日刊IWJガイド・非会員版「ガザ地上侵攻の陰で、報道量が激減したウクライナの今! 西側メディアの嘘をスコット・リッター氏が暴く! ウクライナ戦線の真実!」2023.11.4日号~No.4062号
おはようございます。IWJ編集部です。
10月7日に始まったハマス・イスラエル戦争で、ウクライナ紛争の報道量が激減しています。10月7日まで「ウクライナのニュース」を毎日5本から10本ほども新記事をライブで更新していた『CNN(日本)』ですが、10月8日以降は、31日までの24日間でわずか12本、2日に1本のペースに激減しました。
※「ウクライナ」のニュース(CNN)
https://www.cnn.co.jp/topic/ukraine/
ウクライナ紛争は今、どうなっているのでしょうか。元国連大量破壊兵器査察官のスコット・リッター氏が10月31日に、『コンソーシアム・ニュース』に「ジョン・カービー対ロシア軍 ――ウクライナとロシアの間で何かが起きている。米国家安全保障会議の報道官は、重大な展開に備えて、米国の聴衆に準備をさせようと躍起になっている――」という記事で、その実態を報告しています。
※SCOTT RITTER: John Kirby v. Russian Military ――Something is happening between Ukraine and Russia that has the U.S. National Security Council spokesperson desperately trying to prepare the U.S. audience for significant developments.――(Consortium News、2023年10月31日)
https://consortiumnews.com/2023/10/31/scott-ritter-john-kirby-versus-russian-military/
リッター氏の記事に入る前に、ウクライナを取り巻く状況を振り返っておきます。
ウクライナの最大の支援国である米国では、ウクライナ支援の予算案が審議すらできない状況にあります。
米国連邦議会は、9月30日に、なんとか「つなぎ予算案」をまとめましたが、ケビン・マッカーシー下院議長が解任され、3週間下院議会が開催できず、ウクライナ支援について議論ができませんでした。
下院議会は3週間に及ぶすったもんだを経て、10月25日、なんとかトランプ派のマイク・ジョンソン氏を新しい下院議長に選出しました。しかし、ジョンソン下院議長は、バイデン政権が求める1000億ドル規模の予算のうち、6割以上を占めるウクライナ支援は外して、イスラエル単独支援の法案の採決を行う意向を表明しています。
つまり、ウクライナ支援が11月17日の次の予算審議までに可決される可能性は高いとは言えません。米国は、ウクライナを見捨てた、とも受け取れる法案です。
※米下院議長、イスラエル支援法案採決へ 上院反発は必至(ロイター、2023年11月1日)
https://jp.reuters.com/world/security/HRXUCTTUYZNM3F542SF5ZFITQU-2023-11-02/
米国や西側諸国の支援で戦ってきたウクライナとしては、非常に厳しい「ガス欠」状況です。10月31日付『ロイター』によれば、ゼレンスキー大統領は10月31日の会見で、「早急な成功を期待すべきではない」と述べました。
10月30日付の米『タイム』のインタビューで、ゼレンスキー大統領は「最も恐ろしいのは、世界の一部がウクライナ戦争に慣れてしまったということだ」などと述べました。
大統領選に出るまでは政治とは無縁で、もともとコメディアンであり、テレビ俳優でもあるゼレンスキー氏は、「戦争」を「ショー」に例え、薄れゆく人々の関心についてこう語りました。
「戦争による疲労は、波のように押し寄せる。アメリカでもヨーロッパでも見られる。そして、彼らが少し疲れ始めるとすぐに、それが彼らにとって『この再放送は10回も見られない』というショーのようなものになることがわかる」。
『タイム』は、ゼレンスキー大統領の側近が、「何よりもゼレンスキーが西側の同盟国に裏切られたと感じている」、「彼ら(西側の同盟国)は、彼(ゼレンスキー)に戦争に勝つ手段を与えず、生き残るための手段だけを残した」と語ったと報じています。
『タイム』は、ゼレンスキー大統領は、昨年末は、ワシントンで英雄のように歓迎されたが、今や雰囲気は一変し、9月20日に行われたワシントン訪問は、「ゼレンスキー大統領の外交政策顧問の一人が、雰囲気があまりにも険悪であると警告」して、訪米を中止するように進言するほどになったとその変化の大きさを報じています。
結局、ゼレンスキー大統領の訪米は、米連邦議会にウクライナ支援を可決させることはできませんでした。この大きな態度変化は、代理戦争をビジネスのように行わせる米国は、「負け戦」の続くウクライナに、「追加投資」は行わず、「損切り」に出た、と言って過言ではないと思われます。
※対ロ反攻、早急な成功期待すべきでない=ゼレンスキー大統領(ロイター、2023年10月31日)
https://jp.reuters.com/world/ukraine/T7MWJLNJTFIHDM5TZ2DH23UZJU-2023-11-01/
※‘Nobody Believes in Our Victory Like I Do.’ Inside Volodymyr Zelensky’s Struggle to Keep Ukraine in the Fight(TIME、2023年10月30日)
https://time.com/6329188/ukraine-volodymyr-zelensky-interview/
9月24日、『ANNニュース』の「日曜スクープ」に登場した元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和(わたなべ よしかず)氏は、中部ロボティネからベルボベでの戦闘について、ウクライナ軍の中で最も優秀な82旅団が中心になって成功させたと述べ、10月いっぱいには、ウクライナ軍がトクマクを奪取するだろうと、楽観的な見通しを述べていました。
