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 千葉県

「PFAS」千葉 鎌ケ谷の井戸水から目標値の最大240倍の濃度検出

有機フッ素化合物の「PFAS」のうち、有害性が指摘されている2つの物質について、千葉県鎌ケ谷市の井戸水から国の暫定目標値の最大240倍の濃度が検出され市などが原因を調べています。

有機フッ素化合物の「PFAS」の一種「PFOS」と「PFOA」の2つの物質は有害性が指摘され、国内で製造や輸入が禁止されています。

千葉県内では、柏市と白井市の境を流れる川や周辺の井戸などで、2つの物質を合わせた濃度が国の暫定目標値の1リットル当たり50ナノグラムを上回って検出されています。

こうした状況を受けて2つの市に隣接する鎌ケ谷市では川の上流部にあたる海上自衛隊下総航空基地に近い地域で、先月、17本の井戸の調査を行ったところ、このうち7本の井戸の水から国の値を超える濃度が検出され、最大で240倍に上ったということです。

市によりますと、一部の井戸水はふだん飲み水として利用されていますが、これまでのところ体調の異変に関する情報は寄せられておらず、市は調査の結果を周知し、今後は飲まないよう呼びかけています。

また、市は今後、範囲を広げて追加調査を行い、県などと連携して原因の特定を目指すとしています。

 

 

 

「PFAS」千葉 柏の井戸水から暫定目標値の最大30倍の濃度検出

 千葉県

有機フッ素化合物の「PFAS」のうち、有害性が指摘されている2つの物質について、千葉県柏市の井戸水から国の暫定目標値の最大30倍の濃度が検出されました。近くの水路では以前から国の値を上回る濃度が検出されていて、市などは原因を調べることにしています。

有機フッ素化合物の「PFAS」のうち、「PFOS」と「PFOA」の2つの物質は有害性が指摘され、国内で製造や輸入が禁止されています。

柏市内では少なくとも5年前から、隣の白井市との境界を流れる川で2つの物質を合わせた濃度が国の暫定目標値の1リットル当たり50ナノグラムを上回って検出され、周辺で調査が進められています。

ことし3月には、海上自衛隊下総航空基地に近い水路の4か所で、いずれも国の値の10倍以上の濃度が検出され、市は4月、周辺の84本の井戸で追加調査を行いました。

その結果、このうち飲み水として利用されているものを含む18本の井戸の水から暫定目標値を超える濃度が検出され、最大で30倍に上ったということです。

これまでのところ体調の異変に関する情報は寄せられていませんが、市は調査の結果を周知し今後は飲まないよう呼びかけています。

市は今後、さらに調査の範囲を広げるとともに、県と連携して原因の特定を目指すとしています。

 

 

 

“有害”化学物質PFAS 各地で波紋広がる

 

いま有害性が指摘されている、ある化学物質が国内で検出される事例が相次いでいます。

有機フッ素化合物=PFAS(ピーファス)。

自然界で分解されることがほとんどないことから、「フォーエバーケミカル=永遠の化学物質」とも呼ばれるこの物質。

水や油をはじく特性を持ち、かつては焦げ付かない調理器具や防水の衣類など幅広い用途に使われていましたが、最新の研究でがんなどの健康被害との関連が指摘され、欧米を中心に製造や使用の規制が進められてきました。

そのPFASがいま、在日アメリカ軍の基地内やその周辺から相次いで検出されていて、住民の不安が高まっています。

(おはよう日本ディレクター 渡邊覚人/ 沖縄放送局記者 西林明秀/ 横浜放送局記者 古市悠)

横須賀基地からPFAS 司令官が謝罪

 
 
アメリカ海軍 横須賀基地

在日アメリカ海軍の基地がある神奈川県横須賀市。

10月、基地を訪れた横須賀市の上地克明市長は「アメリカ軍との信頼関係が大きく損なわれた」と憤りをあらわにしていました。

発端となったのは、基地内の排水処理施設で相次いで確認されたPFASと呼ばれる化学物質の検出。

面会した海軍のカール・ラティ司令官は、横須賀市からの異例の抗議に「大変申し訳ない。反省している」などと謝罪しました。

 
横須賀市 上地市長(左)と米海軍 ラティ司令官(右)

