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┗■1.どんどん後退する日本の司法
 | 原発安全神話におもねる姿勢に復帰  (上) (2回の連載)
 | 「国の原発推進政策に呼応した司法は問題」
 | 「科学的根拠とリスク評価の判断基準の劣化」
 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

1.国の原発推進政策に呼応した司法は問題

 東日本震災から14年を前に、立て続けに原発に関連した司法判断が出された。
 しかしそれは、全て国の原発推進政策に大転換した行政に追従する司法の姿勢を見せつけるものだった。
 いったい何が起きているのか、解読してみよう。

 司法判断は次の3つ。
◎川内原発差止訴訟判決(2月21日)
◎伊方原発差止訴訟判決(3月5日)
◎東電元副社長の刑事裁判無罪決定(3月6日)
 これらの共通する判断根拠について、どう考えたら良いのだろうか

2.科学的根拠とリスク評価の判断基準の劣化- 裁判所は被告(東電)の主張を支持

 東電福島第一原発事故に関連し、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣に対する裁判では、検察側(指定弁護士)と被告側の主張について、最終的に裁判所は被告側(東電)の主張を支持した。

 以下に、両者の主張と裁判所の判断を詳述する。

 津波の予見可能性について、検察側は2008年から2009年にかけて、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が公表した「長期評価」に基づき東電は、最大15.7mの津波が福島第一原発を襲う可能性を試算してい
たと指した。
 この試算結果は、当時の経営陣に報告されていた。

 したがって検察側は、経営陣は津波リスクを予見し、防止措置を講
る義務があったと主張した。
 この適切な対策を怠った結果、2011年の東日本大震災に伴う地震と津波で原発事故が発生し、避難中の双葉病院の患者ら44人が死亡するなどの重大な被害が生じた。これらは経営陣の過失によるものである。

 一方、被告側の主張は、まず長期評価の信頼性について、長期評価が科学的根拠の不十分なもので信頼性に欠けると主張した。
 そのため、この評価に基づいて具体的な対策を講じる義務は東電経営陣にはなかったとした。
 なお、予見可能性の否定に関しては、当時の科学的知見や技術的限界から、15.7mの津波を具体的に予見することは困難であり、したがって過失は成立しないと主張した。

 最高裁の判断は、まず長期評価の信頼性と予見可能性では、政府の「長期評価」について「信頼度も低く、10mの高さを超える津波が襲来する現実的な可能性を認識させる情報だったとまでは認められない」と判断した。
 これで事故の予見可能性は否定され経営陣を無罪とした一、二審判決を支持する結果となった。

 科学的根拠の信頼性やリスク評価の判断基準が刑事責任の有無に直結することを示した今回の判決は、今後の原発事故への対応や防災体制全体についても大きな後退を意味することになり重大である。

 このほか、川内原発、伊方原発差止訴訟の判決でも、同様に予見可能性の是否について判断されているが、基本的には事業者の想定に加え、規制委が行った再稼働申請時の新規制基準適合

 

 

 

3.「原子力規制法制」の明確性に関する後退

 日本では原発の運転や事故時の責任について規定がある。
 以下に、関連する法律との関係を整理する。

◎原子力基本法-原子力を安全保障と絡めてエネルギー安保だけでなく
        軍事利用への道にも

 原子力利用を「平和目的に限る」と定め、研究・開発・利用に関す
基本原則を示す。
 事故対応や責任についての直接的な規定は原子炉等規制法(炉規法)で規定しているので存在しない。
 第2条の基本方針では「安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康および財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として行うものとする。」とする。

 しかしこの条文には大きな問題がある。
 第一に原子力推進を前提としており、原子力安全規制の基盤となる規定というよりは原子力推進の意味合いが強いため「安全」と「稼働の是否」との衝突が起きた場合の優先度が明記されていないため行政・事業者よりになりがちだ。
 第二に、原子力を安全保障と絡めており、エネルギー安保だけでなく軍事利用への道にも繋がる。 (下)に続く
          (初出:2025年3月発行「たんぽぽ舎ニュース」)


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┗■2.東電原発事故は事故発生前から発電所周辺自治体
 | 及び住民にウソをついていた
 | 判決は7月30日(水)-東京地裁
 └──── 井戸川克隆(井戸川裁判 福島被ばく訴訟原告)

 東電原発事故は原告に対する反乱と言うもので、事故発生前から発電所周辺自治体及び住民にウソをついていたことを、大津波という自然現象がウソを露見させたのです。
 事故発生後、被告国と被告東電は優越的地位を悪用して、地元自治体を事故対応から排除して、加害者の東電と国が自己の真因を滅却して、世論を騙し被害者の権利を矮小化して被害がなかったかのように装い、国民の税金を使い廃炉を産業化して、被告東電は焼け太りをしている有様です。

