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2022年11月20日 06時00分

「再選挙」の品川区長選は27日告示…「再々選挙」の見方も浮上 再び6候補の争いなら初のケース

 

品川区庁舎入り口に張られた再選挙のお知らせ

 

 東京都内で初となる首長選の再選挙が27日に品川区で告示される。前回10月の区長選に立候補した6人のうち1人は出馬を取りやめるが、5人は再出馬する意向で、さらに新たに1人が立候補を検討している。

 

再選挙の候補者が1回目より減らなければ全国で初のケースで、票が分散する激しい競り合いが予想される。早くも「誰も法定得票に達せず、再々選挙になる可能性もゼロではない」との見方が出ており、各予定候補者は支持拡大に必死だ。(井上靖史)

 

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◆新たに名乗りを上げた候補者が語ったのは…

 「もともと10月にあった区長選への立候補を検討していた。その時は(支援の)枠組みがうまくいかず断念した」。今回の再選挙で新たに政党推薦の無所属で立候補を検討している男性が本紙の取材に意欲を述べた。

 

 再選挙は全く新しい選挙として行うため立候補に制限はなく、増えることも認められている。男性は「前回の選挙が『当選者なし』となり、新しい選択肢を作りたいと思った」という。

 10月2日に投開票された前回区長選は現職が引退、新人6候補の争いとなった。首長選は法定得票(有効投票総数の4分の1以上)を獲得しなければ当選者と認められず、新たに選挙をやり直す

 

10月の選挙では最多得票者は約600票足りなかった。

 

 

◆「体力もお金も続かない」

 再挑戦する候補予定者の1人は「他の候補との違いがわかりにくいという意見も頂いた。違いをもっと鮮明にして、票を上積みしたい」と話す。別の候補予定者は「再々選挙もあり得るかもしれないが、何としても避けたい。自分も体力が続かないし、何といっても(選挙資金の)お金が続かない」と吐露。前回35.22%だった投票率に触れ「6割以上が投票していないわけで、そこを掘り起こして自分に入れてもらえるようにし、再々選挙にならないようにしたい」。

 仮に再選挙でも当選者が決まらなかった場合、前回選挙後に任期切れとなった区長不在の期間がさらに延びる。年末から本格化する来年度予算案編成や、新型コロナウイルス感染の第8波への対応に影響が懸念される。

 

 前回の立候補者のうち今回も出馬を予定するのは前回得票順の1〜5位で、元都議森沢恭子さん(44)、元区議石田秀男さん(63)=前回は自民推薦、元銀行員山本康行さん(46)、元区議西本貴子さん(61)、元大学教授村川浩一さん(75)=前回は共産推薦。得票6位だった諸派の1人は出馬しない見通し。

◆現行制度に問題はないのか

 一定の政治実績や支持層を持つ候補者6人が乱立する見込みとなり、早くも再々選挙の可能性が取りざたされる品川区長選。法定得票を獲得する候補者がいなければ再選挙が繰り返される現行制度について、選挙制度に詳しい識者はどうみるか。

 

 東京大の谷口将紀教授(政治学)は、新しい候補者が立候補できる余地を残している現行制度は妥当との立場。仮に1回目の上位者による決選投票にしてしまった場合、「1回目で決め手のなかった候補者の中から選ばなければならず、有権者にとってデメリットがある」と指摘する

 

 これに対し、東北大の河村和徳准教授(同)は「特に都市部で無党派層が増え、既存政党の組織力も弱くなっている。各候補が票を均等に取ってくる可能性は今後もあるのでは」と近年の政治情勢を分析。

 

再選挙が繰り返される可能性がある現状について「今回の区長選の結果がどうなるかにかかわらず、多角的に議論する場を設ける必要はあると思う」と話す。