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原晟也 宮坂奈津
誤認逮捕で14時間半拘束された 「屈辱分かって」60代女性が提訴
提訴後に記者会見で取材に応じる女性=2024年6月17日午後2時2分、神戸市中央区、原晟也撮影
昨年12月、兵庫県尼崎市内のコンビニ店内から現金を盗んだ疑いで誤認逮捕された同市の60代女性が17日、違法な逮捕などにより精神的損害を受けたなどとして県と国、コンビニ運営会社を相手取り、330万円の損害賠償を求める訴えを神戸地裁に起こした。
女性は記者会見を開き「罪のない人を犯人扱いすることで、どれほどの精神的な負担を与え、屈辱を受けるか分かってほしい。今回の事件を一生忘れることができない」と声を震わせながら語った。
訴状などによると、女性は昨年12月1日未明、勤務していた尼崎市内のコンビニ店から現金数十万円を盗んだとして、窃盗容疑で県警尼崎南署に逮捕された。女性は一貫して犯行を否認。同日、店側から盗まれていない可能性がある趣旨の連絡を受け、署員らが捜査したところ、なくなった現金は会社本部に送金されており誤認逮捕だと判明した。女性は、逮捕から約14時間半後に釈放された。県警はその後、誤認逮捕であることを発表。女性は県警から2回にわたって説明と謝罪を受けたという。
訴状で、女性は「防犯カメラ映像の確認を繰り返し求めたが聞き入れられなかった」と主張。警察官が、被害の発生の確認及びその裏付け資料の収集などの捜査を怠ったと指摘し、「無実にもかかわらず約14時間半も拘束されて不眠や抑うつの症状が強く生じ、日常生活に支障が出ている」などと賠償を求めている。
記者会見で女性は「警察官からの取り調べで『お前しかいないんだから認めろ』『何で認められないんだ』などの自白の強要があった」とも説明した。「警察官から言われ続けるシーンがフラッシュバックする」と語った。
県警は「訴状の内容を検討し、関係機関と協議の上、適切に対応したい」としている。(原晟也、宮坂奈津)
「取調室で『吐け』と自白強要」 誤認逮捕され提訴の女性が意見陳述
誤認逮捕され、国や県を提訴した女性=2024年8月8日午前11時5分、神戸市中央区、原晟也撮影
誤認逮捕された兵庫県尼崎市の60代女性が、県と国、コンビニ運営会社を相手取り330万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が8日、神戸地裁(冨上智子裁判長)であった。女性は意見陳述で「吐け」と自白を強要された、と述べた。
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県と国、運営会社側は請求棄却を求めている。
訴状や県警の発表などによると、昨年11月30日、女性が勤めていた尼崎市内のコンビニ店から現金が盗まれたと運営会社が通報。女性は関与を否定していたが、翌日未明に窃盗容疑で県警に逮捕された。
その後、被害がなかったことが確認され、誤認逮捕が判明した。女性は逮捕から約14時間半後に釈放されたという。
女性は違法な逮捕などにより精神的損害を受けたと主張。この日の意見陳述で女性は「『自分が取ったと吐け』と狭い取調室で何人もの警察官から言われ、逮捕状が発付されると、手錠をかけられ、縄で椅子にくくりつけられた」と主張した。
誤認逮捕以降、生活は一変し、夜眠れずフラッシュバックを起こすことがあるといい、「ほんのわずかな注意を払えば誤認逮捕を避けることができたはずだ」と述べた。 自白を強要するような発言や、椅子にくくりつけた行為について県警監察官室は「回答を差し控えます」としている。
原告代理人によると、県側は誤認逮捕の事実は認めたものの、損害額で争う姿勢。運営会社側は被害申告した違法性や損害額について争う姿勢だという。
朝日新聞社