弾圧国家日本における「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合、共同声明」Ⅲ
エネルギーセクターの移行
63. 省エネルギー:我々は、2050年の温室効果ガスのネット・ゼロ排出に向けた世界的なエネルギー転換における重要な柱として、「第一の燃料」 としての省エネルギーの役割を強調する。我々は、エネルギーの安全保障、アクセス及び低廉性を強化しながら、温室効果ガス排出の削減と環境への影響の緩和、経済成長の創出とエネルギー貧困の削減において、あらゆる部門における省エネルギーとエネルギーの節減の価値を強調する。我々は、情報キャンペーン、消費者の嗜好への影響と対応、需要最適化措置、エネルギー効率の高い機器とソリューションの促進を含む、現在のエネルギー危機への対応として我々が既に行った、成功した措置を基に、起こりうる反動効果にも対処しつつ、エネルギー消費を削減するための需要側の取組の必要性を認識する。我々は、IEAに対し、ベストプラクティスを特定し、共有し、推奨するため、現在のプレッシャーに反応して需要の削減対策が既にもたらした影響を評価することを求める。さらに、我々は、効果的かつ効率的な規制の枠組みの重要性を認識し、技術的及び非技術的な解決策の両方を促進するために公的及び民間資金を活用する必要性を認識する。我々は、政策、計画及び投資の決定において、省エネルギーとエネルギーの節減が正当に考慮されることを確保するために、「省エネルギーファースト」が我々の行動の推進原理として認識される必要性を強調する。また、自動車燃費規制、建築基準、最小エネルギー性能基準、エネルギー性能証明書、大規模需要家のエネルギー報告制度などの省エネルギー規制が、引き続き勢いを増していることに留意する。これらの施策は、電化、燃料転換、系統柔軟化、エネルギー需要情報のデジタル化、エネルギー・気候関連情報の開示を含む戦略的アプローチによるエネルギー需要の脱炭素化に向けた更なる取組を活用していく。我々は、需要側の脱炭素化目標に沿った省エネルギー規制の枠組みの進化に関するIEAの分析を歓迎し、省エネルギー政策の強化を支援するために、新興国の政府を含む各国政府とこの情報を共有する予定である。この取組において、IEAのネット・ゼロシナリオと整合性を持たせるためには、2030 年まで一次エネルギー原単位を世界的に年4%改善させる必要があるとIEAが予測していることに留意する。
64. 再生可能エネルギー:我々は、再生可能エネルギーの導入ペースと規模の大幅な増加は、エネルギー供給の多様化によるエネルギー安全保障の強化や化石燃料への依存度の低減により、経済の脱炭素化の効果的な手段として、遅くとも2050年にネット・ゼロの目標を達成し、さらに経済成長と雇用の創出のために重要であると改めて表明する。IEAが示すように、我々は、エネルギー危機がエネルギー安全保障と気候変動への野心を原動力に、再生可能エネルギーへの投資と展開を大きく加速させたことを認識する。我々は、再生可能エネルギーの発電量を大幅に増加させるとともに、冷暖房や運輸・産業分野での再生可能エネルギーの利用を促進し、消費者や市民エネルギーコミュニティにおける積極的な役割を推進する。我々は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA) World Energy Transition Outlook 2023の調査に懸念を持って留意し、1.5°Cに抑えることを射程に入れるために更なる再生可能エネルギー導入率が必要であることに着目する。G7は、2030年までに洋上風力の容量を各国の既存目標に基づき合計で150GW増加させ、太陽光発電の容量を各国の既存目標や政策措置の手段を通じて、IEAやIRENAで推計された2030年までに合計で1TW以上に増加させることも含め、再生可能エネルギーの導入拡大とコスト引き下げに貢献する。太陽光、陸上・洋上風力、水力、地熱、持続可能バイオマス、バイオメタン、潮力などの再生可能エネルギーの導入を加速するとともに、次世代技術の開発・実装への投資や、安全で、持続可能で、強靭なサプライチェーンの整備を進める。具体的には、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力発電、波力発電などの革新的技術の開発や、新技術実装のための評価方法の国際標準化を国際協調のもとで推進する。我々はIRENAに、浮体式洋上風力のイノベーションと持続可能性に関する分析を依頼する予定である。また、系統増強、独立型システムやミニグリッド、蓄電池を含むエネルギー貯蔵システムの運用の近代化、需要側のマネジメントなど、システムの柔軟性を着実に向上させていく。我々は再生可能エネルギーの導入が大きく進む中で認識すべき、再生可能エネルギーの季節・年次変動の影響と対応策に着目したIEAの報告書を発表したことを歓迎する。
65. クリーンエネルギーサプライチェーン:国際的なエネルギーと気候の目標を達成するためには、クリーンエネルギーの世界的な導入が大幅に増加することが必要である。我々は、多様な製造工程や主要な原材料の生産を含むグローバルなクリーンエネルギーのサプライチェーンにおいて、エネルギー移行に脆弱性や潜在的な課題をもたらす可能性のある過度な依存を避けることの重要性を認識する。遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出という共通目標を達成するために、我々は、国際的に認められた労働基準に合致し、人権を尊重しつつ、電解槽、ヒートポンプ及び電池などのクリーンエネルギー技術の製造及び設置への投資を拡大すること及びそれらが強靭で低廉で持続可能であることを確保した形でクリーンエネルギーのサプライチェーンを多様化することの重要性を強調する。我々は、これらの取組が、投資や雇用創出のような経済的な機会や、エネルギーミックスで炭素密度が低い国における産業活動を通じて温室効果ガス排出量を削減する環境的な機会を提供することを認識する。クリーンエネルギー技術に関連する製品としてのライフサイクルが終了した製品の大幅な増加を認識し、我々は、供給の安定性への貢献として、クリーンエネルギー技術のバリューチェーンの循環性を高めるという観点から、製品設計の重要な役割を強調する。
