静岡県藤枝市の社寺を巡りました。今回のお目当てはツブラジイとイチイガシです。この2種類は関東では入手困難ですが、静岡県の社寺に行くと手に入ります。

 

藤枝駅でレンタサイクルを借りて、市内を巡ります。富胴院、金比羅山緑地、岡出山公園にはツブラジイ林があります。

富胴院のツブラジイ林は細い木が多いので二次林です。林齢40年くらいでしょうか?

金比羅山緑地では幹の太いツブラジイも見られます。金比羅山緑地にも神社があるので、古くから伐採が禁じられてきたのでしょう。

岡出山公園で撮影したツブラジイのどんぐりです。まだ枝についているので、12月中旬頃まで落ち続けそうです。ツブラジイはスダジイよりも熟す時期が1ヶ月以上遅いです。

樹高20mほどのツブラジイの大木です。スダジイは樹齢数百年にもなりますが、ツブラジイは寿命が短く、樹齢100年を越えることは少ないそうです。ツブラジイは幹が腐りやすいようで、老木ではキノコが寄生していることが多いです。

ツブラジイの板根です。オキナワウラジロガシを彷彿させる板根でした!オキナワジイのことを琉球ではイタジイと呼びますが、イタジイの名もきっと板根を意味しているのでしょう。

岡出山公園に隣接する飽波神社です。

5月に飽波神社で撮影したツブラジイの花です。ツブラジイの花は黄金色で綺麗です。岐阜県の金華山は、ツブラジイの花で黄金色になることに由来します。

ツブラジイの樹皮です。図鑑では「割れ目はない」と書かれていることが多いですが、割れ目がないもの、浅い割れ目が入るもの、明瞭な割れ目が入るものなど、かなりの変異があるように感じます。ただし、幹が真っ直ぐに伸びるという点は共通しているので、成木であれば樹形で見分けることも可能です。

また、ツブラジイは図鑑では「関東地方以西に分布」と書かれていることが多いですが、私は関東で自生のツブラジイを見たことがありません。東京・神奈川・千葉の植生資料やレッドデータブックなどを調べてもツブラジイの記載はありません。私は1997年から東京を中心にどんぐり採集をしていますが、ツブラジイを見たのは2014年に名古屋と浜松に行った時が最初です。

私の経験上+他文献からの情報によると、ツブラジイの北限は静岡県伊豆半島だと思います。最初に記載されたツブラジイの分布情報が誤っていて、その情報を他文献が引用して、誤情報が広がっているのではないかと私は推測しています。

 

次は青山八幡宮に向かいます。青山八幡宮にはイチイガシが優占する自然度の高い照葉樹林があります。

この写真は1月撮影のものです。青山八幡宮に初めて訪れた時は、あまりの自然度の高さに感激しました!

イチイガシはどんぐりが食用となるため、飢饉に備えて植えたとも言われますが、青山八幡宮はイチイガシが好む湿潤な肥沃地であったことから、私は自生なのではと思っています。

イチイガシ、アラカシ、ツブラジイ、タブノキ、バクチノキ、ミミズバイ、ヒメユズリハ、ヤブツバキ、カクレミノ、ヒサカキ、サカキ、ケヤキ、ムクノキ、エノキ、カラスザンショウ、ヤマモガシ、ヤブニッケイ、イヌマキ、カゴノキなど多種多様な樹種が見られ、はっきりとした階層構造になっています。

イチイガシ自体は千葉県が北限ですが、イチイガシ林は静岡県が北限のようです。非常に自然度が高く、イチイガシ林の北限域でもあるので、市指定天然記念物にしても良いような気がします。

 

境内にはイチイガシのどんぐりが沢山落ちていました!昨年はタイミングが遅かったですが、今年はベストタイミングでした!

個体数が多いので、どんぐりの形態も多種多様でした。堅果は長さ1.8~2.2cmほどです。殻斗には黄褐色の毛が生えています。

 

帰りに若一王子神社に立ち寄ります。若一王子神社の社叢は、県指定天然記念物になっています。

神社の東側に行くと、社殿裏側の樹林に通じる道があります。社殿裏側にはツブラジイが多数と、イチイガシが2本あります。西側の洞雲寺にもツブラジイ・イチイガシはありますが、ここにはクスノキが多いです。

境内で見られる樹種のうち、ヤマモガシとカンザブロウノキは藤枝市が北限のようです。ミミズバイやツブラジイも含めて、静岡県を分布の北限とする樹種は多いようで、神奈川県から静岡県に入ると植生ががらっと変わります。

 

静岡県ではイチイガシは、伊豆市大宮神社・日枝神社、伊東市八幡宮来宮神社、掛川市事任八幡宮、御前崎市比木賀茂神社、浜松市米沢諏訪神社などでも見られます。米沢諏訪神社には静岡県最大のイチイガシ(樹高42m、 目通り5m)があります。比木賀茂神社の社叢は県指定天然記念物なので行ってみたいのですが、アクセスが不便です。

 

ところで、静岡市~藤枝市辺りではコナラ・クヌギ・アベマキなどの里山の代表種が殆ど見られません。私が見た限りでは、この地域の丘陵帯は竹林が多く、雑木林が殆どありません。アベマキは天竜川以西で出現するようですが、静岡県中部ではコナラ・クヌギは殆どないのでしょうか?また、関東でメジャーなシラカシも殆どなく、アラカシが圧倒的多数です。関東平野は関東ロームという火山灰性土壌に覆われていますが、地質の違いが分布の違いの要因となっているのでしょうか?

 

拾ってきたツブラジイ・イチイガシのどんぐりは食べてみようと思います!

12月10日から青春18きっぷの利用期間になるので、また色々な場所に植生調査に行きたいです。