群馬県桐生市の吾妻山を再訪した。
6月の訪問時には桐生駅から吾妻山に向かったが、今回は自然観察の森→吾妻山→桐生駅というコースを歩くことにした。
自然観察の森~吾妻山山頂は殆どがスギ・ヒノキの植林地帯であったが、フモトミズナラと少数のカシワも混じっていた。
吾妻山山頂のコナラ(左)とフモトミズナラ(右)。
フモトミズナラは岩盤の剥き出しになった痩せ地に多い。東海・北関東ともに土壌が殆どない土地である(東海では湿地の周辺で見られることも)。
吾妻山ではコナラ、アカマツ、リョウブ、ツツジ類などと混生していたが、東海ではこれにアベマキやオオバヤシャブシも加わる。アカマツやオオバヤシャブシは典型的なパイオニア種で、植生遷移の初期の段階で現れる。フモトミズナラもバイオニア的要素が強い。
北関東のフモトミズナラは群馬県南牧村~桐生市、栃木県足利市~塩谷町辺りにかけて分布するようだが、どこにでもあるわけではないらしい。
吾妻山山頂からトンビ岩を経由して吾妻公園に向かう予定だったが、道を間違えてしまい丸山下駅の方へ降りてしまった。このまま帰るのは悔いが残るため、西桐生駅の西から再び坂道を登り、吾妻公園→トンビ岩へと向かった。
コガシワ(コナラ×カシワ)もあった。
葉は厚く、裏には毛が多かった。どんぐりも殻斗の鱗片・花柱が長く、カシワの形質が現れている。 はっきりとした葉柄が見られる点は、コナラの形質だ。
雷の音が聞こえたため、今回はここで引き返した。
今回の旅で採集したどんぐり。
フモトミズナラ。既に沢山落ちていた。北関東のフモトミズナラのどんぐりは、東海のものよりも大粒で、長さ2~3cm。地域的な遺伝子の違いだろうか?
フモトミズナラは殻斗が魅力的。ミズナラのように殻斗が深い個体もあるが(右)、殻斗が浅くて縁が内側に巻き込むような個体(左)もある。私は殻斗の浅い個体の方が好みである。
そして、今回もフモトミズナラとコナラの雑種と思われる個体を発見した。
葉の切れ込みが深い点はフモトミズナラの形質だが、葉柄が見られる点はコナラの形質である。葉の幅はフモトミズナラよりも狭い。側脈もフモトミズナラより多く、間隔が狭いような気がする。
葉の長さは、葉身は11cm、葉柄 は1.5cmであった。この写真の個体は葉が小型で、実際にはもっと大きい葉もある。
どんぐり。よく観察してみると、殻斗の鱗片はフモトミズナラのように少し隆起している。どんぐりはまだ青かったが、熟すのは9月中旬~下旬頃だろうか?
私はフモトミズナラとコナラの雑種の呼び名を知らないのだが、ミズナラとコナラの雑種が「ミズコナラ」と呼ばれるので、私は勝手に「フモトミズコナラ」と呼んでいる。
尚、私が気になっていたフモトミズナラとカシワの雑種は今回は見つからなかった(そもそも、存在するのか不明だが…)。
ところで、桐生市が位置する群馬県南部は、フェーン現象の影響により夏は非常に暑い土地である。岐阜県多治見市や愛知県名古屋市、長野県南部もフェーン現象による猛暑が知られる土地だが、この地域にもフモトミズナラが分布する。フェーン現象の風下側は乾燥して気温が高くなるが、フモトミズナラも暖温帯の乾燥した尾根に多い樹種である。フモトミズナラの生育地とフェーン現象には、何か関係はあるのだろうか?