2019/2/11毎日新聞より

 

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毎日新聞 2019/2/11 東京朝刊 有料記事 English version

子の将来案じ、国動かす 交通事故、運用益の返還要求 重度障害、介護20年の父

 

父雄次さんに支えられて体を起こし、笑顔を見せる桑山敦至さん。左端は母晶子さん=大阪府交野市で2018年11月、小松雄介撮影

 

 交通事故で重い後遺症を負った被害者の救済事業に充てられる自動車損害賠償責任(自賠責)保険の運用益が、国の一般会計に繰り入れられたままになっている問題で、財務省は一部を本来の国土交通省の特別会計(特会)に返還する動きを2018年度から進めている。消極的だった財務省に方針転換を促し、15年ぶりの返還再開を実現させたのは「救済事業を後退させてはいけない」という介護家族の危機感だった。【江刺正嘉】

 

 「あっちゃん、気持ちいいか」。大阪府交野(かたの)市の桑山雄次さん(62)と妻晶子(あきこ)さん(58)が、交通事故の脳外傷で寝たきりの次男敦至(あつし)さん(31)をベッドから起こし、背中を伸ばしてやると、敦至さんの表情が緩んだ。息子の呼び名は事故があった小学2年の時のままだ。「うれしいと、いい顔になります」。息子の気持ちを表情の変化で読み取る…