「 たんぽぽ舎です。【TMM:No5211】地震と原発事故情報-5つの情報をお知らせします  」より

 

 

イスラエルによるガザ地区の居住不可能化と都市破壊の実態 (上)


  ガザ地区の破壊状況とその目的、イスラエル兵士の証言による破壊の実態、計画的な都市破壊の背景と法的問題
  …独立系メディア「+972マガジン」調査報告を中心に
 

                                                                                     山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)


はじめに

 米国独立系放送局「デモクラシーナウ!」が5月20日に放送した「ガザを住めなくする・イスラエルが攻撃を強化・ネタニヤフがガザ全域の占領を明言」(原題:Making Gaza Unlivable: Israel Intensifies Attacks as Netanyahu Vows to Seize All of Gaza)を紹介する。

 この番組は、イスラエルがパレスチナのガザ地区において組織的に都市の破壊を進め、地域を居住不可能な状態に追い込んでいる実態を最新の調査報告および現地取材に基づきまとめたものである。
 特にイスラエル・パレスチナ合同独立系メディア「+972マガジン」がイスラエル兵士から直接得た証言や映像をもとに報告された内容を中心に解説しているのは重要だ。
 これにより、単なる軍事行動としての破壊ではなく、パレスチナ人がガザ地区に帰還するのを阻止し、事実上の民族浄化を意図した政策的な都市破壊が進行中であることを明らかにしている。

1.ガザ地区の破壊状況とその目的

 2025年におけるイスラエル軍の攻撃により、ガザ地区南部の主要都市ラファでは建物の約73%が完全に破壊され、無傷の建物はわずか約4%にとどまっている。
 人口約21万人のこの都市は事実上、居住不能な状況に陥っている
 こうした破壊の背後には、単なる戦闘行為を超えた、計画的な「地域の使用不能化」という目的があると報告されている。

 「+972マガジン」のメロン・ラポポートは、「本当の目的は、パレスチナ人がこれらの地域に戻ることを不可能にすることだ」と指摘し、破壊が戦闘の一環ではなく、兵士の日常的な任務の一部として遂行されている点を強調している。

2.イスラエル兵士の証言による破壊の実態

 「+972マガジン」は、イスラエル兵士数名に直接取材を行い、ブルドーザーや爆発物を用いて住宅を組織的に破壊する実態を明らかにした。
 特に装甲ブルドーザー「D9」の操縦士アヴラハム・ザルヴィヴの映像は、破壊されたラファの街並みを兵士自身が撮影し、オンラインで公開している。
 彼は「ラファは終わった」「我々は家を破壊しているので彼らには帰る場所がない」と公然と言及している。

 別の兵士は「1日に60軒の家を破壊する」「1~2階建ての家なら1時間以内に解体できる」と具体的な破壊速度を述べている。
 公式の作戦理由は兵站ルートの確保とされるが、実際には明確な破壊目的が存在し、戦闘とは関係のない建物までも標的にされていることが示唆されている。

3.計画的な都市破壊の背景と法的問題

 このような都市の大規模破壊は「ドミサイド」(domicide)と呼ばれ、国際法上のグレーゾーンに位置する。戦争法に照らせば、軍事的必要性のない建物破壊は違法であり、人道に対する罪とされる可能性もあるが、国際社会の対応は一貫していない。
 イスラエル側は「軍事的必要性の範囲内の作戦」と説明しているものの、破壊対象の多くは戦闘とは直接関係ない住宅地やインフラであり、明確に民間人の帰還を阻止しようとする意図が兵士の証言や首相らの発 言からうかがえる。                       (下)に続く