新たな内部文書と証言「選挙活動を頑張ってもらうため」
自民党京都府連「選挙買収」疑惑
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2/11(金) 15:12文春オンライン
自民党京都府連「選挙買収」疑惑 新たな内部文書と証言「選挙活動を頑張ってもらうため」
二之湯智・国家公安委員長
『文藝春秋』3月号で10ページにわたり報じた自民党京都府連の選挙買収問題。京都における国政選挙の際に、自民党候補者が選挙区内の府議・市議に50万円を配っていた事実を内部資料と複数証言で報じたものだが、この問題が国会で取り上げられ、大きな反響を呼んでいる。
【新資料】ここにも〈府連経由でマネーロンダリングする〉
2月10日の衆院予算委員会で、参院京都府選出の二之湯智・国家公安委員長に対して、立憲民主党の城井崇氏が『文藝春秋』記事の内容を問いただした。すると二之湯氏は地元議員に金を配っていたことを認めたものの、「選挙活動の目的ではなく、党勢拡大のためで、適正に処理している」と買収疑惑を否定した。
だが、二之湯氏が50万円の配布を認めたことで、NHKなどの大手メディアも京都府連の買収疑惑について報じ始めている。
府連会長の西田昌司参院議員は記者に対して次のように答えているという。
「(『文藝春秋』の記事は)まったく事実無根ですから。選挙買収をする必要がない。取材しないで一方的な記事を書かれて大変憤慨している」
「取材しないで一方的な記事を書いた」というのは、明らかな嘘である。1月25日、筆者と取材班は、西田氏に対面取材を申し込んでおり、西田氏がそれに応じなかっただけだ。結局、西田氏は書面で「政治資金については法令に従い適切に処理している」と回答。このコメントは記事にも掲載している。
二之湯氏や西田氏はそろって「党勢拡大のための政治活動であり、選挙買収ではない」と否定する。だが、50万円が選挙用の金であることを示す資料が存在するのである――。
新資料にも〈府連経由でマネーロンダリングする〉
〈標記の選挙が、去る11月21日解散、12月2日公示、同14日投・開票で執行されます。ついては、従来から選挙活動をより活性化させるために、原資は別紙の算定で候補者から振込み(持参)により、京都府連から活動費として支給(交付)していますので、今回、各候補者も了解であることから、来る11月29日(土)午前10時からの選対会議終了後に支給(交付)することでよろしいか。
なお、京都府連から支給(交付)にすることは、府連経由でマネーロンダリングすることにあります〉(原文ママ)
これは2014年11月25日付の文書であり、〈第47回衆議院議員総選挙における府議会議員、京都市会議員に対する活動費の支給について〉とはっきり記されている。宛名は〈自民党京都府連 会長 西田昌司 殿〉、差出人欄には〈自民党京都府支部連合会 幹事長 近藤永太郎〉〈事務局長 N〉の名前が並ぶ。近藤氏は現役の京都府議、Nは当時、京都府連の事務局長を務めていた人物だ。
このN事務局長が後任者のため、2014年に作成した「引継書」には、繰り返し「選挙」と「マネーロンダリング」の言葉が出てくる。『文藝春秋』記事で引用した部分と別の箇所でもこう記述されているのだ。
〈今まで、衆議院選挙、参議院選挙、統一地方選挙についてお話をしました。いずれの選挙においても、我が党候補者の擁立、そして選挙実務などについて党内が一致団結して当選に向けて頑張らなければならない選挙であると思います。
なお付言しますと、先に申しておりましたように、衆議院選挙、参議院選挙とも候補者からの資金を原資として活動費(交付金)を交付しております。これは府連から交付することによる資金洗浄(マネーロンダリング)をすることにあります。更に額面は50万円です〉
また京都府連に勤務していた自民党の元職員である上条和夫氏(仮名)は、次のように説明する。
「“選挙前の小遣い”という認識です」
「配られた50万円は選挙のための金であることは、スキームを作った西田府連会長がいちばん理解しているはずです。配られた50万円は飲み代など私的に利用する議員が多かった。なかには『50万円の存在を妻に知られたくないので、府連からの通知を事務所に送らないでくれ』なんて依頼してくる議員もいたほどで、“選挙前の小遣い”という認識です。まさに選挙活動を頑張ってもらうための使途不明金そのものであり、党勢拡大のための金とは言えない」
そして今回新たに、京都6区から衆院選に立候補し、3期務めた安藤裕元衆院議員が取材に応じた。安藤氏は府連から「党勢拡大のための金」という説明をうけたかどうか記憶がないと語り、こう続ける。
「(最初の選挙では)府議会議員5人分、2回目から1人増えて6人分、府連に振り込みました。300万円です。選挙の前に配るわけですから、選挙のための金だと思われるのではという懸念がありました。しかし『慣例である』『合法である』と言われたので、その通りにしました。大きなお金を選挙前に動かすというのは誤解を招くことになるので、改めた方が良い」
候補者が府議や市議に50万円を配るという選挙買収は、「昨年の衆院選でも行われた」(地方議員)という。京都府連のトップである西田氏はいつまで「選挙のためではない」と抗弁するのだろうか。
