先日、高知県にお住まいの古庵様からハナガガシ生育地の情報を教えていただき、松尾八幡宮と併せて連休中に見に行くことにしました。文献にも載っていなかった秘境のような生育地です。

 

【ハナガガシのおさらい】

四国(高知・愛媛県)、九州(大分・熊本・宮崎・鹿児島県)に分布する日本固有種で、環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。生育地の殆どは社寺林ですが、宮崎県綾町などでは丘陵帯の谷筋の斜面下部に自生するそうです。四国では2018年に高知県須崎市上分で初めて社寺林以外で生育が確認されました。四国ではこれまで社寺林でしか確認されていなかったため、自然分布なのか疑問視する意見がありましたが、須崎市での発見により四国にも自然分布していたことが明らかになりました。

 

今回、教えていただいたハナガガシ生育地は、土佐市北地の闇谷(くらたに)神社です。闇谷神社は、ハナガガシ群落のある松尾八幡宮(土佐市甲原238)から約1.4km北東に位置しています。高知県立牧野植物園は2001~2002年頃に調査・確認しているそうです。

 

境内にはハナガガシの成木が4本と、多数の若木が見られます。また、切株からの萌芽個体も1株あります。

社殿裏側にある板根を張らせた個体です。

 

社殿奥に闇谷神社で最大のハナガガシがあります。

幹が真っ直ぐに伸びていて、存在感があります。

この個体は古庵様によると胸高幹囲り335cm(円周率3.14で割ると胸高幹径1m以上)で、高知県内では最大級のハナガガシだそうです。私の目測ですが、樹高は25mくらいでしょうか?

境内には他に(私が識別できた樹種として)、ツブラジイ、アラカシ、ヤブニッケイ、シロバイ、ミミズバイ、カンザブロウノキ、タイミンタチバナ、ヤマモガシ、ヤブツバキ、サカキなどがありました。関東では見ない樹種が多いため、同定できなかった木もありました。

  

続いて、土佐市指定天然記念物の松尾八幡宮です。2017年12月以来の訪問です。

上の2枚の写真は、2017年12月撮影のものです。

ハナガガシの樹皮です。東京・林試の森公園のハナガガシの樹皮は滑らかですが、松尾八幡宮では幹にコケが生えた個体が多かったです。湿度が高いのでしょうか?

土壌が浅く、岩盤が露出した場所もあります。急斜面に生える個体では、板根が顕著でした。

境内の高木の殆どがハナガガシで、他にはアラカシ、ツブラジイ、ヤブニッケイ、タブノキ、ミミズバイ、タイミンタチバナ、ヤブツバキ、サカキ、アセビ、イヌマキなども見られました。 

尚、土佐市には高岡町乙にも同名の神社があるので、観察に訪れる方は充分ご注意ください。ハナガガシがあるのは土佐市甲原238の松尾八幡宮です(私は初めて高知に来た時、高岡町乙の方に行ってしまい、ハナガガシを見られなかったという苦い思い出があります)。

 

土佐で採集したハナガガシのどんぐりです。

左側2個が闇谷神社、右側2個が松尾八幡宮で採集したどんぐりです。2017年12月の訪問時には全くどんぐりがありませんでしたが、2019年度は高知県のハナガガシが豊作年だったようで、沢山のどんぐりが落ちていました。艶のあるどんぐりも落ちていたため、最近落ちたようです。東京・林試の森公園のハナガガシも11~3月頃まで落ち続けますが、ハナガガシはどんぐりの成熟が遅い(または落果期間が長い)ようです。堅果は長さ2.1~2.4cmで、林試の森公園のものと違ってずんぐりしたものもありました。また、殻斗は2・3個まとまってついているものが多かったです。

 

古庵様から電話があり、須崎市上分の自生地を案内していただけることになりました!須崎編については次の記事で掲載します。