◆「孤立」助けてもらえるのか  屋内退避
  能登を教訓に見直し求める声


 <住民を守れるか 東京電力・柏崎刈羽原発再稼働を問う>中編

 「自然災害と原子力災害が同時に起きることを想定し、前に進めていきたい」
 伊藤信太郎原子力防災担当相は7日の会見で、東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県の花角(はなずみ)英世知事と内閣府で前日に面会したことに触れ、強調した。

伊藤氏は、自治体に義務づけられた原発事故の避難計画づくりを支援する責任者だ。
 伊藤氏は6日の面会で、花角知事が昨年から求めていた事故時の避難道路整備について、国が全額を負担すると伝えた。再稼働の地元同意を早期に取り付けたいという狙いが透ける。
 だが国の思惑とは裏腹に、
花角知事は面会で別の要求もした。

能登半島地震の教訓から屋内退避を前提とすることに疑問を投げかけ、見直すよう求めた。

地震や津波の複合災害が起きれば、家屋倒壊のほか電気や水などライフラインが止まり、家にとどまれない。

その現実を突き付けたのが、能登半島地震だった。(中略)

 地震から4日後、地区住民らでつくる自主防災会は原発事故時の避難についてアンケートし、全世帯の9割に当たる75軒が答えた。
 「救助に来てもらえるのか」「なんとしても逃げる」「車がある人は、行ける所まで避難を始めると思う。大混乱になる」「避難経路を確保できない冬季は原発を運転しないで」。否定的な意見が多く寄せられた。
屋内退避の方針についても「知らない」と答えたのが51軒に上った。
 内閣府の担当者は「自宅が倒壊したら、地域の指定避難所に避難することになる」と、あくまでも屋内退避にこだわる。だが、宮川地区の避難所は海に近く、津波が来れば使えない。(中略)

 宮川地区の避難訓練に参加したこともある木村氏はこう指摘する。「原発を再稼働させたいなら、最悪の事態を想定した避難計画を立てるべきだ。だが、全てを想定することはとても無理で、住民の被ばくは避けられない」
              (6月9日東京新聞朝刊24面より抜粋)(上は6月8日)
   詳細は    https://www.tokyo-np.co.jp/article/332398
  

「屋内退避」を押し付けられても「なんとしても逃げる」と原発近くに暮らす人は考える 難題ばかりの避難計画


 ◆  放射能防ぐ機械あっても・・・  「担架が入らない」
 <住民を守れるか 東京電力・柏崎刈羽原発再稼働を問う>後編

 扉を開けると、太いダクトでドラム缶をつないだような、SF映画に出てきそうな機械が現れた。東京電力柏崎刈羽原発の北約2キロ、新潟県柏崎市宮川地区の公民館「高浜コミュニティセンター」最上階の2階に設置された、イスラエル製の陽圧化装置だ。
 
外気をフィルターで浄化して取り込み、館内の気圧を高めて放射性物質が入るのを防ぐ。原発で深刻な事故が起きた時、避難した人たちの被ばくを避けるためだ。市によると、装置や館の気密性を高める工事に約1億4000万円をかけた。

 館は、体が不自由な高齢者ら要支援者らが一時的に退避する「放射線防護施設」に指定されている。事前に支援の必要を申告した住民30人が3日間過ごせるだけの水と食料、毛布も備えている。
 
だが、陽圧化装置の完成後に「欠陥」が発覚した。稼働中は気密性を保つため、玄関を使えない。隣接する体育館から、空気を逃がさないよう分厚い扉に挟まれた調節室を通って館に入る。調節室の奥行きは約180センチ。体が不自由な場合もある要支援者が自宅から移る施設なのに、担架もストレッチャーも人を乗せたままでは入れず、立てる必要がある。 

「装置をつけたことが大事なのだろう。懸命にやっているというポーズでしかない」。(中略)

 
地震や津波と同時に原発事故が起きれば、施設自体が使えなくなるリスクをはらむ。高浜コミュニティセンターも海に近く、津波に襲われると使えない。     (中略)

 
吉田さんは「そもそも避難計画を考えなければならないことに、強い違和感がある。原発の危険と背中合わせだから、計画が必要になる
私たちは安全に暮らしたいだけ。原発の再稼働など論外だ」と訴えた。

                     (6月11日東京新聞朝刊23面より抜粋)
    詳細は    https://www.tokyo-np.co.jp/article/332625?rct=genpatsu
    1億4000万円かけた対策は「ポーズ」と住民は見透かす
     
要支援者向け「被ばく防止施設」に担架が入らない