66. 電力システム:この勝負の10年に温室効果ガス排出量を早急に削減する必要性を認識し、我々は、2022年のG7首脳コミュニケを想起し、2035年までに電力部門の完全又は大宗の脱炭素化の達成、及び気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けることに整合した形で、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電のフェーズアウトを加速するという目標に向けた、具体的かつ適時の取組を重点的に行うというコミットメントを再確認し、他の国にも参画することを求める。このコミットメントを実行するため、必要なエネルギー移行政策の加速、関連するクリーン技術についての研究開発の促進、及び公正な移行を確保するための新たな雇用の創出や影響を受ける労働者の再訓練等の効果的措置を取ることを目指す。我々は、IEAの2022年の「ネット・ゼロ移行における石炭」報告書において、IEAの2050年までのネット・ゼロシナリオに沿った主要な取組の一つとして特定された、排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所の建設を終了する必要性を認識する。我々は、公正な方法でクリーンエネルギーへの移行を加速するため、排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所のプロジェクトを世界全体で可及的速やかに終了することを他国に呼びかけ、協働する。その際、我々は、国家のエネルギー安全保障、低廉性、及び強靭性の重要性を再確認し、エネルギー貧困に取り組む必要性と、影響を受ける労働者、地域、及びコミュニティへの支援を提供することの重要性を強調する。我々は、IEAに対し、国際労働機関(ILO)等の関連機関の協力を得て公正な移行と整合する形で、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電のフェーズアウトを加速するための様々な行動を報告することを招請する。
67. 低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにアンモニアなどのその派生物:我々は、低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにアンモニアなどのその派生物を開発すべきこと並びに産業及び運輸といった特に排出削減が困難なセクターにおいて、セクター及び産業全体の脱炭素化を進めるための効果的な排出削減ツールとして影響力がある場所で使用すべきであることを認識する。我々はまた、温室効果ガスであるN2Oと一般的には地域の大気汚染物質及び対流圏オゾンの前駆体であるNOxを回避しながら、1.5°Cへの道筋及び2035年までの電力部門の完全又は大宗の脱炭素化という我々の全体的な目標と一致する場合、ゼロ・エミッション火力発電に向けて取り組むために、電力セクターで低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにその派生物の使用を検討している国があることにも留意する。一部の国では、再生可能エネルギーからの余剰電力を変換するために水素を利用することも検討している。我々は、研究開発及び実証並びにインフラの有効化を含む、低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにその派生物と化石燃料との間の価格差を減らす行動を取ることの重要性を認識する。我々は、信頼できる国際標準及び認証スキームに基づき、特に水利用競合に関する環境および社会的基準を順守しながら、液化水素および液体有機水素キャリアを含む様々な方法で、ルールに基づき透明性のあるグローバルサプライチェーンを開発すること、供給国と消費国の間の有機的な協力を促進してコストを削減することへの努力を強化していく。我々は、水素利用の促進及び排出削減を加速するために、関連規制、安全コード及び基準を普及し、水素の安全利用を促すための環境を構築していく。我々は、炭素集約度に基づく取引可能性、透明性、信頼性及び持続可能性のための水素製造の温室効果ガス算定方法および相互認証メカニズムを含む国際標準及び認証を開発する重要性を認識する。我々は、IEA報告書「排出集約度に基づく水素の定義に向けて」を低排出水素及びその派生物の普及のための信頼できる国際標準及び認証スキーム及び共通理解の促進に向けた議論への貢献として歓迎する。我々は、国際水素燃料電池パートナーシップ(IPHE)が水素の基準及び認証に関する活動の進展をもたらしたことに感謝の意を表する。我々はまた、輸出及び国内利用のために低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素を製造する国々が、その開発から十分な利益を得てその開発を前進させるべきであることを強調する。