“永遠の化学物質” PFASとは

PFAS=有機フッ素化合物は、炭素とフッ素などの元素が結合した有機化合物の総称で、PFOSやPFOAなど数千種類の物質を含んでいます。

 
PFAS=有機フッ素化合物

水や油をはじき、熱に強い特性を持つことから、20世紀半ば以降、テフロン加工のフライパンや食品のパッケージ、防水服などさまざまな製品に使われてきました。

航空機の火災などで使われる泡消火剤にも活用され、アメリカ軍基地の中ではジェット機事故や訓練などでPFASが含まれる泡消火剤が使われてきたことがわかっています。

 
アメリカ軍 嘉手納基地でのジェット機の消火訓練の様子

過去には、泡消化剤がタンクから漏れ出たり、誤って基地の外に大量に放出されたりしたこともありました。

 
アメリカ軍 普天間基地から放出された泡消火剤(2020年4月)

しかし、高濃度のPFASは人体に有害な可能性があるとして、2009年以降、一部のPFASから段階的に国際条約で製造・使用が禁止されるようになっています。

アメリカ環境保護庁(EPA)は、特定のレベルのPFASは以下の健康影響を引き起こす可能性があるとしています。

▽前立腺がん・精巣がんなど一部のがんのリスク上昇
▽妊娠高血圧症など生殖への影響
▽コレステロール値の上昇 肥満のリスク
▽低出生体重・骨の変異など子どもの発達への影響
▽ワクチン反応など免疫力の低下

また、数千もあるPFASの化合物の中で有害性が研究されているのは一部でしかないことや、さまざまな形でPFASにさらされる可能性があることから、健康への影響を正確に追跡することが難しい物質であるとも指摘しています。

さらに、PFASは「フォーエバーケミカル=永遠の化学物質」と呼ばれ、ほとんど分解されることなく体内や自然界に蓄積されるという特徴があり、欧米を中心に規制強化が進められてきました。

現在、各国で水道水や河川や地下水などにおける基準値が設けられています。

 

日本では法律的な規制はなく、国が水道水と環境中について、暫定の指針値として上限の目標とすべき濃度を示しています。

最大で暫定指針値の258倍 “原因は究明中”


横須賀基地内で最初にPFASが確認されたのはことし5月。

排水処理施設で泡が見つかり、アメリカ軍が調査した結果、排水の一部から環境省が示した暫定指針値を超えるPFASが検出されました。

排水は通常、東京湾に流れ出ていることから、アメリカ軍は横須賀市に対し「PFASが基地の外に流出した可能性がある」と報告。

その後も排水処理施設の水から、暫定指針値以上の値が確認され、これまでに最大で1リットルあたり1万2900ng(指針値の258倍)が検出されています。アメリカ軍は「原因の特定には至っていない」としていますが、11月1日、排水処理施設にPFASを吸着するフィルターを設置しました。

海への影響は? 漁師の不安


「悔しいところですよね、流してはいけないものをやっぱり流している」

そう話すのは、市内で漁業を営む小松原和弘さん(50)。横須賀基地でのPFASの問題が報じられて以降、新聞記事をスクラップするなど強い関心を寄せてきました。

 

親子3代にわたり、横須賀の海でミル貝などの潜水漁を行ってきた小松原さん。漁場が基地からすぐ近くにあるため、海産物に影響がないのか、行政の責任で調べてほしいと考えています。

 

漁業者 小松原和弘さん
「祖父も父も潜ってきた海で、私も後を継いだ海なので、やはりこの海は守っていきたいです。アメリカ軍には日本を守ってもらっているという思いもあるのであまり責めたくはないですが、PFASをいつから流していたのか、海にどれだけ影響を及ぼしているのかを知りたいですし、国や市にはきちんと調べてもらいたいです」

横須賀市 独自に海水調査

 
 
横須賀市の水質調査(10月12日)

横須賀市は問題の発覚後、独自の海水調査を始めました。毎月、排水処理施設の近くを含む基地周辺の7か所で海水を採取して、PFASの濃度を調べています。

これまでのところ暫定指針値を超える値は確認されていません。

調査は今後も続けていくとしています。

 

横須賀市基地政策課 宮治祐輔主査
「市民の皆さんの安全安心を確保するために、アメリカ軍基地周辺の海水の調査は継続的に実施していくことが大切だと思います」

横須賀市はさらに、排水処理施設に設置されたフィルターなどアメリカ軍のPFAS対策の効果を確かめるため、日米両政府で合意している「環境補足協定」に基づく立ち入り調査を、近くアメリカ側に申請することを決めました。

