山で見られる最も若いブナは、幹径10cm(樹齢40年)くらいです。1980年頃までは三頭山でもブナが更新できていたのでしょうか?
山頂下にあるブナの大木です。枝を横に伸ばしています。
新緑のブナはとても美しいです。
山頂からは鶴峠方面に向かいます。鶴峠方面にもブナが多いです。
ブナの樹皮。コケ類や地衣類で斑模様になる樹皮も美しいです。
鶴峠方面の道には、三頭山最大級のブナがあります。
鶴峠には下山せず、奥多摩湖方面へ向かう道に行きます。三頭山の北西斜面です。
北西斜面はイヌブナが優占種です。ブナは尾根沿い、イヌブナは斜面に生える傾向があります。幹は腐りやすいですが、ブナと違って根元から萌芽するので株の寿命は長いです。イヌブナも実生や稚樹は殆ど見られませんが、萌芽再生できるのですぐに消滅することはなさそうです。
暫く進むと、奥多摩湖からの道に合流します。合流点からは再び三頭山方面に戻り、御堂峠から鞘口峠(標高1142m)回りで下山します。
尚、奥多摩湖方面に向かう道である三頭山~ヌカザス山(標高1175m)の区間にもブナが多いです。
御堂峠~鞘口峠の区間のブナ。三頭山のブナ林にはササが見られません。
ササはブナの実生の更新を阻害するため、本来であればササがない点はブナの更新に有利に働くはずです。しかし、ブナの実生が殆ど見られないのは、積雪が少ないことで種子が乾燥死・凍結死している可能性があります。
鞘口峠から森林館に向かい、本日の山歩きは終わりです。久々に山歩きができたのと、ブナの新緑が見られて良かったです。
【コースタイム】
森林館9:24
三頭大滝9:45
ムシカリ峠10:50
三頭山山頂11:30~11:47
奥多摩湖方面分岐13:04
鶴峠方面分岐13:48
御堂峠14:04
鞘口峠14:48
森林館14:58