68. カーボンマネジメント:温室効果ガス排出の即座かつ持続可能で急速な削減は、引き続き我々の最優先事項である。ネット・ゼロを達成するためには、自然吸収源の強化、二酸化炭素の回収・貯蔵を伴うバイオエネルギー(BECCS)、直接大気による二酸化炭素の回収・貯蔵(DACCS)など、強固な社会・環境面のセーフガードを備えた二酸化炭素除去(CDR)プロセスの展開が、完全な脱炭素化が困難なセクターにおける残余排出量を相殺する上で不可欠な役割を担っている。炭素回収技術の大規模な展開を促進することは、さらなる実践的学習効果によるコスト削減及び経済成長の向上につながる。我々は、社会受容とともに、地域の二酸化炭素回収(CCS)ハブの可能性を含む、地中貯留インフラや二酸化炭素輸送計画の可能性と開発をモニタリング及び分析する必要性を認識する。我々は、二酸化炭素の輸出入メカニズム整備を促進するために協力する。 我々は、二酸化炭素の活用、及び活用を通じて二酸化炭素の価値を高めるシステム、もしくはインセンティブを整備する必要性を認識する。これらの技術の進化していく性質を考慮し、 我々は、CCU/カーボンリサイクル及びCCSは、2050年までのネット・ゼロ排出達成のための脱炭素化解決策の幅広いポートフォリオの重要な要素になり得ることを認識しており、イーフューエルやイーメタンなどのカーボンリサイクル燃料(RCFs)を含むCCU/カーボンリサイクル技術は、化石由来の製品代替や二酸化炭素を活用することで、他の方法では回避できない産業由来の排出を、既存のインフラを活用しながら削減できることを認識する。IPCCは、CDRの実現には、研究、開発及び実証の加速、リスク評価及び管理用ツール改善、合意された炭素フローの測定、報告、検証(MRV)の対象を絞ったインセンティブと整備が含まれると報告している。我々は、CDRのMRVの調和を促進するための国際協力を加速し、RCFsなどのCCU/カーボンリサイクル技術に関する産学官の共同ワークショップを含めた交流を行う。
69. 天然ガス・LNG:我々は、ロシアのウクライナに対する侵略戦争は、世界のエネルギー市場及びエネルギー供給の安全保障に影響を与え、資源確保における競争を激化させていることを認識する。エネルギー価格の高騰とインフレーションは、世界中の経済及び人々、特に発展途上国の人々が必要とする安価なエネルギー供給の確保を妨げ、肥料や食料の価格を上昇させることにより、世界中の経済と人々の生活、特に発展途上国において、環境、経済、社会的な悪影響を及ぼしている。このような特別な状況において、エネルギーの節減とガス需要の削減を通じてクリーンエネルギー移行を加速させることの主要な必要性を認識しつつ、明確に規定される各国の状況に応じて、例えば低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素の開発のための国家戦略にプロジェクトが統合されることを確保することにより、ガス部門への投資が、我々の気候目標と合致した形で、ロックイン効果を創出することなく実施されるなら、この危機により引き起こされる将来的なガス市場の不足に対応するため適切でありうる。我々は、2050年までに化石燃料の採掘・生産工程全体でネット・ゼロ排出を達成するというG7のコミットメントを再確認する。我々は、ロシアのガス輸出の予測不可能性に伴うリスクを軽減するための計画を調整する必要性を認識する。我々は、状況の監視を継続することの重要性に留意する。我々は、最近の需要削減策及び供給源の多様化の成功を認識する。我々は、2023年2月のガス市場と供給のセキュリティに関する IEA 閣僚会合の結果を歓迎し、ガス生産国と消費国の間の対話を通じて、より長期的な展望を考慮しながら、ガスセキュリティにおけるIEAの機能と役割が、さらに強化されることを期待する。
70. 原子力エネルギー:原子力エネルギーの使用を選択した国々は、化石燃料への依存を低減し得る低廉な低炭素エネルギーを提供し、気候危機に対処し、及びベースロード電源や系統の柔軟性の源泉として世界のエネルギー安全保障を確保する原子力エネルギーの潜在性を認識する。これらの国は、現在のエネルギー危機に対処するため、安全な長期運転を推進することを含め、既存の原子炉の安全、確実、かつ効率的な最大限の活用にコミットする。これらの国は、今後10年以内に小型モジュール炉を含む革新的な原子力技術の開発及び展開が、世界のより多くの国がクリーンで安全なエネルギーミックスの一部として原子力発電を採用することに貢献するだろうとの2022年の首脳の評価に留意する。これらの国は、第三国がこれらの技術のための規制及び金融の枠組みを開発することを可能にする国際機関のイニシアティブに貢献し、関連する金融ツールを強化するとともに、強固で互恵的なパートナーシップを支援することにコミットする。これらの国は、価値観を共有する同志国の協力の下、各国及び第三国において、IAEAの安全基準及び核セキュリティ・ガイダンスに沿った高度な安全システムを有する小型モジュール炉その他の革新炉の開発及び建設、核燃料を含む強固で強靭な原子力サプライチェーンの構築、原子力技術及び人材の維持・強化とともに、ロシアへの依存を減少させると共に供給多角化の努力を継続して行うことにより供給の安全を確保できるよう、信頼できるパートナーと共に協力することにコミットする。我々は、ロシアからの民生用原子力及び関連製品への依存を減少させるための措置及び供給の多角化を追求する国を支援するための措置を評価するとのG7首脳のコミットメントを想起する。これを念頭に、我々は、更なる協力を模索するための作業部会の設立を支持する。G7は、最高水準の原子力安全及び核セキュリティが、全ての国及びそれぞれの国民にとって重要であることを強調する。
71. 福島第一原子力発電所の事故対応:国際原子力機関(IAEA)が過去数年以上にわたって福島第一原子力発電所の状況に関する進捗について報告していることに留意し、我々は、同発電所の廃炉作業の着実な進展とともに、科学的根拠に基づき IAEA とともに行われている日本の透明性のある取組を歓迎する。我々は、同発電所の廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が、IAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAによる独立したレビューを支持する。我々は、また、日本がIAEAの専門家グループと連携し、除去土壌の再生利用と最終処分の課題を議論するために取り組んでおり、東京電力福島第一原子力発電所の敷地外における被災地の環境再生が一歩一歩進んでいることを認識する。我々は、オープンで透明性をもって、国際社会との緊密なコニュニケーションをとりながら進められているこれらの取組を継続するよう、日本に奨励する。
