ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

「死刑の実態、情報提供が必要」 絞首刑違憲訴訟で千葉元法相が意見

国民的な議論を促すため、2010年8月に初めて報道陣に刑場を公開した千葉景子・元法務大臣=10年7月28日、東京都千代田区

 

 日本の死刑で採用されている絞首刑は「残虐な刑罰を禁じた憲法に違反する」として、大阪拘置所の死刑囚3人が国に死刑執行の差し止めなどを求めた行政訴訟の口頭弁論が19日、大阪地裁であった。原告側は執行に立ち会った千葉景子・元法相が「執行は感情などが全く感じられないほど機械的だった」などと説明した報告書を提出した。

 

  【写真】報道機関に公開された東京拘置所の「刑場」の「執行室」。右奥の床から壁づたいに取り付けられた金属の輪にロープを通し、天井の滑車からつり下げる。赤線の四角部分が踏み板=2010年8月、東京都葛飾区、代表撮影 

 

 千葉氏は2010年、法相として初めて死刑執行に立ち会った。原告側代理人が千葉氏から聞き取った報告書によると、死刑囚は刑場に入室後、「流れるような手続きで」執行されたといい、千葉氏は「そうでなければ粛々と執行できないのだろう」と振り返った。

 

  死刑執行は検察庁からの上申を受けて、法相が命令するという。千葉氏は当時、執行する順番の決め方を法務省職員に確認したところ、基本的には刑の確定順だが、再審手続きや健康状態などを踏まえ、順番通りに進まない場合もあるとだけ説明された。基準の詳細や組織内の意思決定を誰が担っていたかは「よくわからないままだった」という。

 

  同年、報道陣に刑場を公開したことについては、「国民はあまりにも死刑の実態を知らされていない」と説明。09年に裁判員制度が始まったばかりだったことを踏まえ、「国民が適切に刑罰を判断するには適切な情報提供が必要だ」と法務省職員を説得した経緯を明かした。

 

  原告側はこの日、死刑執行に立ち会った経験のある元刑務官らの証人尋問や、裁判官による大阪拘置所の刑場の検証も地裁に請求した。絞首刑の実態や残虐性を訴える方針という。地裁は今後、国側の意見を聞いた上で、尋問の採否などを判断する。(山本逸生)

朝日新聞社