ツクバネガシ・オオツクバネガシ・アカガシはよく混同されています。名木や天然記念物に指定されているアカガシを実際に訪れると、ツクバネガシまたはオオツクバネガシであることがしばしばあります。本項では、ツクバネガシ・オオツクバネガシ・アカガシを比較してみたいと思います。

 

【オオツクバネガシとは?】

ツクバネガシとアカガシの雑種。東京都高尾山で発見され、1920年に牧野富太郎によって命名発表された(尚、標本木は1966年の台風で倒れ、枯死した)。アカガシ・ツクバネガシはともに丘陵帯~山地帯下部の照葉樹林に自生し、混生することも多い。そのため、両者の交雑種であるオオツクバネガシもよく出現する。

 

【葉の比較】

左から順に、ツクバネガシ・オオツクバネガシ・アカガシの葉である。写真の葉の大きさは、ツクバネガシは葉身14cm・葉柄0.4cm、オオツクバネガシは葉身14.5cm・葉柄1.8cm、アカガシは葉身16cm、葉柄4.1cmであった。ツクバネガシ・オオツクバネガシの葉は神奈川県横浜市師岡熊野神社、アカガシの葉は神奈川県横浜市弘明寺公園で採集したものである。

ツクバネガシは葉が細く、上部に僅かな鋸歯があるか全縁で、葉柄は短く、縁は裏面側に反る。アカガシの葉は全縁か上部が波形で、葉柄が長く、葉はツクバネガシよりも大形である。オオツクバネガシの葉は両種の中間型で、ツクバネガシよりも幅広で上部に鋸歯がある。しかし、変異が大きく、ツクバネガシに似たものからアカガシに似たものまである。また、同一個体でも葉の形に変異が見られる。

 

【樹皮】

ツクバネガシ・オオツクバネガシ・アカガシともに、成長するにつれて樹皮は鱗状に剥がれ落ちる。

ツクバネガシの樹皮。灰黒色で、アカガシよりも細かく剥がれる。 オオツクバネガシの樹皮もツクバネガシに似ることが多い。

アカガシの樹皮。灰褐色で剥がれた跡は橙色を帯びる。また、ツクバネガシよりも大きく剥がれる。

 

【どんぐり】

ツクバネガシ・オオツクバネガシ・アカガシともにどんぐりは2年成で、10~11月に熟す。殻斗は横縞模様で毛があり、堅果にも毛が見られることがある。個体差もあるため、どんぐりだけでこの3種を識別することは不可能だと思われる。

ツクバネガシのどんぐり。東京都町田市清水寺にて採集。

オオツクバネガシのどんぐり。東京都八王子市南大沢八幡神社にて採集。

アカガシのどんぐり。東京都目黒区自由ヶ丘熊野神社にて採集。

 

<まとめ>

ツクバネガシ・オオツクバネガシ・アカガシは葉が唯一の識別方法と思われる。葉の写真のツクバネガシ・オオツクバネガシ・アカガシはわかやすい例だったが、もっと判断が難しい個体もある。やはり、雑種は見た目だけで判断するのは難しい。

 

2020年11月23日更新