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2021年8月31日 21時47分東京新聞
「全域除染が先だ」福島・浪江町津島地区の被災者 帰還困難区域の部分解除方針
東京電力福島第一原発事故から10年超、政府が方針を決めた帰還困難区域の解除の在り方に、同区域である福島県浪江町津島地区の避難者からは「全域を除染後に帰還するかを聞くべきだ。順番が逆」と怒りの声が上がった。
「住民の意向を聞かずに決めた。絵に描いた餅だ」と話す福島県浪江町津島地区の区長会長を務める末永一郎さん=8月31日、福島県大玉村で
福島県大玉村に避難する津島地区の区長会長、末永一郎さん(64)は政府方針の決定に「避難住民の意向を無視した政策決定。われわれ住民と膝詰めで話して決めるべきではないか。一方的で、納得できるものではない」と憤った。
原発事故直後、自宅周辺の空間放射線量は毎時180マイクロシーベルト。今も最大毎時20マイクロシーベルトあり、除染目安の80倍を超える放射能汚染が続く。放置された家は荒れ果て、住める状態にはない。
津島で除染して先行解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)の広さは、地域全体のわずか1.6%。石材業を営む末永さんの自宅や採石場は区域の外にある。
「自然豊かな古里に帰りたい。国策である原発の事故で突然汚された古里。地域は支え合って生きてきた。生活圏は自宅周辺だけではない。全域を除染してきれいにして返すべきだ」
◆住民意向異なれば、まだら解除も
政府方針に沿えば近隣住民の意向が異なる場合、除染場所としない場所がまだらになる可能性もある。
末永さんは「高線量域に囲まれては帰れない。田畑はできるのか、病院はどうか。仕事も含め実際に帰って生活できるかが見えない中、除染前に帰還するか聞くのはおかしい」と話した。
津島地区の自宅が復興拠点に入ったものの実家が拠点外にある三瓶春江さん(61)=福島市に避難=も「避難指示を解除し、原発事故も政府の責任も終わりにしようとしているのを感じる。全域を除染してから意向を聞くのが筋だ」と訴えた。(片山夏子)
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