 これを知っている原告井戸川克隆は、去る平成27年5月東京地裁に提訴して、ウソと偽証を暴き、事故の真実を法廷の場で10年間闘ってきました。
 去る2月5日結審しましたので、これまでのご支援に感謝し、お礼申し上げます。
 なお、判決は来たる7月30日(水)です。


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┗■3.「震災(3.11東日本大震災)2ヵ月後に福島から
 | 関西へ母子避難」 ABCテレビ密着取材の紹介
 └──── 森松明希子(原発賠償関西訴訟原告、東日本大震災
                避難者の会 Thanks & Dream代表)

 今年の3月11日は、在阪のテレビ局2社が密着取材をして特集を組んで3.11当日の夕方にニュースで報じてくれました。
 ABCテレビは夕方の「おかえり!」という番組で3時台に流れたようで、当初予定していたより尺が短くなってしまったそうで、動画は約3分のVTRが報道されたようです。
 文字版のニュース通り放送されていたら、もう少し分かりやすかったかも…ちょっと残念。

【震災2ヵ月後に福島から関西へ母子避難】
 14年経った今も続く子どもへの“甲状腺検査”帰還への葛藤と集団訴訟「自分に置き換えて考えてみてほしい」
 (ABCテレビニュース『newsおかえり』3月11日放送)
 https://youtu.be/NTbWyY1hNNo?si=U3lYHyy1D7Yhzr4Z

・「Yahoo!ニュース」にも上がっています。
 ABCニュース(動画の文字起こし)Yahoo!ニュース2025年3月11日17:48配信
 震災2ヵ月後に福島から関西へ母子避難 14年経った今も続く子どもへの“甲状腺検査” 帰還への葛藤と集団訴訟「自分に置き換えて考えてみてほしい」(ABCニュース) #Yahooニュース
 https://news.yahoo.co.jp/articles/cf7c162dd846523f6c2e009346258da935331a85



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┗■4.新聞より2つ
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 ◆四国電力伊方原発3号機 運転容認 原告側の請求棄却 松山地裁

 四国電力伊方原発3号機(伊方町)で大量の放射性物質放出事故が起きれば生命や生活が侵害されるとして住民らが運転差し止めを求めた訴訟の判決が18日、松山地裁であり、菊池浩也裁判長は、原告側請求を棄却した。

 2011年3月の東京電力福島第一原発事故後の伊方原発を巡る集団訴訟ではこれまで、大分、広島の両地裁判決が四電の地震・火山対策や国の審査の妥当性を認め「生命や身体を侵害する具体的危険が生じるといえない」として同様に請求を退けており、運転容認の判断は3例目。

 松山地裁では原告側が2011年12月に提訴し、地震や噴火の想定の妥当性や避難計画などを争点に、40回の口頭弁論を経て2024年6月に結審した。
 原告側は、巨大地震を引き起こす危険性がある原発沖の中央構造線断層帯について、四電が実施した地下構造調査は不十分で、耐震設計の目安となる基準地震動は過小と主張。
 佐田岬半島は災害時に陸路の避難ルートが限られており、避難計画には実効性がないと指摘していた。
 追加提訴を含めた原告は計1502人(故人含む)。(後略)
             (3月18日「愛媛新聞 ONLINE」より抜粋)
https://www.47news.jp/12322491.html


 ◆もっと人間的な司法を
                    鎌田 慧(ルポライター)

 石川一雄さんの悲報を妻・早智子さんの電話で受けて絶旬した。新年から体調を崩していた。それでも回復を信じていた。彼もそうだったと思うのだが急逝した。
 埼玉県狭山市で1963年5月に発生した女子高校生殺しの犯人とされて、第一審死刑判決。二審無期懲役。最高裁で上告棄却。
 31年ぶりに仮釈放されて帰宅した時は55歳になっていた。
 それ以来、再審請求し、無実を示す鑑定書を提示しても一度も『証拠調べ」がなかった。

 高校生が白昼誘拐され身代金を要求された事件とされるが、顔見知りによる殺人で脅迫状は偽装の証明であろう。
 石川さんの家庭は極端な貧困で小学校さえろくに通えなかった。
 非識字者が脅迫状で金銭要求すると考えるなど、非識字者の苦しみと悲しみ、恐怖を想像したことのない人間の傲慢さ、とこの欄で書い
(2月11日)。

 最高裁は「他の補助手段を借りで下書きや練習すれば、作成することが困難な文章ではない」と」の地裁判決を支持している。
 「最近、急に体力が低下してきた。鑑定人尋問、再審開始決定、無罪判決、それまでの時間が心配だ」とも書いてから1カ月。石川さんは無念を抱えて旅立った。
 その日はくしくも61年前、一審死刑判決が出された日だった。
 石川さん追悼集会は4月16日(水)午後1時から、日本教育会館(東京都千代田区ーツ橋2) で。
       (3月18日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)

 

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たんぽぽ舎です。【TMM:No5167】
2025年3月19日(水)地震と原発事故情報-
              4つの情報をお知らせします
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