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2月10日発売の 月刊「文藝春秋」3月号 、および 文藝春秋digital では、この選挙買収問題を詳報している。金を受け取った候補者や地方議員の証言に加え、議員名と金額が記された「選挙買収リスト」などの内部文書を公開。さらには、京都府連会長であり、この選挙買収のスキームを作ったとされる西田参院議員の疑惑についても報じている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/181442986079a0ab6ee7455a39973c49237c5547
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2/11(金) 6:00文春オンライン
自民党「爆弾男」を告発する〈元自民党職員・議員が明かす1億円超「選挙買収」の実態〉/赤石晋一郎+本誌取材班――文藝春秋特選記事【全文公開】
自民党「爆弾男」を告発する〈元自民党職員・議員が明かす1億円超「選挙買収」の実態〉/赤石晋一郎+本誌取材班――文藝春秋特選記事【全文公開】
(c)AFLO
「文藝春秋」3月号の特選記事を公開します。文/赤石晋一郎(ジャーナリスト)+本誌取材班
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時は衆院選を間近にひかえた二〇一四年十一月末のことだ。京都市中京区にある自民党京都府支部連合会(以下、京都府連)四階にある会議室には、選対会議に招集された五十人ほどの府議、市議が落ち着かない様子で待機していた。
名前を呼ばれると、彼らは一人ずつ三階の役員室に消えていく。
「〇〇先生からだ」
ソファにどっかり座った府連幹部はそう念押しすると、白封筒を手渡す。神妙な面持ちで封筒を受けとった議員は、領収書にサインすると、封筒を懐にねじ込む。手際よく配られる白封筒、そして阿吽の呼吸で懐に収める地方議員たち。
京都府連において国政選挙前の“恒例”となっている、この密室のやりとりが公になったことは一度もない。なぜならば白封筒には五〇万円が包まれており、それは「選挙買収」の資金に他ならないからだ――。
選挙買収といえば、二〇二〇年六月に公職選挙法違反容疑で河井克行・案里夫妻が逮捕された事件が記憶に新しい。河井案里氏は二〇一九年七月に行われた参院選で広島選挙区から出馬し、当選を果たす。だがその裏で、克行氏が妻を当選させるため、票の取りまとめなどの報酬として、地元政治家ら計百人に計約二八七〇万円を提供したことが発覚。東京地検特捜部によって夫妻は逮捕された。
昨年十二月には、自民党の泉田裕彦衆院議員が、衆院選をめぐって星野伊佐夫新潟県議から「(選挙用の)裏金を要求された」と告発。泉田氏によると「泉田さん、勝負やろうや。二〇〇〇万や三〇〇〇万の金を惜しんじゃいけない」と持ち掛けられたという。対して星野県議は「裏金要求ではなく選挙にかかる費用を問われた際の答えだ」と釈明し、泥仕合となった。
これらの事件で明らかになったのは集票マシンとしての地方議員の存在、そして自民党の根深い金権体質だった。
〈いわばマネーロンダリング〉
いま筆者の手元には、京都における金権選挙の実態が記された数百枚の内部文書がある。
その一つが京都府連の「引継書」である。二〇一四年に府連の事務局長が交代する際、事務局長の“表と裏の仕事”を後任者に引継ぐために作成されたという。
なかでも興味深いのが「選挙対策」の項目だ。選挙の裏工作について克明に記されている。
〈選対会議の開催と併せて、その会議の後には、各候補者からの原資による活動費を府議会議員、京都市会議員に交付しなければなりません。
この世界、どうして「お金!」「お金!」なのか分かりませんが、選挙の都度、応援、支援してくれる府議会議員、京都市会議員には、活動費として交付するシステムとなっているのです。
活動費は、議員1人につき50万円です。候補者が京都府連に寄附し、それを原資として府連が各議員に交付するのです。本当に回りくどいシステムなのですが、候補者がダイレクトに議員に交付すれば、公職選挙法上は買収と言うことになりますので、京都府連から交付することとし、いわばマネーロンダリングをするのです〉(原文ママ、以下同)
驚くべきことに、京都府連が「買収」のための五〇万円を「マネーロンダリング」していると、しっかり記されているのだ。
こうした内部資料の裏付け取材を続けるなかで、当事者の一人が重い口を開いた。長年、京都府連に勤務していた自民党元職員の上条和夫氏(仮名)である。
「国政選挙が行われるたびに、京都府連は、『引継書』に記されているような買収と隠蔽工作に手を染めてきました。衆院選・参院選の候補者が用意したお金を府連が一度預かり、その後、府連が府議と市議に渡す形をとります。一人につき五〇万円という金額も間違いありません。府連を通じた『マネーロンダリング』は、京都府連特有の隠蔽工作であり、こうした狡猾な仕組みが全国に広がってはいけないと考え、取材を受けることにしました」
さらに上条氏は「引継書」について説明する。
「『引継書』の原本は、京都府連内に製本されて厳重に保管されています。(筆者が入手した)この文書は、製本する前の文書であり、当時の事務局長が書いたものです。この事務局長は警察上がりの真面目な方で、後任が困ることがないように、『引継書』が作られました」
