八王子市の小田野中央公園に行きました。
昨年発見した、ナラガシワが河畔林を形成している公園です。
ナラガシワは本州(岩手・秋田県以西)~九州(鹿児島県を除く)に分布しますが、分布の中心は近畿~中国地方で、関東では植栽を含めても激レアなどんぐりです(園芸品種のオウゴンガシワならたまに見かけます)。
私は1999年に小石川植物園を訪れた時にナラガシワを初めて見たのですが、そこでは園路から離れた場所に植栽されていたため、近くで見ることはできませんでした。
それからかなりの年月が経ち、どんぐりを初めて見たのは2014年。愛知県一宮市の妙興寺を訪れた時のことです(妙興寺にナラガシワがあることは日本どんぐり大図鑑で知りました)。
関東ではナラガシワのどんぐりは手に入らないのだろうと思って、関西方面までどんぐりを拾いに行ったこともありました。それだけに、私にとってナラガシワは非常に思い入れの深いどんぐりです。
ここのナラガシワは、「八王子城山及びその付近(旧恩方村)の主な植物(5)(1996年3月)」という文献により、自生であることが判明しました。小田野中央公園は、かつての川沿いの雑木林をそのまま残して造られたそうです。北浅川の右岸に46本、左岸に17本のナラガシワが生育していると書かれていますが、20年以上前の情報のため、現在はもっと減っているかもしれません。ちなみに、近隣の他の河川にはナラガシワは全くありませんでした。
また、前述の文献によると、東京では奥多摩町日原にもナラガシワが生育しているそうです。関東地方では他に、
・神奈川県津久井町三井(現:相模原市緑区)
・神奈川県大和市下和田町上ノ原
・神奈川県足柄上郡山北町山神峠
・栃木県宇都宮市古賀志山
にも生育しているそうです。相模原市のナラガシワは2年前に見に行ったことがあります。そこでは丘陵の沢沿いに2本(うち1本はアオナラガシワ)が生育していました。
私はナラガシワがどのような環境に自生するのか長年わからなかったのですが、調べてみたところ河畔や湖畔の沖積低地に自生している場所が全国的にも多いようです。西日本では、コナラやアベマキに混じって雑木林に点在することもあるそうです。
私は河畔林というと、オニグルミやヤナギ類を思い浮かべます。ブナ科で河畔林を構成する樹種はナラガシワだけではないでしょうか?
また、ナラガシワは現在の関東地方では稀ですが、東京都の縄文時代後期の遺跡からは普通に出土しており、縄文時代中期~晩期の関東平野には普通に生育していたことが明らかになっているそうです。河川改修や水田開発によって減少したのでしょうか?
下の2枚の写真はアオナラガシワです。普通のナラガシワに混じって生えています。
まだ青いどんぐりも多いので、10月下旬までは拾えそうです。
ナラガシワの中でも葉の鋸歯が鋭いものは、ツクシオオナラ(ノコバナラガシワ)と呼ぶことがあるそうです。
北浅川左岸(北側)のナラガシワはうち1本が強剪定されてしまいました。
枝が隣の民家まで伸びていたためだと思われます。早く再生してほしいです。
それにしても、東京で絶滅危惧ⅠB類になっているナラガシワがこれだけの群落を作っているので、天然記念物に指定しても良いような気がします。
今回採集したナラガシワのどんぐりです。
個体によってかなりの変異があります。一番右の丸いどんぐりはアオナラガシワです。
また、小田野中央公園にはチョウセンコナラ(ナラガシワ×カシワ)もあります。今年は拾えなかったので、昨年の写真を載せます。
花柱・殻斗の鱗片がやや長いです。公園北側の民家にカシワがあったので、ナラガシワと交雑した可能性があります。
葉の写真です(6月に撮影)。葉はカシワにそっくりですが、葉柄が1cmほどありました。枝にも毛が生えており、カシワの血を感じさせます。
川沿いにあるため、せせらぎの音が聞こえて気持ちの良い公園でした。来年の春に、花の写真を撮りに再訪したいと思います。