2017年11月17日掲載

2022年11月13日改訂・再掲載

2022年12月9日改訂


和名:ウラジロガシ(裏白樫)

学名:Quercus salicina

別名:ホソバガシ、ヤナギウラジロガシ、ヤナギガシ

分布:本州(宮城・新潟県以南)・四国・九州・南西諸島(屋久島・種子島・奄美大島・徳之島・沖縄島・与那国島)。済州島、台湾。

樹高:10~20m 直径:80cm 常緑高木 陰樹

 

丘陵~山地の照葉樹林に自生し、アラカシ・アカガシ・ツクバネガシなどと混生する。山地のカシの代表種で、寒さにも強い。土壌の薄い場所でも生育でき、尾根・急傾斜地・岩場などでも見られる。台湾の低標高の個体群は別種という見解もある。琉球列島ではヤナギウラジロガシ(ヤナギガシ)と表記されることも多い。

 

葉は葉身9~15cm。シラカシに似ているが鋸歯が鋭く、縁が波打つことが多い。葉の裏がロウ物質で白っぽいことが和名の由来だが、あまり白くない個体もある。葉は枯れると裏の白さが目立つようになるが、稀に枯葉になっても裏が白くならない個体もある。

 

花は5月に開花し、どんぐりは翌年の10~11月に熟す。

堅果は長さ2~2.5cm。色が濃く、殻斗には毛が見られる。シラカシと違って2年成である。

 

樹皮は灰黒色で縦筋がある。

 

シラカシやオキナワウラジロガシと誤認されやすいが、本種の幹は単幹・通直になることは少ない。写真は東京都あきる野市の「山抱きの大カシ」で、石灰岩の上に生育している。

神奈川県相模原市の「城山のウラジロガシ」。樹高約20m、幹回り8.4m、枝張り360平方メートル、推定樹齢約600年といわれ、日本最大のウラジロガシとされている。

 

岡山県苫田郡鏡野町には、四季を通して葉の色が移り変わる「七色樫(別名:虹の木)」というウラジロガシがある。春の赤から始まり、橙、黄、黄緑、緑、青緑、濃緑の順に、一年に七回変化するが、変色の理由は明らかになっていない。

 

【交雑種】

シラカシ×ウラジロガシ 学名:Quercus myrsinaefolia×salicina

シラカシとウラジロガシの雑種。若枝は灰白色、葉裏は淡緑色で絹毛がある。京都府大江町内宮(現:福知山市)、滋賀県牧野町(現:高島市)などで確認されている。


【関東周辺のウラジロガシの名木・優占林など】

・茨城県:筑波山

・栃木県宇都宮市:多気山持宝院

・群馬県富岡市:妙義神社(県指定天然記念物)

・埼玉県東松山市:岩殿観音

・埼玉県飯能市:南川のウラジロガシ林(県指定天然記念物)、富士浅間神社、龍泉寺

・埼玉県秩父市:橋立鍾乳洞

・東京都八王子市:高尾山

・東京都あきる野市:山抱きの大カシ(市指定天然記念物)

・東京都多摩市:別府社(植栽?)

・東京都杉並区:大宮八幡宮(植栽?)

・東京都世田谷区:六所神社(植栽?)

・千葉県:房総丘陵(元清澄山、笠森寺自然林など)

・千葉県君津市:三島ノ白樫(県指定天然記念物)

・神奈川県横浜市港南区:春日神社(社叢は市指定天然記念物)

・神奈川県相模原市緑区:城山のウラジロガシ(市指定天然記念物)

・神奈川県:丹沢・大山

・神奈川県足柄上郡山北町:高杉のウラジロガシ(県指定天然記念物)

・神奈川県大磯町:高麗山

・神奈川県小田原市:県立小田原高等学校の樹叢(県指定天然記念物)

・山梨県上野原市:鼓楽神社(市指定天然記念物)

・静岡県伊東市:蓮着寺~城ヶ崎海岸

関東では平野部にシラカシ、丘陵・低山にアラカシ・ウラジロガシ・ツクバネガシ、沿海地・山地にアカガシが生育する傾向がある。東京では高尾山を除くと少ないが、西多摩の山地のスギ・ヒノキ林でも林床に若木が見られるため、本来は広域にウラジロガシ林があったのかもしれない。アカガシよりも生育標高が低いようで、茨城県筑波山では山麓部から標高が上がるにつれ、スダジイ→ウラジロガシ→アカガシ→ブナの順に植生が変化していった。静岡県伊東市城ヶ崎海岸にも多かったのは意外であったが、土壌が浅いためかもしれない。