72. 重要鉱物:我々は、クリーンエネルギー移行における重要鉱物の重要性の高まり、並びに、脆弱なサプライチェーン、独占、重要鉱物の既存のサプライヤーの多様化の欠如に起因する経済上及び安全保障上のリスクを防止する必要性を再確認する。我々は、責任ある強靱な重要鉱物サプライチェーンを構築し、地域社会の利益を確保し、イノベーションと競争力を推進し、人間の尊厳と人権を尊重し、環境フットプリントを最小限に抑えるために、堅固な環境、社会、ガバナンス(ESG)基準が重要であることを確認する。我々はトレーサビリティを備えた重要鉱物のオープンで透明性のあるルール及び市場ベースの取引を支援し、重要鉱物に関する市場歪曲的な措置及び独占的政策に反対し、採掘国、生産国及び消費国間の対話を促進することにコミットする。我々の課題克服を実現させる主要なものとして、我々は、附属文書の「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン」を実施することにコミットする。
73. 化石燃料補助金:我々は、化石燃料への補助金はパリ協定の目標と整合していないことを強調する。非効率な化石燃料補助金をフェーズアウトすることは、パリ協定2条1cを実現するための重要な要素である。我々は、2025年またはそれ以前に非効率な化石燃料補助金を廃止するという我々のコミットメントを再確認し、首脳が全ての国に同様に取り組むよう求めた呼びかけを再確認する。我々は、G20、国連、OECD 及び.その補助金インベントリ、また、非効率な化石燃料補助金の透明性向上をグローバルに促進するためのその他の関連フォーラムにおいて進行中の取組を踏まえ、2023年に我々のコミットメント達成に向けた進捗を報告し、必要に応じて我々の行動を強化し、化石燃料補助金の共同公開インベントリを開発するための選択肢を検討する。我々は、非効率な化石燃料補助金の廃止及び透明性向上に関する協力、議論及び最良事例の共有を国際レベルで強化するための措置を講じる。
74. 国際的な化石燃料ファイナンス:我々は、国際的な公的資金を、2条1cに反映されたパリ協定の目標に整合させ、2020年代、更には2030年代及び2040年代における世界の大幅な排出削減を達成するという我々のコミットメントを想起する。国家安全保障と地政学的利益の促進が極めて重要であることを再確認し、国際的なクリーンエネルギーへの移行の加速と、排出削減対策が講じられていない化石燃料部門に対して世界的に継続している投資のフェーズアウトが、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるために不可欠であることも再確認し、我々は、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援を2021年末までに終了したこと、及び、各国が明確に規定する、地球温暖化に関する1.5°C目標やパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援を2022年までに終了したことを強調する。我々はそれぞれ、2023年末までに実施に向けたアプローチについて、最新情報を提供する。したがって、我々は、他の主要経済国、MDBs及び二国間DFIs、多国間基金、公的銀行並びに関連機関にも、これらのコミットメントを採用するよう求める。我々は、特に化石燃料部門における、パリ協定に整合的でない取組を未だ支援している大規模な民間資金に、懸念をもって留意する。我々は、パリ協定に整合的な投資に向け、官民資本の国際的な流れの拡大を促進することにコミットする。
75. エネルギーセクターにおけるジェンダー平等と多様性:我々は、ネット・ゼロの未来に準備が整った部門が、女性や他の周縁化されたコミュニティーグループをエンパワーする意味があり、エネルギーセクター内での積極的な参加者のために必要な知見と技術が伴った革新的で包括的な労働力創出を認識する。我々は、2030年迄のクリーンエネルギー部門でのジェンダーの平等と多様性に向けて取り組み、2018 年に発表された「30年迄に平等を実現させる運動(the Equal by 30 Campaign)」のコミットメントを再確認する。我々は、2021年のG7で採択された「Equal by 30」キャンペーンに関わる一連の強化されたコミットメントとG7議長により 2022年に発出された進捗報告を強調し、その部門における平等と多様性と包摂性の野心に向け、取組と責任説明の維持、そして the Equal by 30プラットフォームをG7メンバーのリーダーシップを強調するために利用することを確実にする。我々の行動におけるジェンダーインパクトのより良く評価するために、より良いジェンダーを踏まえたデータを収集し、G7ジェンダー平等アドバイザリー評議会、クリーンエネルギー閣僚会合、IEA 及び IRENA と協力し、進捗追跡の取組協力を増加する。
産業・運輸・建築部門の脱炭素化
76. 産業脱炭素化アジェンダ:2021年のG7産業脱炭素化アジェンダの立ち上げ、及び2022年にあり得べき政策手段のツールボックスを特定したことを踏まえ、我々は、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるための産業セクターの脱炭素化の重要性を強調する。我々は、国や産業サブセクターの特有の状況を考慮し、2050年までにネット・ゼロ排出に移行するための我々の努力は様々な道筋をたどることを認識し、産業の脱炭素化の重要性を再確認する。我々は、ライフサイクルベースで産業の脱炭素化を評価することの重要性を強調し、関連する測定基準やデータ収集が開発されるべきことを確認する。効果的なRD&Dを通じたイノベーションの加速と、ニア・ゼロ技術の拡大による展開の重要性を認識し、我々は、官民による低及びニア・ゼロ・エミッション素材の市場開発の加速を奨励する。我々は、産業の脱炭素化に関する国際的なイニシアティブの活動を強調し、G7を超えたこれらのイニシアティブとの協力及びグローバルなアウトリーチを歓迎する。
