米国先住民のウラン採掘・精錬の被害実態 (上)(2回の連載)
 | ~来日したディネの女性たち~
 |「国や企業が人々に放射能被害を強いて、責任を取らず、
 | 補償も『原状回復』もしようとしない核被害の現状は同じだ」

 └──── 振津かつみ(チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西)

 原水爆禁止日本国民会議が、米先住民ナバホ(彼女たちの言葉で「
ィネ」)の女性二人、エイディス・フッドさんとテラシィタ(テリー)・
ケヤンナさんを、世界の核被害者=ヒバクシャとの連帯のため、被爆79年
原水禁世界大会・広島大会(8月4日~6日)に招聘しました。
 8月8日~10日には「救援関西」がコーディネートし、福島原発事故
被災地を訪問しました。
 福島では「福島原発事故被害から健康と暮しを守る会」の方々が受
入れをして下さり、浜通りの被災地で視察・交流させていただきました。

 「帰還困難区域」を抱える浪江町・津島も視察し、「ふるさとを返せ!
津島原発訴訟」の原告の方々とも交流した際には、「国や企業が人々に
放射能被害を強いて、責任を取らず、補償も『原状回復』もしようとし
ない核被害の現状は同じだ」と、米先住民の二人と福島原発事故被害者の
方々は、共感と連帯の思いを抱いて「エール交換」しました。
 そして、旅程の最後11日には、兵庫で「救援関西」主催の「講演
交流会」を持ちました。

 エイディスさんとテリーさんは、ニューメキシコ州のチャーチ・ロック
の近くのレッド・ウォーター・ポンド・ロードという村から来ました。
 この集落は、ノースイースト・チャーチロック鉱山(NECRM)
クィヴェラ/カーマギー鉱山に挟まれ、ユナイテッド・ニュークレア社の
チャーチロック精錬所(1977~1982年操業)の近くにあります。

 二つの鉱山は1983年に廃坑となりましたが、大量の鉱山廃棄物が残さ
れました。
 また、チャーチロック精錬所では1979年7月16日に、放射性廃棄物
貯留池ダムが決壊事故を起こし、3億5,720万リットル、重量にして
1,100トンの有毒な廃液(放射性物質と酸などの化学物質が混ざった
廃液)が、コロラド川の支流に流れ込み、160kmも離れた下流まで
汚染が広がるという、アメリカ史上最大の放射性廃液漏出事故を
起こしました。

 1979年は、米国ではちょうどスリーマイル原発事故があった年です。
3月に起こったスリーマイル原発事故は、すぐに国内外に報道され
したが、ここの鉱滓ダム決壊事故はほとんど報道もされませんでした。
 そして、何十年も経った今も放置されています。

 エイディスさんとテリーさんは、「汚染された土地や水を元に戻し
住民の健康を取り戻し、自然と文化の環境を守り存続させること」
目指して2006年に設立された、住民組織「レッド・ウォーター・ポンド・
ロード・コミュニティー協会」(RWPRCA)のリーダーです。
 二人が住んでいるナバホ・ネーションは、米国南西部のニューメキ
シコ、アリゾナ、ユタ、コロラドの4州の州境が交わるフォー・コーナ
ーズと呼ばれる場所にあります。
 面積69,000キロ平方メートル(北海道より少し狭いくらい)、人口
25万人、米先住民の中では最大です。
 この地域にはウラン鉱脈があり、核開発によって残されたウラン
廃坑・製錬所跡などが集中してあります。
             (下に続く)
   (ノーニュークスアジアフォーラム通信 No.190より)