八王子市の蓮生寺公園でホオノキの花を撮影しました。
花は高い所の枝先に上向きにつくため、撮影困難です。めがね橋の上からズームで撮影することができました。
山地の落葉広葉樹林や雑木林に点在します。葉がとにかく大きいので、よく目立ちます。
ところで、ホオノキの花は原始的な花で、時期によって性転換することも知られています。私はこれまで、これらの詳細を知らなかったのですが、今回の撮影を機に本で調べてみました。
【原始的な花】
広葉樹(被子植物)は針葉樹(裸子植物)が進化したものといわれ、一億年前の中生代白亜紀の中頃に現れたそうです。ホオノキは広葉樹の中でも、原始的な種であるといわれ、花の構造に広葉樹の初期の姿の一面を残しています。
ホオノキの花は、沢山の雄蕊と雌蕊が花軸に螺旋状に配列しており、雄蕊の下に6~9枚の花弁(内花被片)、その下に3枚の萼片(外花被片)があります。雄蕊・雌蕊・花弁・萼片は、いずれも葉が変化した「花葉」と総称され、葉の集まりがそれぞれ役割分担して、茎の先端に「花」という器官を獲得したといわれています。
また、広葉樹が出現し始めた頃は、虫を誘引するのに蜜は使われていなかったそうです。ホオノキは虫媒花ですが、花からは蜜が出ず、強烈な香りと食料としての花粉で虫を引き付けています。
【花の性転換】
ホオノキの花は時期によって性転換します。開花1日目は、雌蕊が張り出して雌花として機能し、昆虫によって運ばれた他個体の花粉を受けて受粉します。雌蕊が機能するのはこの1日だけで、2日目は花は一旦閉じます。3日目は雌蕊はくっついて受粉する能力を失い、雄蕊が張り出して雄花として機能し、昆虫に花粉を他個体の雌蕊に運んでもらいます。
これは自家受粉による近交弱勢を防ぐためです。3~5日で花の生殖期間が終わると、雄蕊と花弁は散ります。花は一斉には咲かず、開花日がバラバラになるように咲き、1ヶ月程度も次々と咲きます。
開花1日目の花です。雌蕊が張り出しています。
3日目以降の花です。雌蕊はくっついており、雄蕊が張り出しています。この写真では雄蕊が散り気味なので、間もなく花弁も散るものと思われます。
花が終わると果実(集合果)ができ、9~10月に赤く熟します。ホオノキは、雄蕊・雌蕊の時期をずらすことで、「同じ花」の自家受粉は防いでいますが、自家不和合性は持たないため「同じ木の中の別の花同士」で自家受粉してしまいます。そのため、健全に育たない種子もあります。
昨年8月に撮影した果実です。袋果の中に、赤い種子を含みます。
<参考文献>
「イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか-樹木の個性と生き残り戦略(築地書館)」
「里山さんぽ植物図鑑(成美堂出版)」
そういえば昨年、小石川植物園で中国中部原産のヤハズホオノキ(Magnolia officinalis var.biloba)の若木を発見しました。ホオノキと違って、葉の先端に大きな凹みがあります。
また、東京都薬用植物園では成木を発見しました。非常に撮影困難な場所にあるのですが、花の写真が撮れたら追記したいと思います。