政治が米価を設定する統制経済

この記事によれば、生産者は5㎏2000円では米は作れないのだと。つまり5㎏2000円というのは、原価割れの数字を政治が勝手に設定してしまったわけです。これも一種の統制経済でしょう。

 

商業・物流というものは、モノが余っている所から払底している所へと流れる。江戸が大火で材木がないとなれば、紀州から船で材木を運べば儲かる。紀州でみかんが取れすぎだとなれば、船で江戸に運べば江戸っ子は喜んで買う。「腐るほどあった」モノが「宝」になる。紀伊国屋文左衛門ですね。そして、供給に対して需要が高いほど、値段は吊り上がる。これが貨幣経済です。こっちじゃこれがダブついてるぞ、こっちじゃこれが払底しているぞ、という情報を貨幣が伝えてくれます。


思い出すのはソ連邦末期ですね。貨物駅に小麦粉を積んだ貨車は来ているのに、誰もそれをパン屋まで運ぼうとしない。モノを動かすインセンティブがなくなってしまった。命令と強制で無理やりそれをやっていたソ連政府が、なくなってしまった。ルーブル札は紙切れだ、という状態になりました。食い物はある所にあるのに、それが回ってこない。あの時は、流れ込んだ米ドル紙幣なんかが幅を利かせたんでしたね。


こうふり返ってみると、令和米騒動の一番の解決策は、アメリカからカリフォルニア米を緊急輸入することでしょう。赤沢大臣がトランプに会って、カリフォルニア米を売ってくれと言えば、トランプは大喜びでしょうね。もしかすると「大統領からの贈り物」だと言って米をしこたま送ってくるかも知れません(戦後の脱脂粉乳みたい!)。

 

結局ツケは国民に回ってくる
では、こういうことをなぜやらないか。答は簡単ですね。参院選を控えてそんなことをしたら、JAの農家票が離れてしまう。無党派層に人気のある小泉進次郎が動いたら5㎏2000円になったといって、消費者の浮動票を取り込みたい。そういうことでしょうね。しかし5㎏2000円は実は不自然な価格ですから、いずれそのツケが国民の頭の上に降ってきます。


米が4000円、5000円と高い、というのですが、実は4000円、5000円でも買う人がいるからこそ、こういう価格が付いている。誰が4000円で買うか、と不買にする。スーパーの店頭を売れ残りの山にしてやることが、消費者としては一番の正解でしょうね。

 

5㎏2000円と価格が決まっているのなら、政商を通さず、農水省の窓口で直接売ればいい。そう思いませんか?

 

 

 

5キロ2000円台ではコメ作りを続けられない――生産者不在で乱高下する米価。消費者も納得できる適正価格は実現するのか?(南日本新聞) - Yahoo!ニュース

5キロ2000円台ではコメ作りを続けられない――生産者不在で乱高下する米価。消費者も納得できる適正価格は実現するのか?

配信 南日本新聞社

コメの価格高騰などで揺れる生産現場=21日、伊佐市

 

 コメの価格高騰が止まらない。全国のスーパーで11日までの1週間に販売された5キロ当たりの平均価格は4268円と過去最高を更新。小泉進次郎農相は就任早々、備蓄米の放出手続きを一般競争入札から随意契約に変更し、「5キロで2000円」の店頭価格を目指すと訴えて注目を集める。一方、長らく米価低迷に苦しんできた鹿児島県内の生産者は、安さを求める消費者心理を理解しつつ「価格が安いままではコメ作りを続けられない」と気をもんでいる。 

 

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 「60キロ当たり2万3000円は必要」。県内のある生産者が安定生産を続けられると考える概算金の目安だ。店頭価格は5キロ当たり3000~3500円ほどになる。  JAなどの集荷業者が生産者に仮払いする「概算金」は、その年のコメ相場を測る先行指標となり、集荷業者が卸・小売業者に売る際の「相対取引価格」、消費者が実際に購入する「店頭価格」にも影響する。  農業法人「Farm-K」(伊佐市)の亀割浩介社長(49)は「コメ単作では利益が残らない」と実情を語る。自社で手がける30ヘクタールのほかに、離農者などから預かる35ヘクタールの作業を受託。そこから得られる収入があるため「何とか経営を続けられている」。  ここ数年で、肥料代や農機の購入費が値上がりした。原料を海外産に頼る肥料は3割ほど上昇。農機はトラクターが1台約1500万円、コンバインは約2000万円と高額だ。購入費の助成制度を利用しても6割ほどは自費になるという。所有する農機のメンテナンス費用も年間で600万円ほどかかり経営を圧迫する。「コメの再生産ができ、後継者育成にもつながる価格で売れればありがたい」

 約15ヘクタールで主食用米を中心に栽培するライスセンターヒジオカ(湧水町)の肱岡秋則代表(66)も、亀割社長と同様、生産費の中で農機への投資が大きいと感じている。経営環境の厳しい生産者が多い中、昨年夏から続く米価上昇傾向に「農家も元気が出てくる」と話す。ただ「コメの出荷価格に対し、店頭価格はかなり高い。中間業者が押し上げているのでは」と推測する。

 

  農林水産省が公表するコメ60キロ当たりの生産費は、1万5000円前後。生産者からの買い上げ単価の目安となるJA県経済連の概算金は、24年産普通期の玄米で約2万6000円。水田周りの草払いや防獣ネット設置に別途費用を要し、夏場の高温障害による収量減もあるため、「この価格でようやく適正になった」と感じる生産者は多い。  全国農業協同組合中央会(JA全中)の山野徹会長も13日の定例記者会見で、「消費者と生産者が互いに納得できる価格が望ましい」と発言した。

 県外の主要産地では25年産米の概算金の提示が始まっている。「高すぎる店頭価格は消費者のコメ離れにつながる」と危惧する生産者もいる。生産者が安心してコメ作りができ、消費者も生産者の苦労に寄り添えるようなバランスの取れた価格が求められる。

南日本新聞 | 鹿児島