77. 鉄鋼セクターにおける産業脱炭素化アジェンダの進展:G7産業脱炭素化アジェンダ(IDA)の作業を通じて昨年取り組まれた共同行動を基礎とし、OECDによる「鉄鋼の脱炭素化経路の異質性」に関する告書、及びIEAによる「ネット・ゼロ鉄鋼業のための排出量測定とデータ収集」に関する報告書を歓迎し、我々は、鉄鋼生産及び製品の排出に関する提案された新しい「グローバルデータ収集フレームワーク」の実施に向け、作業を開始することに合意する。これは、トラッキング、ベンチマーキング及び潜在的な基準の改善を通じて産業のトランジションを促進させる。我々は、生産レベル及び製品レベルでの鉄鋼の脱炭素化に関する排出量測定手法の初期作業に情報を提供するために、IEAの報告書にある5つの既存の方法論を認識する。(附属文書「産業脱炭素化アジェンダに関する結論」パートA参照)。我々は、2023年G7日本議長国のIDA枠組みの中で詳細について作業を継続し、IEAの産業脱炭素化に関する作業部会などの関連フォーラムにおいて、また更なる作業のために他のイニシアティブや機関と協議しながら積極的に関与し、この枠組みをG7を超えて拡大させていく。
78. バイオものづくり:我々は、バイオものづくりは、再生資源や二酸化炭素から材料、繊維、燃料など様々な製品を生産するために、改変された微生物を閉鎖系の環境下で利用する技術であり、一定の環境と適当な措置のもとで、気候変動や資源不足などの問題を解決する可能性を持つ新技術として注目されていることを認識する。我々はこれらの技術に関する協力を進めていく。
79. 道路部門:我々は、2030年までの高度に脱炭素化された道路部門へのコミットを再確認する。世界全体での保有車両が新車販売の15倍超であることに留意し、世界全体の保有車両からの迅速かつ当な温室効果ガス排出削減が極めて重要であることを認識する。我々は、この目標のためにG7及びG7以外のメンバーが採る多様な道筋を認識する。我々は、2050年までに道路部門でネット・ゼロ排出を達成する目標にコミットし、今後10年間にわたって、排出ゼロ交通を支えるインフラや車両、例えば排出ゼロ車両や関連するインフラ、持続可能なカーボンニュートラル燃料などを支えるインフラや保有車両に移行することが不可欠であることを強調する。我々は、この移行を達成するために多様な道筋を追求しているが、各国は、保有車両を脱炭素化する取組が気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるために必要な軌跡に沿っていること及び環境及び気候十全性と整合的であることを確保するために政策や投資を追求することにコミットする。この文脈で、2035年までまたは2035年以降に小型車の新車販売の100%もしくは大宗を排出ゼロ車両にすることや2035年までに乗用車の新車販売の 100%を電動車とすること、関連するインフラ及び持続可能なバイオ燃料や合成燃料を含む持続可能なカーボンニュートラル燃料を促進することを目的とする国内政策を含め、我々のそれぞれが保有車両を脱炭素化するために採る様々な行動を強調する。我々は、これらの政策が、2030年までにグローバルに販売されるゼロ排出の小型車のシェアが 50%以上へ進展していくことを含め、2030 年までに高度に脱炭素化された道路部門への貢献をもたらすという機会に留意する。2000年以降の全体的な政策を通じて効果的に削減した排出に関するIEAのETP2023の調査結果に留意し、ネット・ゼロ達成への中間点として2035年までにG7の保有車両からのCO2排出を少なくとも2000年比で共同で50%削減する可能性に留意し、我々の取組及び、ZEVや充電インフラ、持続可能なカーボンニュートラル燃料の普及だけではなく保有車両からの排出削減の進捗を年単位で追跡することに留意する。自動車のライフサイクルに沿った脱炭素化に向けて、我々は、バッテリーのライフサイクル全体でのGHG排出量の枠組みに関するルールの調和に向けて取り組み、バッテリー原材料のサプライチェーンの追跡可能性、持続可能性を確保するため及びバッテリーリサイクルを支援するための調和された方法を模索する。水素の利用や燃料の脱炭素化に向けて、我々は、燃料電池車やプラグインハイブリッド車、バイオ燃料や合成燃料を含む低炭素・カーボンニュートラル燃料などの技術開発を評価する。さらに、我々は、持続可能なモビリティのためのモーダルシフトを促進し、産業基盤の移行を支援し、研究への意欲的な投資を行い、急速に成長する持続可能なモビリティの世界市場を支えるために必要な技術をさらに開発しスケールアップすることにコミットする。これらの行動とそれぞれの状況を踏まえ、G7以外のメンバーも含めた迅速かつ着実な GHG 削減に貢献する。
80. 国際海運:我々は、遅くとも2050年までに国際海運からのGHG排出をライフサイクル全体でゼロにすることを達成するための世界的な取組を強化することにコミットすることを再確認する。産業革命以前の水準よりも比べて気温上昇を 1.5°Cに抑えるための努力に沿って、国際海事機関(IMO)の第80回海洋環境保護委員会(MEPC80)における GHG 削減戦略の改定において、我々は、この目標を支持し、並びに2030年及び2040年の中間目標を導入することを支持することにコミットする。我々は、誰一人取り残さない公正かつ衡平な移行の重要性を認識しつつ、これらの目標を達成するため、ゼロ・エミッション船の早期導入など海運分野の変革を加速させる規制的なシグナル及びインセンティブからなる中期対策を2025年までに策定及び採択することに向けて取り組むことにコミットする。その他の多国間協力の一環として、ゼロ及びニア・ゼロ排出の船舶及び燃料の導入並びに脱炭素化した港湾の整備を通じて、GHG排出の削減を促進するため、我々は、2020年代半ばまでにG7加盟国が関与する少なくとも14のグリーン海運回廊の設立を支援するとともに、世界中のグリーン回廊の設立を支援することを約束する。
