東京都町田市の清水寺(せいすいじ)に行きました。2年ぶりの訪問です。
清水寺には、町田市指定天然記念物のアカガシ群落があります。…といっても、実際にはツクバネガシ・オオツクバネガシで、純粋なアカガシは1本もありません。
2017年に来た時にはこのような説明文がありましたが、現在は文字が読めなくなっています。説明文によると、「1959年に清水寺の植物調査を行った東京大学の本田正次教授(1897~1984年)は、清水寺のアカガシ群落内のカシ類の多様さに注目し、高尾山を基準産地とするオオツクバネガシとの関連も指摘しながら、横浜から報告されていたアカガシの変種ヒメアカガシが含まれているものと結論づけた」そうです。
本殿西側に、ツクバネガシの巨木があります。
道路側から見たツクバネガシです。
葉は細長くて縁がやや裏側に反り返る、典型的なタイプです。ツクバネガシは葉の上部に鋸歯があることが多いですが、この個体はほぼ全縁です。
採取してきた葉です。葉身15cm、葉柄1.9cmでした。
樹皮は剥がれ落ちますが、アカガシと違って剥がれた跡は黒っぽいです。アカガシは剥がれた跡が赤褐色になります。
境内から見たツクバネガシです。樹高18m、幹径80cmほどあります。本来ならどんぐりが落ちている時期なのですが、今年は不作のようでありませんでした。2007年から何回も訪れていますが、ここまで不作なのは初めてです。
2017年に採集・撮影した清水寺のツクバネガシのどんぐりです。10月末~11月中旬に落ちます。
また、前述したヒメアカガシ(Quercus acuta var.yokohamensis)が気になるところですが、境内西側にあるこの個体がヒメアカガシなのでしょうか?
ツクバネガシでもアカガシでもないような葉をしています。「横浜の植物(横浜植物会・2003年)」には以下のように記載されています。
「ヒメアカガシはアカガシの葉の狭い型で、葉は全縁で披針形、葉身8~15cm、幅1.8~3cm、葉柄0.8~2.3cm、側脈は9~12対で裏面へ顕著に突出する。久内清孝が横浜で採集した標本に基づき、牧野富太郎が1929年にツクバネガシの変種として発表したが、1939年に中井猛之進がアカガシの変種に組み替えた。横浜市では南区弘明寺町(1998年)、港北区樽町(1999年)、栄区本郷台(1998年)で記録がある」
また、ヒメアカガシをオオツクバネガシの1タイプとする見方もあり、この場合の学名はQuercus takaoyamensis var.yokohamensisとなるようです。
尚、アカガシとアラカシの雑種もヒメアカガシ(別名:イズアカガシ)という和名ですが、学名はQuercus×idzuensisとなっているため、別種のようです。こちらは静岡県伊豆半島、四国の他、神奈川県横浜市鶴見区三ツ池(1951年)でも記録があるようです。
境内には成木のツクバネガシが4本、オオツクバネガシ(疑惑を含む)が3本、ヒメアカガシ?が1本あります。ツクバネガシ・アカガシの雑種及び変種は、もう複雑過ぎてよくわからないです。
ツクバネガシは関東ではやや珍しい部類ですが、八王子市~町田市~横浜市などのJR横浜線沿線の社寺林には比較的多いです。