群馬県高崎市の観音山に行きました。観音山にはどういうわけか、関東では珍しいアベマキが多数生えています。今回は、ひびき橋吊り橋~染料植物園周辺~染料植物園通り~白衣大観音を歩きましたが、観音山丘陵はとても広いため、他の場所にもアベマキはあるかもしれません。

 

ひびき橋吊り橋では、横にアベマキが生えており、橋の上から枝葉を観察することができます。

逆光になってしまいましたが、クヌギよりも幅広の葉とコルク質の枝が伝わるでしょうか?

周囲を眺めてみたところ、写真の個体以外にも数本のアベマキが谷底に生えていました。

どんぐりと葉です。葉裏が白いのでアベマキだと判ります。

どんぐりは落下最盛期で、次々と落ちてきました。

 

ヤマグリも点在していて、こちらも落ちていました。林将之さんの著書に、「クヌギ・アベマキ・クリを葉だけで見分けられたら、かなりの上級者」と書かれていました。

 

アベマキの若木です。幹径15cmくらいの若木でも、これだけのコルク層が発達しています。

成木の樹皮です。地中海地方のコルクガシには敵いませんが、コルク層の厚さは日本の樹種の中では一番でしょう。日本の樹種では他にキハダ、ヒトツバタゴ、マルバチシャノキ、ハルニレなどもコルク層が発達します。

 

クヌギのどんぐりも落ちていたので、アベマキと比較してみました。

左側の堅果・殻斗がクヌギ、右側がアベマキです。堅果はクヌギは2.7cm、アベマキは2.5cmでした。堅果はクヌギの方が丸みがあり、アベマキはやや小粒で楕円形であることが多いです。殻斗の鱗片はアベマキの方が長いです。尚、クヌギとアベマキの交雑種にアベクヌギがありますが、アベクヌギはどのようなどんぐりなのでしょうか?

 

群馬県内では桐生市の吾妻山の村松沢にもアベマキが30本ほど生えています。

アベマキは、太平洋側では静岡県天竜川以西に分布し、天竜川以東では殆ど見ないと聞きます。そんなアベマキが、群馬にだけ隔離して自生することは考えにくいので、おそらく植栽起源でしょう(ちなみに、日本海側の北限は新潟県北蒲原地方辺りだと思われます。山形市付近にもあるようですが、こちらは植栽逸出起源との説があります)。

植栽起源だとしても、考えられるパターンは2つあります。1つ目は、コルク採取目的での植林です。アベマキは第二次世界大戦時に、コルクガシの輸入が途絶えたことにより、コルク採取目的として植林されたといいます。2つ目は、クヌギとの誤植です。クヌギはかつて、薪炭材として植林されました。しかし、よく似たアベマキがクヌギと間違えられて、誤植されたこともあり得そうです。

真相は不明ですが、群馬県のアベマキは非常に気になる存在です。

 

★おまけ★

<関東地方におけるアベマキ逸出地>

詳細な場所と現存するのかは不明ですが、関東地方では他にも以下のような場所で植栽逸出と思われるアベマキが確認されているようです。

・茨城県常陸太田市

・埼玉県熊谷市周辺

・千葉県柏市(クヌギ林内に1本のみ)

・神奈川県横浜市(港南区日野南で標本の記録あり)

・神奈川県秦野市