「鴨下さんに対し273万7,000円を東京都へ支払うこと、
  裁判費用を被告が負担」
  息子さん・全生(まつき)さんの涙ながらの「こんなひどい法廷は
  さっさと出ましょう」の言葉に抗議鳴り止まぬ法廷を後にした
  10/7避難住宅追い出し訴訟判決
 

Y.S(東京都在住)

 10月7日(月)、季節外れの暑さの中、東京の避難住宅追い出しをめぐる裁判の判決には、大法廷96席が抽選になるだけの人が並んだ。
 原発事故の被害者でありながら、被告席に座らされる鴨下さんは、大腸がんを患いながらも声を上げ続ける。
 

 満杯の法廷に裁判官大須賀寛之が入ってくるが始まらない。東京都側は弁護士もいない。来るまで待っているのか?

 「これから判決を言い渡します!」いきなり始まった。
 裁判長は後ろめたい気持ちでもあるのか異様なテンション。
 「主文!」と叫んだ後、鴨下さんに対し、「273万7,000円を東京都へ支払うこと、裁判費用を被告が負担すること、この判決は仮執行を行うことができる」ことが言い渡された。

 どんな理屈をこねた判決かと傍聴席が身構えたとたん、「判決文の読み上げは略します!」と言い放つ。

 誰も立たない。帰る理由がない。「理由を言えよ!」「判決を読め!」-次から次へと抗議の声。
 有給休暇を取ったり、遠方からきた人もいるのに、この裁判はなんだ。
 それでも裁判官は「手続きは全て終了しました」「退去してください」などと繰り返すのみで、立ち去る気配もなく座り続け「退廷命令」。「そそくさと裁判長は立ち去った」と書かれたくないといった自己顕示にも見えた。


 弁護士が抗議の意思を示し「この場は終わりましょう」と呼びかけ、鴨下さんの息子さん・全生(まつき)さんの涙ながらの「こんなひどい法廷はさっさと出ましょう」の言葉に抗議鳴り止まぬ法廷を後にした。

 鴨下さんのいわきの自宅は、今年1月の時点でも放射線管理区域を超えた汚染があり、裁判所も認定した。
 広島「黒い雨」裁判判決でいう「放射能環境」は今も続いている。
 にもかかわらず避難住宅にいる権利はないと判決はいう。
 これだけの国・県の「安心・安全」キャンペーンにも負けずに避難を続けるのは当然であるとともに素晴らしい行動であると思う。
 こうした人たちから住まいを奪い、数百万の支払いまで科すこの判決は、「国にたてついたらこうなるぞ」という見せしめ以外の意味を持たない。
 控訴については鴨下さんの体調も考え検討するとのこと。
 

 

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 原発避難者に賠償命令 東京地裁判決

 (前半省略)


 男性側は、住宅供与の打ち切りは自宅への帰還の強制だと主張。
 これに対し大須賀寛之裁判長は、避難指示区域外の避難者に対する住宅供与について、福島県が都に要請を延長しなかったことなどを踏まえ「明け渡しを求めることが不合理な負担を課すとは評価できない」と退けた。
 男性は現在、神奈川県内に居住。判決後に都内で記者会見し「被ばくを回避するために避難を続けたいという気持ちに触れられていない判決で、残念だ」と批判した。 (10月8日「東京新聞」夕刊7面より抜粋)