レンタサイクルで静岡県掛川市の社寺林を巡りました。
今回の旅において、参考にした資料が3つあります。
①静岡県鎮守の森ガイドブック
http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-080/chinju-tamesi.html
②掛川市の自然の姿
③植物と植生
まずは事任(ことのまま)八幡宮。清少納言(996 頃~1025 頃)の枕草子にも記録が残っているそうです。
事任八幡宮には関東~東海では珍しいイチイガシがあります。
「掛川市の自然の姿」では、事任八幡宮のイチイガシは植栽と書かれていました。
個体数を数えるのを忘れましたが、成木が4本くらいありました。どんぐりは毛が少なく、丸みがあって大粒でした。
市指定天然記念物のクスノキ、スギもあります。
クスノキ。高さ31m、目通り6m、根回り19.3mです。静岡県にはクスノキの大木が多い気がします。
スギ。高さ36.5m、目通り6.3m、根回り11.2mです。
境内はスダジイが優占種で、アラカシ、イチイガシ、ウラジロガシ、タブノキ、クスノキ、カゴノキ、ヤブニッケイ?、ミミズバイ、ヤブツバキ、ヒサカキ、サカキ、タラヨウ、ナナミノキ、ヒイラギ、ケヤキ、エノキ、シュロ、イチョウ、スギ、ヒノキ、カヤ、ナギなどがありました。
次は龍尾神社です。800年以上前に創建されたと考えられています。
龍尾神社ではスダジイ・アラカシが優占種で、イチイガシも参道沿いに4本ありました。内陸でありながらも、ヤマモモがあったのは意外でした。
最後は永江院です。市指定保存樹林がありますが、二次林のようです。
スダジイが優占する照葉樹林に、アラカシ、ナナミノキなどが混生していました。ナナミノキの自生は今回初めて見ました。藤枝辺りの社寺林にはなかったような気がします。
帰りに、掛川海洋センター脇で思わぬ木を発見しました!
チリメンガシ!!ウバメガシの変種ですが、滅多に見ることがありません。私がチリメンガシを見たのは6箇所目?です。植栽だと思いましたが、近くの岩場に自生と思われるウバメガシがあったので、自生の可能性も否定できません。自生だとしたら奇跡です!
以前、京都御苑で採集したチリメンガシのどんぐりを播種したことがありますが、実生は全て基本種ウバメガシになりました。接木で増やすのでしょう。
掛川市の小笠山では、ウバメガシとアカガシという珍しい組み合わせが見られるそうです。
一般的にはスダジイが海沿い、ツブラジイが内陸に分布するといいますが、掛川では内陸部でもスダジイ林でした。藤枝の内陸部はツブラジイ林でしたが、スダジイ・ツブラジイのすみわけはどのようになっているのでしょうか?
尚、今回静岡県の植物分布の特徴を知ったので、以下にまとめます。
【静岡県の植物分布】
①フォッサマグナ地域
静岡県東部・伊豆半島を指す。この地域は、第三期中新世の終わりには海底にあったが、その後隆起して陸地になり第四期更新世以後の火山活動によってできた新しい地層である。富士川または安倍川が境になっている。
②ソハヤキ地域
富士川以西の地域を指す。この地域は第三期以来陸地であった古い地層の地域で、フォッサマグナ地域ができる前に西南日本の太平洋側に広く分布していた植物群である。また、日本と中国は陸続きであった時代もあるため、中国西南部との共通種もある。尚、ソハヤキとは南九州の古名である襲(ソ)の国の襲、速吸瀬戸(豊予海峡)の速、紀伊の国の紀の三文字を合わせてつけた名である。
③美濃・三河地域
天竜川以西の地域を指す。伊勢湾周辺地域特有の植物(東海丘陵要素植物)が分布し、三重・岐阜・愛知県などと共通する種が多い。湿地や蛇紋岩、石灰岩などに適応した固有種が分布する。
つまり、静岡県では富士川・安倍川、天竜川が植物分布の境界となっているようです。アベマキも東海丘陵要素植物ではないものの、天竜川が太平洋側の分布の東限になっています。藤枝市が東限のヤマモガシやカンザブロウノキはソハヤキ要素に該当するでしょう。
関東から静岡・愛知方面に向かうと、植物の種類が変わることは以前から感じていましたが、今回その実態がようやくわかりました!植物分布の要因がわかるようになると、旅の視点が変わって面白いです。