横浜の送電線事故は東電の管理体制の劣化


  今回の事故は単なる偶然ではない、安全点検やメンテナンスの怠慢


   再稼働に巨額の資金をつぎ込むより 送電網の整備と管理が優先課題


 └────上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

 2022年8月19日に、神奈川県横浜市の送電線で爆発音がして周囲の樹木が焼ける事故があった。
 東電は樹木と送電線が接触して放電したものと説明している。強力な電流の事故では爆発音がする場合が多い。20年ほど前だが私の経験でも、台風や地震でもないのに職場の近くで高圧線が突然切れて「ドーン」という音とともに停電したことがある。

 樹木が自然に伸びるのは避けられないので、通常は高圧線の周辺では定期的に伐採作業が行われている。しかし今回はそれが間に合わなかったとみられる。
 

 今回の事故は単なる偶然ではなく東電の管理体制が劣化していることを示している。電力に限らず多くの産業事故は安全点検やメンテナンスを怠ることから発生する。安全点検やメンテナンスは直接には利益を産まないから、企業では真っ先に削られる分野である。それがある時間を経過すると事故として表れる。

 2019年10月には、台風が原因だったが送電線の倒壊により首都圏で広域停電が発生した。また2003年3月にイタリアで、倒木による送電線遮断が発端となり、その後の対応に失敗してイタリア全土の停電に波及した事故がある。


 最近の電力不足や、再生可能エネルギーの導入が制約されているのも送電網に問題があることが指摘されている。発電しても送電できなければ何の意味もない。
 

 再稼働に巨額の資金をつぎ込むよりも送電網の整備と管理が優先課題である。
 

たんぽぽ舎です。【TMM:No4559】 2022年8月20日(土)地震と原発事故情報