イチイガシを見に、静岡県・神奈川県の3箇所の神社を訪ねた。

 

イチイガシは国内では、本州(千葉県以西の太平洋側)、四国、九州に分布し、九州では数が多い。

しかし、「日本どんぐり大図鑑(偕成社)」によると、「中部から関東にかけては、千葉県の房総半島をのぞき、ほとんどが社寺林なので、自然分布ではない可能性もある」という。

イチイガシはどんぐりが食用となるため、救荒植物として植栽されたことも考えられるかもしれない。

いずれにしても、関東では珍しい木であるため、私の関心のある木のひとつである。

1箇所目は、静岡県伊豆市大宮神社。


大宮神社の社叢は、伊豆市指定天然記念物となっている。

境内にはイチイガシの成木が3本あり、根元には実生と思われる若木も幾つかあった。

イチイガシに関する説明板があり、伊豆半島での生育地も記されていた。

大宮神社のイチイガシは、全国的にも珍しい遺伝的系統で、太古から生育していることが最近の研究で明らかになったという(伊豆市観光協会中伊豆支部ホームページより)。

ということは、大宮神社のイチイガシは自生なのだろうか?

境内にはスダジイ、アラカシが多く、シラカシ、ウラジロガシも見られた。


2箇所目は伊豆市日枝神社。

静岡県指定天然記念物のイチイガシの大木があり、根廻り5.5m、目通り4.5m、樹高25mとされている。境内東側にもイチイガシが1本あった。

カゴノキの大木もあった。

カゴノキはクスノキ科の常緑高木で、福島・石川県~沖縄県に分布するが、この木も関東ではあまり見られない。樹皮が特徴的で、和名も鹿の子模様の樹皮に由来する。


境内にはツブラジイが多く見られ、板根を形成した個体もあった。ツブラジイは関東では自生を見たことがないが、静岡県内に入ると忽然と姿を現す。静岡県を分布の東限とする樹木は多いようで、関東から東海地方に入ると見られる樹種が少し変わる。

他はアカガシ、アラカシが多く、シラカシ、ウラジロガシも見られた。

3箇所目は神奈川県松田町寒田神社。

かながわの名木100選に選ばれたイチイガシが1本ある。

昭和59年の選定時に樹高30m、幹周り3.0m、樹齢500年と計測されている。

現在は樹齢530年くらいだろうか?

非常に大きく、障害物も多いため、木全体を写すことはできない。

隣接する松田小学校の校門側からは樹形をよく見ることができる。

境内で撮影する際は、午前だと逆光になってしまうため、午後がおすすめ。
尚、ここのイチイガシは1本だけのためか、どんぐりは全く見つからない。

 

静岡県では、伊東市の八幡宮来宮神社、藤枝市の若一王子神社の社叢にもイチイガシがあるらしいので、いつか行ってみたい。