現在、「日曜スクープ」の動画はYouTubeから削除されていますので、詳しくは日刊IWJガイド9月27日、28日号をお読みください。
※はじめに〜元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏がテレ朝の『日曜スクープ』で、ウクライナ軍によるバフムト南部のふたつの集落奪還を「反攻作戦の成功を象徴するような戦果」だと手放しで礼讃!「押されている」ロシア軍は「非常に難しい状況」で、ウクライナ軍がロシアの3個大隊を「機能不全の状態に撃破した」と見てきたかのように「持論」を展開! しかし番組が「ロシア側の情報」と報じたのはロシア国防省の公式発表ではなく、戦争研究所のもので、ロシアに関するソースはなんと単なる軍事ブロガー達! 一方で、ロシア側の公式発表の戦果は日本のメディアは一切報じず!(日刊IWJガイド2023.9.27号)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230927#idx-1
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52780#idx-1
しかし、米国のネオコン・シンクタンク「戦争研究所(ISW)」が公開している11月1日の戦況図をみると、ウクライナ軍はトクマクを奪取するどころか、ロボティネからベルボベで戦線は停滞したまま、ほとんど動いていません。「ウクライナ軍の中で最も優秀な82旅団」は、何をしているのでしょうか。
公共の電波を通じて多くの日本人に届けられた「10月いっぱいには、ウクライナ軍がトクマクを奪取する」という元陸上自衛隊幹部である渡部氏の予測を、渡部氏が陸上自衛隊東部方面総監という重責を担った経歴を持った人物だからこそ、真に受けた人々は少なくなかったはずです。ウクライナ軍は優勢に戦っているんだ、と思いこんでしまった人も多いはずです。
なぜ渡部氏はこれほどまでに現実とかけ離れた予測をしたのか。軍事の専門家として、その予測の失敗の理由を説明すべきです。また、公共の電波で流してしまったテレビ局も、予測報道の責任を取り、訂正を行い、渡部氏の起用が正しかったのかも検証すべきでしょう。自分の発言を修正すべきです。
テレ朝だけではありません。日本の大手メディアのウクライナ紛争についての報道は、この2年8ヶ月、惨憺たるものです。ウクライナに加担し、冷静な現実分析はなく、予測はことごとく外してきました。こんなマスメディアに、情報操作され続けた日本国民は「洗脳報道」の犠牲者である、と言って間違いありません。
※黒海艦隊司令部へ攻撃 ロシア軍司令官ら34人死亡か(ANNnews、2023年9月24日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000317304.html
※(続報)ウクライナ軍のセヴァストポリの黒海艦隊司令部攻撃! ロシア軍のビクトル・ソコロフ司令官黒海艦隊司令官は生きていた!? ウクライナ特殊作戦部隊の情報とウクライナ軍情報総局のキリール・ブダノフ局長の情報の矛盾から見えてくる「事実」!!(日刊IWJガイド2023.9.28号)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230928#idx-2
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52782#idx-2
※RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, NOVEMBER 1, 2023(ISW、2023年11月1日)
https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign-assessment-november-1-2023-0
ロシア国防省は、11月1日、『テレグラム』で、「NATOの新兵器納入にもかかわらず、キエフ政権は失敗」と投稿しました。この投稿によると、セルゲイ・ショイグ国防大臣は、オンライン会議の冒頭演説で以下のように述べました。
「ウクライナ軍は、ザポロージェ、ドネツク、へルソン方面における我々の戦闘命令に対する攻撃を試みているが、失敗に終わっている。このような必死の作戦行動により、ウクライナ軍の兵士は大きな損害を被っている。ウクライナ軍の兵力は消耗し、兵士の士気は低下している。
NATOの新型兵器が投入されたにもかかわらず、キエフ政権は敗北している。ロシア軍は積極的な防衛を続け、敵に効果的な砲撃を加えている。我々の部隊は前進し、より有利なラインと陣地を占領している。戦闘中、第25、138、114自動車化ライフル旅団が特に目立った」。
※(NATOの新兵器納入にもかかわらず、キエフ政権は失敗)(ロシア国防省、Telegram、2023年11月1日)
https://t.me/mod_russia/32014
ロシア国防省は、11月1日までに破壊されたウクライナ軍の装備について、以下のように報告しています。
「航空機520機、ヘリコプター254機、無人航空機8512台、対空ミサイルシステム441台、戦車およびその他の装甲戦闘車両13089台、複数の戦闘車両1172台発射ロケットシステム、6941門の野砲と迫撃砲、さらに1万4865台の特殊軍用車両」。
※(特別軍事作戦の進捗状況に関するロシア連邦国防省の概要 2023年11月1日現在)(ロシア国防省、Telegram、2023年11月1日)
https://t.me/mod_russia/32023
すっかり世界のメディアで取り上げられることの少なくなったウクライナ紛争の実態に関する、スコット・リッター氏による報告を、以下、全文仮訳・粗訳でお届けします。
※ここから先は【会員版】となります。会員へのご登録はこちらからお願いいたします。ぜひ、新規の会員となって、あるいは休会している方は再開して、御覧になってください!
https://iwj.co.jp/ec/entry/kiyaku.php