81. 国際航空:我々は、国際航空からのCO2排出に適用される世界唯一の経済的手法である、ICAO(国際民間航空機関)のCORSIA(国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム)の推進を含め、2050年までに国際航空からのCO2排出実質ゼロを目指すICAOの長期目標(LTAG)の達成に向けた世界的な取り組みを加速することにコミットする。この目標の達成に向け、航空部門の脱炭素化を促進する、ICAOで近く開催される代替燃料に関するハイレベル会合(CAAF/3)を含む持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、機材・装備品・空港インフラ等への環境新技術の導入促進及び運航の改善に当たって業界の垣根を越えて協働する。また、ICAOにおけるCORSIAの実施とその定期レビューに貢献することにコミットするとともに、CORSIAに取り組む各国へのキャパシティビルディングの深化のための強化及びパリ協定の温度目標への貢献の強化に努めることにコミットする。
82. 建築物:我々は、気候変動への対応においてライフサイクルで建物の脱炭素化することの重要性に留意し、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるために、建物のライフサイクル全体の排出量を削減する目標を推進することを推奨する。我々は、気候変動に適応した建築設計の改善、建築物の省エネルギー性能の向上、支援措置、規制、国際協力の必要性を強調し、ゼロ・エミッションに近い、気候変動に強い建築物の新築・改修が、2050年のネット・ゼロ目標達成への道筋となるようにする。省エネルギー性能の改善、燃料転換、電化、再生可能エネルギーによる冷暖房サービスの提供、持続可能な消費者の選択、建物のエネルギーマネジメントの柔軟性向上のためのデジタル化推進など、様々なアクションを実施する。我々は、ゼロ・カーボン対応/ゼロ・エミッションの新建築物を、理想的には2030年又はそれ以前に実現することを促進していく。我々は、新たな化石燃料による熱システムのフェーズアウトと、ヒートポンプを含むよりクリーンな技術への移行を加速させることを目指す。また、我々は、ライフサイクルを考慮した建物設計や、建物の改修・建設における循環性の考慮によって、木材を含む持続可能な低炭素材料や最終用途の機器の使用を向上させることや、従来型材料の生産を脱炭素化することが重要であると認識する。
レジリエンスの強化、最も脆弱な人々等に対する気候行動の支援
83. 適応:我々は、IPCCの第6次評価報告書(AR6)における、適応の進捗は地域によって偏りがあり、そのほとんどが断片的で規模が小さいこと、また、温暖化が進むたびにリスクが増大しているとの見解を重大な懸念をもって認識する。我々は、パリ協定で定められた適応に関する世界全体の目標(GGA)の達成に向け、国別適応計画(NAPs)及び戦略の策定と実施、及び異なる自然・社会条件下における適応政策サイクルを通じた進捗のモニタリングと評価を通じた適応行動の効果的な実施を促進するための行動と支援を強化することの重要性を強調する。我々は、グラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画の下、GGA枠組みの策定を開始するというUNFCCC-COP27の成果を歓迎する。我々は、全てのレベルの政府に対し、豪雨や熱波などの異常気象に対する食糧、水、インフラ、公衆衛生システムの気候強靭性を構築する努力を含め、地域の優先事項に沿った地域及び地域の適応計画の策定及び実施を含む地域主導の適応(LLA)を、これらの影響に対してより脆弱な疎外されたグループに特に注意を払いながら、具体的、包摂的、及び体系的なアプローチでパートナーやステークホルダーと協力することを奨励する。この範囲においては、我々は、多様な各国の状況に適応した優れたマルチレベルのガバナンスの発展を促進する。我々は、LLAが、異なる地域の状況、知識、ニーズ、及び、優先事項を世界の適応行動に取り入れることで、GGA達成に向けた世界的なグローバルな取組に貢献することを特に強調する。我々は、特に、後発開発途上国(LDC)及び小島嶼開発途上国(SIDS)を含む最も脆弱な途上国に対し、NAPs及びより強い強靱性を促進する他の戦略の策定及び実施など、GGAの達成に寄与する進歩を強化するための支援を再度表明する。
84. 損失及び損害:我々は、気候変動の悪影響に伴い既に生じている経済的及び非経済的な損失及び損害、及び世界的に、特に最も脆弱な人々が感じているその影響の規模について、極めて懸念していることを強調する。我々は増加する危険、極端な事象及び緩やかに発生する事象双方に対する曝露及び脆弱性により損失と損害のリスクが増大していることに留意し、及び損失と損害を回避し、及び最小化し、これらに対処するための幅広い措置に対する支援を強化する必要性を認識する。災害リスク削減、応急対応、及び復旧・復興は、緊急に強化すべき優先事項の一つであることに留意し、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な途上国を支援し、現在利用可能な支援へのアクセスを改善するため、我々は、損失と損害を回避し、最小化し、これらに対処するための措置の一側面として我々の既存及びコミットした支援の事例集、すなわち「G7気候災害対策支援事例集」を添付として策定した。我々は、この事例集が、脆弱な国の支援へのアクセスへの助けとなり、インパクトの高いイニシアティブを拡大する機会を特定することに役立つことを確実にするよう取り組む。我々は、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な途上国において、地方、国、地域レベルで損失及び損害を回避し、最小化し、これらに対処するアプローチを実施するための技術支援を促進するためのサンティアゴ・ネットワークの完全な運用化を期待する。我々は、国連事務総長のイニシアティブである「全ての人々に早期警戒を(Early Warnings for All)」及び気象観測機器の設置及びデータの質の向上を支援する能力構築支援を通じ、5年以内に世界中の人々に早期警戒システムを提供することを目的とした世界気象機関が策定した行動計画を支援し、他のすべての主要経済国に対して支援を要請する。
