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辺野古新基地建設を巡る2つの憲法問題 地方自治体の拒否権と司法の機能不全

 

 憲法95条は、「一つの地方自治体のみに適用される『特別法』は、その自治体の住民投票で過半数の同意を得なければ制定してはならない」と明記している。この趣旨が、「国策として特定の自治体に特別の負担を強いる場合には、その自治体には拒否権がある」という意味であることは明白である。

 それに対して、日米安保条約の締結・順守は国の権限(73条2号、3号、61条、98条2項)で地方自治体の権限ではなく、基地の立地の選定は行政権(65条)の裁量事項で「立法事項」ではないという反論がある。しかし、それは詭弁であろう。


 

 

 日米安保条約が正当だという立場を取ったとしても、その危険の7割を、47都道府県の中で、人口で31番目、面積で44番目の小さな沖縄県に負担させておいて良いのか? は、95条の「精神」に照らして大いに疑問である。これは法的条理(道理)の問題である。

 また、辺野古の埋め立て予定海域に限界が不明な軟弱地盤が発見されたため、防衛省が設計変更を申請し、沖縄県がそれを不承認として、国対県の訴訟に発展した。

 それに対して、司法府は、要するに、それは公有水面埋立法により「国の権限」を自治体に委任したものであるから、両者が対立した場合には国に従うべきだ……という「法的な形式論理」だけで県の主張を退けた。

 これは、司法権の本質と司法の独立(76条3項)問題を私たちに提起している。

 

 

司法とは、当事者間では決着できない問題について、「第三者」として、「事実認定」と「法解釈」の両面で判断を下して紛争を解決させる国家の権力作用である。

 今回は、辺野古の建設予定地に建設の障害になる軟弱地盤が発見されたという「事実」に起因する紛争である。だから、県の不承認には正当な根拠がある。ところが、裁判所は、形式的に、法律上は国の権限を県に委任しているのだから国に従え……という国の主張をなぞるだけで県の主張を退けた。

 この状況は、私たちに「司法の独立」の問題も突きつけている。自公長期政権の下で、国と対立する訴訟において司法が「第三者」ではなくなってしまったように見える。ここもおかしい。