2017年11月掲載
2022年12月19日改訂・再掲載
2022年12月25日改訂
和名:アラカシ(粗樫)
学名:Quercus glauca
別名:マルバガシ、クロガシ、ナラバガシ
分布:本州(宮城・石川県以南)・四国・九州(対馬・壱岐を含む。屋久島・種子島まで)。済州島・台湾・中国・インドシナ~ヒマラヤ。
樹高:10~20m 直径:60cm 常緑高木 陰樹
低地~山地帯下部の照葉樹林に自生する。乾燥や痩せ地にも強く、崖・急傾斜地や石灰岩地でもよく見られる。カシ類としては最もパイオニア的要素が強く、二次林でアカマツやコナラと混生することも多い。関東平野には少ないが、西日本では普通に見られる。
葉は葉身5~13cm・葉柄1.5~2.5cm。シラカシよりも幅広で上半分に鋸歯があるのが基本だが、変異が大きい。また、うどん粉病になりやすく、日当たりの悪い場所では白くなっていることも多い。
花。4~5月に開花し、若葉は赤みを帯びる。
どんぐりは11~12月に熟す。堅果は球形であることが多く、長さ1.5~2cm。縦縞が入り、色が薄いものもある。
樹皮。灰黒色で浅い割れ目が入ることもある。
樹下は薄暗い。萌芽力旺盛で、株立ちになることも多い。和名は枝振りが粗いことに由来する。生け垣に利用される。
河岸段丘沿いに群生するアラカシ(東京都国立市ママ下湧水公園)。シラカシ・シロダモ・ケヤキ・エノキなども混生する。東京では平地でシラカシが優占し、アラカシは丘陵・低山、川沿いの急傾斜地・岩場、段丘斜面など起伏のある場所に生育している。
【変種・品種】
・アマミアラカシ 学名:Quercus glauca var. amamiana
奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・沖縄島・与那国島・魚釣島に分布するアラカシの変種。独立種またはアラカシと差異を認めない研究者もいる。低地の石灰岩地や河川沿いの岩礫地に自生する。奄美大島・徳之島ではやや普通だが、他では少ない。樹高7~15m。
葉は長さ8~18cm。基本種アラカシよりも細長く、主脈部分に折れ目が入って断面はV字型になる。葉裏は基本種ほど白くない。
花は12~3月に開花し、どんぐりは12~2月に熟す。
堅果は細長く、長さ約3cm。実生の耐寒性は基本種と同じで、1年目から本土の屋外で越冬できる。
低地の河川沿いに広がるアマミアラカシ林(徳之島)。生育地の多くは開発され、自然林は奄美群島では神山・風葬地、沖縄では御嶽などの神聖な場所に残っている。徳之島・明眼の森、沖縄県宜野座村・漢那ヨリアゲの森などが有名な群落である。
・ヒリュウガシ 学名:Quercus glauca var. lacera
葉端が羽状に裂ける品種で、関西では庭木としてよく植栽される。
・ヨコメガシ 学名:Quercus glauca var. fasciata
葉脈間に白紋が入る品種で、シマガシとも呼ばれる。金沢市などに大木がある。