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精神障がい者を小屋に隔離…沖縄であった「私宅監置」国連人権理事会の元特別報告者が視察 きょう那覇でシンポ

かつて精神障がい者が隔離された「私宅監置」跡の前で話を聞く、国連人権理事会の元特別報告者のダニウス・プラスさん(右)=20日、本島北部

 

 国連人権理事会の元特別報告者で精神科医のダニウス・プラスさん(リトアニア出身)を招いたシンポジウム(主催・同実行委員会、沖縄県精神保健福祉会連合会)が21日に那覇市の教育福祉会館で開かれる。20日にプレイベントとして、本島北部に現存する、かつて精神障がい者を敷地内の小屋に隔離した「私宅監置」跡の見学ツアーがあった。ダニウスさんら登壇者も含め、42人が参加した。

 

  まるで消されたように存在を否定され…闇の歴史「私宅監置」が映画に 

 

 ダニウスさんは医師として長年、子どもや精神障がい者らの権利や自己決定に焦点を当て政策提言などの活動を続けてきた。シンポジウムを前に、1952~65年まで使用された「私宅監置」の小屋跡を見学し、かつて沖縄の精神障がい者が置かれた過酷な状況をじかに確認した。

 

  ダニウスさんは「地域で起こったつらい出来事は忘れようという力が強く働くが、語り継いでいかなければ再び同じことが起こってしまう。現在は私宅監置はなくなったが、今も精神障がい者は強制入院などにより権利を奪われている。奪われてきた尊厳を守るためには歴史や現状を知ることが大切であり、それは今の時代に生きる私たちの仕事だ」と話した。

 

  シンポジウムはダニウスさんのほか、解離性障がいで入院中に身体拘束された経験がある中村夏実さん、精神科病院の強制入院の廃止を目指す日本弁護士連合会の池原毅和さんらが登壇し、精神保健の今後と新しいケアの在り方を考える。 

 会場は那覇市古島の教育福祉会館、時間は午後2時15分~同5時半。参加費は800円。

 (赤嶺玲子)

 

 

 

2020年1月25日 10:16琉球新聞

まるで消されたように存在を否定され… 闇の歴史「私宅監置」が映画に 自由を奪われた人たちを描く 今春上演へ実行委員会

 

精神障がい者を自宅の一室や敷地内の小屋などに閉じ込め隔離する「私宅監置」をテーマにしたドキュメンタリー映画「夜明け前のうた」を、フリーテレビディレクターの原義和さんが監督となり制作している。20日には県精神保健福祉会連合会(沖福連、山田圭吾会長)の会員などで構成する実行委員会の会合があり、試写会や一般上映に向けて協議した。作品は今春に公開を予定している。

 私宅監置は、日本では精神衛生法が制定された1950年に廃止されたが、米統治下にあった沖縄では日本復帰の72年まで法的に認められていた。監置所は県内各地に設置された。劣悪な環境に閉じ込められ、社会から排除された患者たちは自由と尊厳を奪われた。


 

映画上映に向けて話し合う実行委員ら=20日、南風原町のてるしのワークセンター

 

 

 原さんは「(患者は)まるで消されたように存在を否定された。閉ざされた場所にいた人たちの人間像を描くことで、この問題をもっと世界に知らせたい」と訴える。

 原さんは、64年に沖縄を訪れた精神科医・岡庭武さんが撮影した私宅監置の写真を手掛かりに、遺族や関係者への取材を続けた。同様の制度があった台湾や隔離政策を取る西アフリカにも取材で出向いた。2018年に沖福連が開催した私宅監置に関する写真展に協力し、19年に書籍を出版した。

 20日は映画の撮影も実施された。プロデューサーの中橋真紀人さんは「原さんが長年の取材で集めた映像や証言から映画が誕生することはすごいこと。歴史的に貴重な作品になる」と語った。

 沖福連の高橋年男事務局長は「全国で改めて私宅監置のことを社会に訴え、歴史を考える機会になる」と話した。山田会長は「私宅監置は過去の問題ではない。この映画が精神医療の今後を訴える一つの材料になる。現代医療に結び付いてほしい」と語った。
 (上里あやめ)