先月、ナラガシワを発見した群馬県安中市の碓氷峠を再訪しました。
まずは横川駅から1.2kmほど西へ行った河原にある、麻苧(あさお)の滝自然公園に行きます。
写真は9月撮影のものです。ここでは、ナラガシワは成木が6本、若木が4本ありました。
そして、ここでもハルニレが生えていました。樹皮は縦に割れ目が入り、やや剥がれます。
次は、碓氷バイパスから碓氷湖方面に伸びる道を歩きます。しかし、ここはスギの人工林で、ナラガシワはスギ林の林縁に若木が4本あっただけでした(後で知ったのですが、この林道は立ち入り禁止でした)。
碓氷湖に到着です。碓氷湖は、碓氷川を堰き止めて造った人造湖です。
ナラガシワは大木が1本だけありました。枝は横に広がり、 樹高12m、幹径70cmくらいでした。
葉裏が白いので普通のナラガシワです。
大きな葉と太い枝は、存在感があります。
なんと、ミズナラも生えていました。碓氷湖の標高は約520mです。ミズナラが出現するということは、これよりも上は山地帯(気候帯でいうと冷温帯)ということでしょう。
碓氷湖では他に、イヌブナ、クリ、コナラなどが生えていました。ナラガシワがミズナラやイヌブナと混生するのは初めて見ました。碓氷湖は、気候帯としては中間温帯になるのでしょう。
めがね橋まで行きたかったのですが、雨が降ってきたので引き返します。帰りは峠の湯からアプトの道を歩きました。
アプトの道の脇には碓氷川が流れており、沢沿いにナラガシワが群生していました!
ナラガシワが沢沿いに群生する光景は初めて見ました!関東でこんな光景を見られるだなんて感激です!
ナラガシワと廃線になった線路です。1997年に北陸新幹線の高崎~長野間が開業したことにより、信越本線の横川~軽井沢間は廃止になりました。手前に廃線が写るところが、いかにも碓氷峠という感じです。
しかし、どんぐりは不作のようで1個も拾えませんでした。今年は東京・埼玉・群馬のナラガシワが揃って不作のようです。これは残念ですが、どんぐりの木は気まぐれなので仕方ありません(私は今までにこのような経験を何回もしています)。
持ち帰って来た葉です。
麻苧の滝自然公園付近にあった若木の葉です。葉身23.5cm、葉柄3cmの大形の葉です。鋸歯の切れ込みは浅めです。
林道にあった若木の葉です。鋸歯は鋭く、しかも二重鋸歯になっています。これがおそらく、ノコバナラガシワと呼ばれるタイプなのでしょう。ナラガシワは鋸歯の鋭さや切れ込み具合、葉裏の毛の有無などにかなりの変異があります。
碓氷川沿いのナラガシワの群生を見て思いましたが、スギの人工林だった林道周辺も、人工林化する前はナラガシワの優占林だったのかもしれません。沢沿いはスギの造林適地なので、このような環境に自生する樹種はきっと戦後の拡大造林の際に殆ど伐採されてしまったのではないでしょうか?ナラガシワが減少した原因の1つに、自生地がスギの造林適地と重なるというのもあるかもしれません。
「群馬県植物誌(1987年)」によると、群馬県内では他に、安中市の小根山・妙義山、東吾妻町の菅峰でもナラガシワの記録があるそうです。
来年リベンジして、どんぐりが拾えたら良いなと思います。
<おまけ>
碓氷峠・横川駅といえば、荻野屋の「峠の釜めし」が有名です。久々に食べましたが、美味しかったです。
https://www.oginoya.co.jp/tougenokamameshi/index.html
創業明治18年(1885年)と書いてありました。土釜は、隣県の栃木県益子町を産地とする益子焼でした。
廃線前は、碓氷峠の急勾配を乗り越えるために、横川駅で列車に機関車を連結する必要があり、長めの停車時間が設けられていました。ホームには釜めしを持った売り子さんがいて、乗客が停車時間を利用してホームに降りて釜めしを買う光景が見られたそうです。