一方、小松原さんが求める海産物の調査については「海産物についてのPFASの基準がないなかで、市が調査することは難しい。国が基準を示したうえで調査を行うべきだ。不安に思う声が集まれば、国への要請を検討したい」としています。

アメリカ軍基地 PFAS検出は各地で…


アメリカ軍基地内で高濃度のPFASが検出される事例は各地で起きています。

ことし1月、青森県の三沢基地で、PFASを含む消火剤を流すために使われていた配管が破損し、およそ760リットルの水が流出していることが判明しました。その後、基地内を調査したところ、暫定指針値の最大42倍の濃度のPFASが検出されました。

さらに、9月には神奈川県の厚木基地で、基地内の調整池にPFASを含む泡消火剤が誤って放出されました。

調整池とつながる基地内の川からは暫定指針値の3倍を超える濃度で検出されています。

“基地の外”でも… 深刻化する沖縄の実態


こうした中、すでに「基地の外」でPFASの検出が相次いでいる地域もあります。

在日アメリカ軍専用施設のおよそ7割が集中する沖縄県です。県内の基地周辺にある河川や湧水、さらに一時は水道水からも高濃度のPFASが検出されています。

 
PFASの検出で飲めなくなった湧き水

沖縄県が、ことし6月に公表した最新の調査では、47か所のうち、33か所で国が定める暫定指針値を超えていました。

最も高かったのは嘉手納基地周辺の河川で1600ng/l(暫定指針値の32倍)。

こうした状況は、調査を始めた2017年から続いています。

体内にもPFASが…基地周辺住民の血液検査

身の回りの水から高濃度のPFASが検出される中、すでに人体にも入り込んでいるのではないか。

こうした疑問を抱いた市民グループ「PFAS汚染から市民の命を守る連絡会」が、ことし6月から、基地周辺に住む人など387人を対象に血液検査を実施し、10月に結果を公表しました。

 

結果は衝撃的なものでした。

PFASのうち、PFOSなど3つの物質の血中濃度を調べたところ、宜野湾市や北谷町など基地周辺の5つの自治体で、最も高い人で110.9ng/ml、平均でも21.3ng/mlが検出された
ということです(※PFOS、PFOAなど3つの化合物の合算値)。

2021年度に環境省が行った全国調査の平均値(7.1ng/ml)と比べ、3倍になっています。

さらに、世界で唯一血中濃度の基準を定めたドイツの値ではPFOS:20ng/ml、PFOA:10ng/mlですが、その基準に照らし合わせると、27人が「健康リスクがある」と指摘されるレベルでした。

市民グループの代表は「住民のPFASの値が高くなるのは、基地が理由だということが明らかだ」と話したうえで、行政がより大規模な調査に乗り出すことを求めています。

基地周辺に広がる 健康被害への不安


住民からは、健康被害を不安視する声があがっています。

北谷町に住む徳田伝さん(67)。30年以上嘉手納基地の近くで暮らしてきました。

徳田さんの血液からは合算で24.9ng/mlが検出されました。ドイツの基準値は下回りましたが、全国平均の3.5倍になっていました。

徳田伝さん
「数字を見てびっくりしました。『まさか』とショックを受けましたね。そこまで自分自身が汚染されているということには、考えが及んでいませんでした」

 

日頃から水の摂取には気を遣い、飲み水はミネラルウォーターにしてきたという徳田さん。

一方で、経済的な面を考慮すると、煮物やスープなど料理にまでミネラルウォーターを使うことはできず、水道水を利用せざるをえないと言います。

 

徳田伝さん
「飲み水については意識していましたが、その私でもそれなりの数値が出ているので、この先、健康被害が出てこないか、不安を感じます。できるだけ今の水の使い方を変えたほうがいいとは思いますが、そうしたくてもできない生活者としての限界、どうしても水道水に頼らざるを得ない生活があります。引き続き水を使いつつ、国や自治体などに対して、なんとかこの状況を打開するための策を取ってもらうことを住民として声を挙げていくしかないのかなと思っています」

将来への不安 子育て世代の思い


普天間基地の近くに住み、3人の子どもを育てている具志堅美乃さん(44)も、PFASの問題が明らかになって以降、子どもたちに影響が少しでも及ばないよう、飲み水をミネラルウォーターにしたり、洗った水筒の水滴をきれいに拭いたりしてきました。

