(英語記事 South Africa files ICJ case accusing Israel of 'genocidal acts')
南アフリカはICJに、来週にも審理を開き、ガザでの軍事行為を全面停止するなどの「暫定措置」をICJとしてイスラエルに要請するよう求めた。
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南アフリカ、イスラエルが「ジェノサイド行為」と国際司法裁に訴え
30dec2023 14:00 BBC

画像提供,EPA-EFE/REX/SHUTERSTOCK
イスラエル軍の攻撃を受けるガザ地区
南アフリカ政府は29日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で「ジェノサイド(大量虐殺)行為」を繰り広げていると主張し、国際司法裁判所(ICJ)に対応を要請した。
ICJは、武力紛争の際に適用されるジュネーヴ諸条約にもとづく義務にイスラエルが違反しているとの主張が提起されたことを認めた。
イスラエルは南アフリカのこの主張について、「事実無根」だとして強く反発。イスラエル外務省は、「南アフリカが広める血にまみれた誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)を、嫌悪しながら拒絶する」と述べた。
オランダ・ハーグに設置されているICJは、国連の主要な司法機関。国家間の紛争を国際法に従って解決するほか、国際的な法律問題について勧告的意見を与える。
南アフリカ政府は声明で、自分たちには「ジェノサイドを防ぐ」義務があると主張。「南アフリカは、ガザ地区に対してイスラエルが現在続ける攻撃に巻き込まれた民間人が、武力の無差別行使と住民の強制移住によって受けている被害について、深刻な懸念を抱いている」と表明した。
「さらに、人道に対する犯罪や戦争犯罪など国際的犯罪が繰り広げられているとの報告が相次ぐほか、ジェノサイドやそれに関連する犯罪の定義に見合う行為が、ガザで続く虐殺の一環として行われた、あるいは今も行われている可能性が、相次ぎ報告されている」と、南アフリカは指摘した。
ICJに提出した84ページにわたる文書で南アフリカは、「イスラエルによる行為や不作為」は、「パレスチナの民・人種・民族グループの相当部分の破壊を意図しているため、その性質上、ジェノサイド的」だと主張している。
南アフリカはICJに、来週にも審理を開き、ガザでの軍事行為を全面停止するなどの「暫定措置」をICJとしてイスラエルに要請するよう求めた。
これに対してイスラエル外務省のリオル・ハイアト報道官は、南アフリカの主張は「(ICJを)悪用する、侮蔑に値するおぞましい行為」だと強く反発。南アフリカは「イスラエル国家の破壊を呼びかけるテロ組織に協力」しており、「ガザ地区のパレスチナ人の苦しみ」は、「住民を人間の盾として使い、人道援助を物資を盗む」イスラム組織ハマスの責任だと主張した。
「イスラエルはあくまでも国際法を重視し、国際法を順守しながら行動している。イスラエルの軍事的行動はハマスのテロ組織とハマスに協力する他のテロ組織にのみ向けられている」
「ガザ地区の住民が敵なのではないと、イスラエルは明示してきた。無関係の人たちへの危害を最小限に抑え、ガザ地区に人道援助物資が入れるよう最大限の努力をしている」とも、イスラエル外務報道官は述べた。
南アフリカ政府はこれまで、ガザにおけるイスラエルの軍事作戦を厳しく批判してきた。11月初めにはイスラエルから自国外交官を全員呼び戻した。イスラエルはこれを受けて、自国大使をプレトリアから帰国させた。
さらに、南アフリカ国民議会はイスラエルとの外交関係を全面停止するよう議決したが、政府はまだ正式に対応を回答していない。
南アフリカは今回のICJへの要請に先立ち、11月には国際刑事裁判所(ICC)にも、イスラエルがガザで戦争犯罪を行っていると訴えた。ICCは集団殺害犯罪、人道に対する罪、戦争犯罪など、国際社会全体にかかわる最も重大な犯罪に問われる個人を訴追する。
イスラエルはICCに加盟していない。
イスラエルとハマスの今回の戦争は10月7日、ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けて始まった。イスラエル南部への攻撃でハマスは、民間人を中心に約1200人を殺害し、約240人を人質にした。
これを受けてイスラエルがガザ地区に攻撃を開始。ハマスが運営する現地の保健省によると、ガザでは女性や子供を中心に2万1500人以上が死亡している。
(英語記事 South Africa files ICJ case accusing Israel of 'genocidal acts')
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区で、イスラエル国防軍(IDF)が難民キャンプに向けて前進し、推定15万人のパレスチナ人がガザ地区中部からの避難を余儀なくされていると、国連が28日に発表した。
