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毎日新聞

「障害の記載、強要で自殺」 自治会側に賠償命じるも因果関係認めず

 

自殺した男性の両親によると、男性は死亡の前日、自治会役員らに障害の程度を書面に記すよう要求された=大阪市内で2020年7月30日午後0時、伊藤遥撮影

 

 大阪市営住宅で約2年前、知的障害と精神障害のある男性(当時36歳)が自殺したのは、自治会の役員らから障害の程度を書面に書くよう強要されたのが原因だとして、男性の両親が自治会と当時の役員2人に計2500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は4日、自治会側に計44万円の賠償を命じた。林潤裁判長は書面について「プライバシー権や人格権を侵害している」と違法と判断する一方、自殺との因果関係は認めなかった。 

 

 判決によると、男性が1人暮らしをしていた市営住宅では2019年11月、自治会の班長を住民同士がくじ引きで選ぶことになった。男性が障害を理由に選考から外してもらうよう要望したところ、役員らは他の住民に説明して理解を得る必要があるとして、障害の状況や日常生活への影響を書面に記すことを求めた。

 

  男性は11月24日に役員らと話し合った際、便箋2枚に「しょうがいか(が)あります」「おかねのけいさんはできません」などと手書きで列挙させられたという。翌25日に自宅で命を絶った。  林裁判長は、書面は男性が知られたくなかった私生活上の行動を明らかにするもので、班長の仕事とは無関係の内容も書かれていると指摘。「保護されるべき利益を侵害し、社会的相当性を明らかに欠いている」と違法性を認めた。 

 

 一方、男性は書面の作成よりも住民らとの話し合いに悩んでいた可能性があり、役員らが亡くなることを予見するのは困難だったとして、自殺との因果関係は否定した。 

 

 判決後に記者会見した男性の兄は「弟は書面が住民に見せられて、さらし者にされることを恐れていた。判決で因果関係が認められなかったのは残念だ」と話した。自治会側の代理人弁護士は「被告の生活の平穏の観点から具体的なコメントは差し控えたい」との談話を出した。

 

 

 

■毎日新聞 2020/7/31 19:44

届かなかった自殺男性のSOS 自治会に「障害あること言われたくない」

 「障害があることを(周囲に)言われたくないのです」――。自殺した男性は、自治会の役員らにそう訴えていた。知的・精神障害がある男性(当時36歳)が、障害があることを書面に書くよう強要されて自殺したとして、両親が自治会と役員らに損害賠償を求めた訴訟が31日、大阪地裁で始まった。自治会の班長選びを巡り、男性は周囲に相談を持ちかけようとしていたが、両親の訴状からは、公的機関などで「たらい回し」のような対応をされた形跡もうかがえる。男性のSOSはなぜ届かなかったのか。

 訴状によると、発端は2019年11月18日。男性が住む大阪市内の市営住宅の部屋のポストに入れられた文書だった。当時の自治会班長が配布したもので、「12月1日に来年度の班長を決めるので、お集まりいただきたい」という内容だった。

選考除外聞き入れられず、相談先「たらい回し」


 男性は11月19日、障害を理由に班長選考から外してもらうよう自治会の役員らに掛け合ったが、聞き入れられなかった。

 翌日、男性が地元の区役所に相談しようと訪ねると、福祉問題などで地域の相談窓口となる「地域包括支援センター」に行くよう指示された。センターでは、「65歳以上の方しか対応していない」と言われ、地元の社会福祉協議会を紹介された。そこでようやく、地域福祉活動コーディネーターの女性らと知り合うことになる。

 男性は同22日、約2時間にわたって女性と相談。女…