今回、具志堅さん自身の結果は低い数値でしたが、問題の抜本的な解決が図られない現状では、この地域で子育てをしていくことへの不安は拭えないといいます。

 

具志堅美乃さん
「今回、自分は数値が低かったから安心だと勝手に思っていたけど、もしかしたら自分の親戚や近所の人が高い数値かもしれないんだと思うと、簡単に安心だと言っていいのかなという複雑な気持ちです。すごくもやもやするし、気持ちが苦しくなりますね。いつまでなんだろうと思います。まずは汚染源の特定をして、汚染した人が汚染源をきれいにしてほしい。本当にそれだけです」

“背景に米軍基地か 調査の徹底を”

 
 
京都大学大学院医学研究科 原田浩二准教授

今回の血液検査の結果を専門家はどう見ているのか。

市民グループから依頼を受け、採取した血液の分析を行った京都大学大学院の原田浩二准教授です。

京都大学大学院医学研究科 原田浩二准教授
「この地域特有のなんらかの汚染源がないと、血中濃度が全国の平均よりも高いという現象はなかなか起きないことです。アメリカ軍はこれまでPFASを含む泡消火剤を使ってきて、基地や施設の周辺では地下水から検出されるということがこの2~3年で次々と明らかになっています。また、アメリカ軍基地のそばを流れる川の下流が浄水場の取水源の一つとなっていて、この川からもPFASが検出されています。やはり基地から土壌を通じてPFASが染み出してきているのではないかと推測され、住民の血中濃度の高さと基地の存在は関係があると考えています」

原田さんは、今後問題を解決していくうえで、より大規模な血液検査で実態を把握するとともに、周辺環境の徹底的な調査が必要だと指摘します。

 

「PFASは非常に分解がされにくい物質なので、一度汚染されると、その汚染は数十年単位で考えなければいけません。知らないうちにPFASを摂取している人はたくさんいるでしょうし、まだ汚染が明らかになっていない場所もあると思います。さらに深く調査をしていかないといけない。そして、PFASにはより深刻な有害性が隠れている可能性もあるわけで、欧米と比べると遅れている対策を早く整備する必要がある」

原因特定へ 立ち入り調査求める沖縄県


アメリカ軍はNHKの取材に対し「PFASは世界中の工業製品に含まれていることを理解することが重要で、PFASの真の発生源を調査・評価することは困難だ」と回答しました。

アメリカ軍はこれまで、基地の中で起きたPFASの流出事故などについては認めていますが、基地の外については関連を認めていません。

一方、沖縄県は「アメリカ軍が汚染源である可能性が高い」として、原因の特定を行って問題の解決を図ろうと、これまでに何度も立ち入り調査を要求してきました。

ただ、実現したことは一度もありません。

 

なぜ、基地への立ち入りができないのか。

沖縄県にとって障壁となっているのが、日米地位協定の存在です。協定は、日本でのアメリカ軍の地位を定めたもので、日本の当局が基地に立ち入るためにはアメリカ軍の許可が必要となります。

また、地位協定には環境に関する調査についての取り決めもありますが、「環境に影響を及ぼす事故(漏出)が現に発生した場合」などと記されていて、ケースは限定されています。

「基地の周りの水から高濃度のPFASが検出されている」だけでは、調査の対象にならない可能性が高いのです。

今後 求められる対応は

実はアメリカ軍は、アメリカ国内では基地周辺の水道水について調査しPFASの濃度を公表するなどの対応をとっています。日本の基地周辺についても、日米両政府が協力して調査し、責任を持って問題の解決に当たっていくことが求められます。

京都大学大学院の原田浩二准教授は、まずは国がPFASについての明確な基準を示すことが重要だと指摘します。現状、水道水や河川などのPFAS濃度の評価については、国は「暫定」の指針値や目標値を示すにとどまっていて、はっきりとした基準が存在していません。

環境省は「国内外の最新の科学的知見などを踏まえながら、必要に応じて見直しを検討する」としていますが、原田准教授は「『暫定』のままでは、行政が思い切った調査に乗り出せない要因になっている」と指摘しています。

「永遠の化学物質」に私たちの社会はどう向き合っていくのか、今後も取材していきたいと思います。