複数の目撃者やハマスからは、IDFの戦車が中部にあるブレイジ難民キャンプ東の郊外に到達したとの報告が寄せられている。
IDFは最近、地上攻撃を拡大し、ブレイジ難民キャンプや近隣のヌセイラット難民キャンプ、マガジ難民キャンプを標的にしている。
ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、IDFの砲撃により、28日にはガザ地区全域で数十人が死亡した。
イスラエルとハマスの戦闘は、ハマスが10月7日にイスラエル南部を奇襲し、イスラエル側で約1200人を殺害し、約240人をガザ地区へ連れ去ったことで始まった。
ガザ地区の保健省は、11週間にわたる戦闘でこれまでに2万1300人が殺されたとしている。そのほとんどは子供と女性だという。
難民キャンプに避難指示、「行き場ない」と国連
IDFは、ブレイジ難民キャンプとヌセイラット難民キャンプを含むガザ地区中部に広がる地域からの避難を呼びかけている。この地域の9万人近い住民と、6万1000人の避難者は、さらに南のデイル・アル・バラフへ移動するよう指示されている。
しかし国連は28日、すでに数十万人の避難者が身を寄せるデイル・アル・バラフは過密状態で、新たな避難者の行き場はないと警鐘を鳴らした。
オマルさん(60)と少なくとも親族35人は、ブレイジ難民キャンプからの避難を余儀なくされた。
「その瞬間が来てしまった。そうならないことを願っていたが、強制退去は避けられないようだ」と、オマルさんはロイター通信に電話で語った。「この残忍なイスラエルとの戦争のせいで、私たちはいま、デイル・アル・バラフに設置されたテントの中にいる」。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のガザ地区責任者、トーマス・ホワイト所長は、南部ラファにますます多くの人が押し込まれ、「支援を提供できない非常に狭い地域に、さらに多くの人がやってきている」と述べた。
ガザ地区の保健省は28日夕、家を追われた市民が身を寄せていると報じられているラファの建物にイスラエル軍の空爆があり、20人が死亡したと発表した。
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激しい戦闘続く
ガザ地区の保健省の報道官は28日朝、中部のマガジ、北部の町ベイトラヒア、南部の町ハンユニスにイスラエル軍の攻撃があり、50人が死亡したと発表した。
最も多くの死者が出たのはベイトラヒアで、パレスチナメディアは集合住宅4棟が破壊され、30人が死亡したと報じた。
地元テレビ局のジャーナリスト、バセル・へイル・アルディン氏はAP通信に対し、自分の親族12人ががれきの下敷きになり、死亡したとみられていると語った。また、隣人9人が行方不明になっているとした。
こうした中、パレスチナ赤新月社は、南部ハンユニスのアル・アマル病院近くのアパートにIDFの砲撃があり、10人が死亡したと発表した。
前日にもこの病院の前で同様の出来事があり、31人が死亡したと報じられた。
IDFのダニエル・ハガリ報道官は27日、ハンユニスは「ハマスの主要なテロ拠点」だと記者団に語った。
また、IDF部隊のブレイジでの戦闘は3日目に入り、「多くのテロリストを排除し、テロリストのインフラを破壊している」と付け加えた。
複数の住民はロイター通信に対し、激しい戦闘は28日も続き、IDFの戦車が人口密度の高いブレイジ難民キャンプに北と東から前進していると話した。ハマスは同組織の戦闘員がイスラエル兵や車両を標的にしているとする動画を投稿した。
IDFは24日のマガジ難民キャンプへの空爆で民間人が犠牲になったことについて、「無関係の民間人への被害」を遺憾に思うと述べた。IDFは声明で、「ハマス工作員がいる場所に隣接する二つの標的を攻撃した」としている。ガザ地区の保健省によると、この空爆で少なくとも70人が死亡した。
人質の解放は
イスラエルでは28日、数千人のティーンエイジャーがデモ行進に加わり、ガザ地区でハマスやほかの武装勢力に拘束されている100人以上の人質を帰国させるための新たな合意を結ぶよう求めた。デモ参加者の多くは、10月7日の奇襲で最も大きな被害を受けた地域の出身者だった。
イスラエル南部キブツ(農業共同体)クファール・アザの出身だというシリ・ハヤリ氏はBBCに対し、「私は10月7日にあの場所にいた。仲間が誘拐された。私たちは彼らを取り戻したい。いますぐ返してほしい」と語った。
イスラエルとハマスの双方の合意によって12月1日朝まで7日間続いた戦闘休止では、人質105人が解放された。現在は、人質がさらに解放される可能性のある新たな合意について交渉が進められていると報じられている。しかしハマスは、完全な停戦の実現についてのみ交渉に応じると、公に主張している。
画像提供,EPA
エルサレムで人質の返還を求めるデモを行うイスラエルの若者
(英語記事 Thousands flee central Gaza as Israeli troops advance )