分類:バラ科バクチノキ属(またはサクラ属)
和名:バクチノキ(博打の木)
別名:ビランジュ、ハダカノキ
学名:Laurocerasus zippeliana(Prunus zippeliana)
分布:本州(千葉県以西の太平洋側)、四国、九州、南西諸島、台湾
樹高:10~15m 常緑高木
沿海地の照葉樹林や山地の谷間などの湿潤地に自生する。
葉は大形で鋭い鋸歯があり、葉柄には密腺が1対ある。葉が似た樹種にカンザブロウノキがあるが、カンザブロウノキには蜜腺がないことで区別できる。葉の蜜腺はサクラ属の特徴である。葉は青酸配糖体を含み、かつては蒸留して咳止めの水薬を作った。
花は9月に開花し、ウワミズザクラに似ている。果実は翌年5~6月に黒紫色に熟す。
樹皮は鱗状に剥がれ、剥がれた跡は赤褐色になる。樹皮は染料(黄色)に利用される。
和名は樹皮が赤く剥がれる様子を、博打に負けて身ぐるみ剥がされるのに例えたことに由来する。江戸時代には博徒の信仰の対象にもなった。別名のビランジュは、インドの「毘蘭樹」とバクチノキを混同したという説がある。
赤みを帯びる樹皮と大形の葉が特徴で、よく目立つ。樹高25m、胸高周囲5m、樹齢約500年に達することもある。
神奈川県小田原市の「早川のビランジュ(国指定天然記念物)」。目通り幹周り5.2m、樹高25m、推定樹齢約330年以上とされる。生育場所の地名の「飛乱地」は、ビランジュに由来する。小田原市早川の社寺には、ビランジュが多く見られる。
【有名な生育地】
・神奈川県小田原市「早川のビランジュ(国指定天然記念物)」
・千葉県鴨川市古畑「鴨川のバクチノキ群生地(県指定天然記念物。分布の北限)」
千葉県南部を北限とする暖地性の樹種であり、神奈川県西部から伊豆半島・静岡方面に行くとよく出現する。大形の葉、鋭い鋸歯、葉柄の蜜腺が特徴で、樹皮が赤くない若木でもわかりやすい。私が初めて自生のバクチノキを見たのは静岡県藤枝市で、その時は藤枝市が北限であるカンザブロウノキと混同した。