85. パリ協定の実施に向けた支援:我々は、野心的な長期戦略(LTS)、国が決定する貢献(NDC)及び国別適応計画(NAP)を支援する必要性を認識し、途上国及び新興国がLTS、NDC及びNAPを更新・実施し、最初の隔年透明性報告書を適時に提出するための技術的及び能力開発支援を強化する。我々は、気候変動の影響、適応、緩やかに発生する事象や非経済的損失を含む損失と損害に関する科学的研究への支援、気候変動に関する観測データ及び影響評価データの共有、及び最も脆弱な途上国の政策立案者や技術職員の能力開発の支援を通じ、地域のパートナーや関係機関と協力し、途上国が気候リスクに基づいた意思決定を行う努力を支援する。
86. 地方の気候行動に関する国際連携:都市は、世界の温室効果ガス排出量の約 70%を占めており、地方政府は、気候変動に対処し、その影響に適応する世界的な取組の最前線に位置している。最新の気候変動に関する政府官パネル報告書では、地方、中央及び国際レベルでの政府の行動は、市民社会及び民間セクターとともに、持続可能性及び気候に対して強靱な発展に向けた開発の道筋のシフトを可能にし、それを加速させる極めて重要な役割を担うと述べられている。従って、我々は、地域のニーズや環境条件に基づく気候・エネルギー行動を前進させるために、他のステークホルダーやパートナーと連携した地方政府の重要な役割を認識し、関連する国の気候・エネルギーデータへのアクセスを供与し、国際的な都市間連携及び知識共有を促進すること等を通じ、エネルギー移行を推進する地方政府と緊密に協働していく。我々は、G7メンバーが、地方の気候行動を促進する国内及び国境を越えた国の政策及びプログラムを共有し、コベネフィットを追求し、国際協力を模索するための「地方の気候行動に関するG7ラウンドテーブル」を添付のとおりここに設立する。我々は、G7の都市開発を所掌する大臣とネット・ゼロ及び強靱性の議題で引き続き連携する。我々は、ラウンドテーブルでU7との対話を促進し、その成果をG20に普及させることを期待する。
87. 気候資金:気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続け、気候変動に脆弱な人々を保護するために必要な投資ギャップを埋めるため、緊急な変革が求められてる。我々は、意味のある緩和行動と実施に関する透明性の文脈において、2020年から2025年にかけて年間 1000億ドルの気候資金を合同で動員するという先進締約国の目標に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、2023年に目標を完全に達成するため、他の先進締約国とともに、気候資金実施計画進捗報告書の共同の行動及び勧告を実現するために取り組む。我々は、公的資金の重要な役割を認識し、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるための野心的なNDC及び長期戦略(LTS)を支援し、気候変動の悪影響に適応する能力を強化し、気候強靱性を促進するため、すべての国の変革に必要な世界の投資規模を考慮して、民間を含む幅広い資金源、手段、チャンネルからの増加した気候資金の動員を強化する必要性を強調する。我々はまた、世界的な取組の一部として、官民を問わず、多様な資金源から、パリ協定第2条1cが掲げる目標を含むパリ協定の諸目標の達成に貢献する、野心的で目的に沿った新規合同気候資金数値目標に関する議論を歓迎する。我々は、気候変動に対処するために不可欠なステップとして、パリ協定第2条1cに従って、資金の流れを低排出で気候に対して強靱な発展への道筋に整合させる我々自身の努力を加速することにコミットする。我々は、我々自身が共同で、低排出型で気候に対して強靭な発展の軌道に乗るための最も重要な目標としてパリ協定第2条1cに反映されているとおり、資金流れをパリ協定の諸目標と整合的なものとし、より大きな効果を得るため、資金源をより効率的に活用する必要性を強調する。我々は、シャルム・エル・シェイク対話に基づき、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)及びパリ協定第5回締約国会合(CMA5)において、第2条1cにおける世界的な取組を推進するために締約国が本目標に継続的に取組む専用スペースを設けるような、第2条1cに関する実質的な成果を達成するため、全てのパートナーと引き続き協力することを期待し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)報告書にその実施に関する詳細な情報を含める。我々は、G7の重要な役割及び先進締約国が気候資金の動員を主導すべきであることを認識し、能力を有するがまだ国際気候資金の現在の提供一員ではない全ての国及びステークホルダーが、この世界的な取組に貢献する必要性を強調する。我々は、特に貧困国や脆弱な国、特に後開発発展途上国(LDC)や小島嶼開発途上国(SIDS)に焦点を当て、気候資金へのアクセスを改善することの重要性を強調する。
88. 緑の気候基金:我々は、現在進行中の緑の気候基金(GCF)の第2次増資プロセスを歓迎し、それが極めて重要であることを強調する。我々は、G7による資金拠出に関する強固なプレッジの必要性を再確認し、他国にも同様のプレッジを促すとともに、全ての潜在的な拠出者に対し野心的な第2次増資プロセスへの強い関与を奨励することによって、GCFのドナーベースの拡大の必要性を強調する。第2次増資プロセス及び2024年から2027年の新改訂戦略事業計画の策定を通じ、我々は、野心的で費用対効果が高く、変革的な気候投資を用いて、緩和及び適応両方への革新的ソリューション及び創始リスク回避を加速し、途上国の NDC、長期戦略(LTS)、国別適応計画(NAP)、その他の気候変動国家戦略、計画の改訂と実施、及び資金の流れのパリ協定の目標への整合化を支援することで、GCFが低排出型で気候に対して強靱な発展に向けた方針へのパラダイムシフトを促進し続けること、及び気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるためにGCFが貢献することを確保するよう取り組む。