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2022/02/09「文藝春秋」編集部
内部文書入手 自民党が「1億円選挙買収」を行っていた《国会議員・党職員も証言》
京都府内の選挙区から出馬した複数の自民党国会議員が総額1億円を超える選挙買収を行っていたことが、ジャーナリスト赤石晋一郎氏の取材で明らかとなった。京都府連で作成された数百枚の内部文書の記述、さらに当事者である元国会議員、元自民党職員、金を受け取った地方議員などの証言から事実関係が裏付けられた。
内部文書の一つが自民党京都府連の「引継書」である。2014年に京都府連の事務局長が交代する際に作成されたというが、「選挙対策」の項目には、次のような記述がある。
〈選対会議の開催と併せて、その会議の後には、各候補者からの原資による活動費を府議会議員、京都市会議員に交付しなければなりません。この世界、どうして「お金!」「お金!」なのかは分かりませんが、選挙の都度、応援、支援してくれる府議会議員、市議会議員には、活動費として交付するシステムとなっているのです。
活動費は、議員1人につき50万円です。候補者が京都府連に寄附し、それを原資として府連が各議員に交付するのです。本当に回りくどいシステムなのですが、候補者がダイレクトに議員に交付すれば、公職選挙法上は買収と言うことになりますので、京都府連から交付することとし、いわばマネーロンダリングをするのです〉(原文ママ)
「50万円という金額も間違いない」
こうした内部資料の裏付け取材を続けるなかで、長年、京都府連に勤務していた自民党元職員の上条和夫氏(仮名)の証言が得られた。
「国政選挙が行われるたびに、京都府連は、『引継書』に記されているような買収と隠蔽工作に手を染めてきました。衆院選・参院選の候補者が用意したお金を府連が一度預かり、その後、府連が府議と市議に渡す形をとります。1人につき50万円という金額も間違いありません。
現金は、京都府連の経理スタッフが京都府連に隣接する京都中央信用金庫西御池支店(現在は移転)から引出し、新札で用意されます。そして役員室で府議や市議らに手渡す。議員はその場で領収書を書き、金を受け取る。会議に参加できなかった議員には、後日、個別に渡されます」
上条氏の証言や内部文書を総合すると、金の流れは次の通りだ。
【(国会議員が代表を務める)選挙区支部】→【京都府連】→【府議・市議】
またこの金の流れは、京都府連、国会議員、地方議員の収支報告書でも確認できた。
河井夫妻の買収事件と構図は全く同じ
2012、2014年の衆院選で京都3区から出馬し当選している元国会議員の宮崎謙介氏が取材に応じ、事実関係を認めた。
「私は公募で選ばれ出馬することになるのですが、公募の面接の際、『金はあるのか』としつこく聞かれ、選挙前には『400万円用意しろ』と言われました。『払いたくない』と他の候補者に相談しましたが、『慣例だから従おう』と言われ、渋々用意しました」
――その400万円は、京都3区を地盤とする8名の府議・市議に50万円ずつ配るためか?
「そうですね。お金を配ると、確かに選挙では効果はあるんです。やはり新人候補は地元の議員頼みになってしまいますから」
自民党京都府連「引継書」の一部
――河井案里氏の買収事件と構図は全く同じだ。
「(河井夫妻の)事件を耳にして、僕は当時の秘書に確認しました。『あれ、ウチもやっていなかった?』と電話したんです。その秘書の答えは『府連を通しているんで……』でした。お金を配るのは選挙直前です。後で考えると京都でやっていたことは、河井案里事件とどこが違うのでしょうか? 京都府連を仲介すれば済む話なのかとひっかかりはしましたね」
今回の取材では2019年までの国政選挙で総額1億円を超える金の移動が確認できた。また昨年10月の衆院選でも、金が配られたとの証言も得られている。
選挙買収といえば、2020年6月、河井克行・案里夫妻が、票の取りまとめなどの報酬として計約2870万円を提供したとして公職選挙法違反容疑で逮捕されている。神戸学院大学法学部・上脇博之教授(憲法学)は今回のケースの違法性を指摘する。
京都府連会長の西田氏
「一連の内部文書に記されているように、京都府連を経由させても、選挙買収の意図があれば公職選挙法違反になる。公選法221条の買収罪、もしくは222条の多人数買収に問われる可能性があります。相当以前から行われた常習の可能性が高く、悪質です。罰則は221条が3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金。222条が適用されるならばより重く、5年以下の懲役または禁錮になります」
京都府連会長をつとめる西田昌司参院議員は、「政治資金については法令に従い、適切に処理している」と回答。また京都府連は「党勢拡大のため、法令に従った政治活動を行っており、貴誌の評価は誤りです」と答えた。
2月10日発売の月刊「文藝春秋」3月号では、この選挙買収問題を10ページにわたって詳報する。宮崎氏以外の候補者、金を受け取った地方議員の証言に加え、議員名と金額が記された「選挙買収リスト」などの内部文書を公開。さらには、京都府連会長であり、この選挙買収のスキームを作ったとされる西田参院議員の疑惑についても報じる。