89. 適応資金:我々は、開発途上締約国に対する適応のための気候資金の供与を、2025年までに2019年の水準から共同で少なくとも2倍にすることを先進締約国に求めるグラスゴー気候合意に対応するための努力を、引き続き加速する。我々はまた、国際開発金融機関(MDBs)に対し、改定され強化された2025年予測を発表し、野心的な適応資金目標にコミットすることを促す。我々は、適応資金へのアクセス及び有効性を向上させるために受益国パートナーと協働することを通じたもの含め、適応資金の供与、動員及び実施の拡大に、他の拠出者と共に取り組むこと、及び、民間資金を含む適応資金の供与と動員の拡大を、G7以外の国とその他の拠出者に奨励することにコミットする。我々は、パリ協定第9条4を想起しつつ、規模を拡大した資金源からの供与において緩和と適応の間の均衡を達成するという文脈においてで、共同拠出者とともに、OECDの方法論と報告メカニズムに沿い、気候資金実施計画進捗報告書に基づいて、2019年の200億ドルから2025年に400億ドルへ拡大に取り組んでいる。
90. 損失と損害に対応するための資金アレンジメント:気候変動の悪影響に伴う損失と損害を回避し、最小化し、これらに対処するための努力を強化する緊急性が高まっていることに留意し、我々は、気候変動の悪影響に特に脆弱な途上国の損失と損害への対応を支援するため、基金を含む、新たな資金面での措置を設立する国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)及びパリ協定第4回締約国会合(CMA4)決定を成功裏に実施するため、積極的に取り組む。我々は、そのような措置が必要とされる規模と緊急性で提供されるため、基金を含む新たな資金面での措置の運用化に関する移行委員会の勧告に期待する。我々は、革新的なものを含む、多様なソースからの資金源を特定し、拡大する重要性を強調し、それらの措置が、機関の現況、現況におけるギャップ、優先事項及び有年事項のギャップに対応するための最も有効な方法、及び潜在的な資金源に関する情報に基づくことを確実にする必要があることを認識する。我々は、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な途上国に焦点を当て、国連機構変動枠組条約(UNFCCC)及びパリ協定の内外の既存の資金面での措置やイニシアティブとの協調、補完性を確保する。我々は、気候変動の悪影響に伴う損失と損害を回避し、最小化し、これらに対処するための様々な資金面での措置の中の主要なイニシアティブとして、V20及びG7の共同イニシアティブである気候リスクに対するグローバル・シールドを強く支持する。
91. 適応ニーズを満たし、損失と損害の回避、及び最小源にし、並びにこれらに対処するために貢献する民間セクターの役割:我々は、公共セクターの努力と並行し、適応行動を強化し、損失と損害を回避、最小化、対処に投資する民間セクターの重要な役割を認識し、損失と損害への対応に利用可能な資金面での措置範囲を改善するために、その役割を強化する必要性を認識する。民間セクターの行動や投資は、インフラ及び世界のバリューチェーンの強靱性を高めることに貢献するとともに、農業生産、水質浄化及び保険など様々な分野における気候変動の悪影響に適応し、対応するために不可欠な製品やサービスを消費者に提供することに貢献する。我々は、インフラや投資の意思決定における物理的な気候リスクをよりよく管理するための環境整備、及び災害リスクファイナンス、早期行動や準備の活用及び効果を高めるための市場の取組を奨励し、脆弱な人々及び彼らが依存する生態系を保護する公共部門の取組を補完する、早期警戒システムへの投資、気候情報サービスの提供、及び生活必需品の世界のバリューチェーンの気候強靭性を向上することを含む、強靱性を強化するための民間セクターの行動に関与する。
92. MDBs:UNFCCC-COP27の成果を強調しつつ、我々はMDBs及び国際金融機関に対し、既存の気候変動に関するコミットメントをフォローアップし、野心的な気候行動を更に強化し、間接金融や政策に連動する金融を含む全ての金融活動がパリ協定の目標と完全に整合するために、資金供与の拡大、気候資金へのアクセスの簡素化、保証のような革新的金融手段の供与拡大、既存資金のより戦略的な活用を含む、MDBのプロセス、実務及び優先事項を変革することを求める。我々は、MDBの自己資本の十分性に関する枠組みのレビュー勧告を実施する重要性を強調し、この点に関するG7財務大臣による進行中の作業を歓迎する。我々は、MDBsが、地球規模の気候緊急事態に十分に対処する、目的に適合した新たなビジョンとそれに見合った運用モデル、経路及び手法を定めることを奨励する。我々は、MDBsに対し、そのマンデートに沿って、民間資金を動員し、適応資金を増加させ、各国主導のプロセスやプラットフォームを含め、民間セクターとリスクを共同負担する観点から、戦略的に投資リスクを除去する計画を直ちに策定するよう求める。我々は、MDBsが透明性のある包摂的な改革プロセスを確保することを強く求める。我々は、MDBs、国際金融機関及び民間セクターに対し、新興市場及び途上国経済における気候のための公的及び民間資金の動員を強化することを求める。我々は、MDBsが気候資金の大幅な増加を目指し、脆弱な国が直面している気候変動の影響と債務負担に係る課題を考慮し、贈与から保証、非債務手段まで、あらゆる手段を展開すること及びリスク選好に対応することを奨励する。これには、開発政策借款を通じた適切な規制改革への支援も含まれる。