◆ 多田謡子反権力人権基金、第33回の受賞者を決定 (レイバーネット日本)


桜井昌司さん


 多田謡子反権力人権基金の久下です。
 夭折した多田謡子弁護士の遺産をもとに、友人たちで運営している多田謡子反権力人権基金は、第33回の受賞者を決定し12月18日に受賞発表会を行います。
 (長く女性差別と闘った故人からの寄付により、本年は副賞賞金を30万円に増額し、故人の遺志にかなう受賞者を1名増やして2団体2名に受賞していただくことが出来ました。)

 ※ 基金についての詳細は下記サイトでごらんになれます。
https://tadayoko.net

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 ◆ 1.第33回多田謡子反権力人権賞受賞者の決定

 2021年11月上旬の運営委員会において、11団体・個人の推薦候補者の中から下記の方々が第33回受賞者に決定されました。


 受賞者の方々には12月18日(土)の受賞発表会で講演していただき、多田謡子の著作「私の敵が見えてきた」ならびに賞金30万円が贈呈されます。

★ 差別排外主義に反対する連絡会(差別・排外主義との闘い)

★ フジ住宅によるヘイトハラスメント裁判・原告と支える会(社員へのヘイトハラスメントに働きながら反対)

★ 桜井昌司さん(冤罪との闘い、冤罪被害者救援の闘い)

★ ヘリ基地反対協海上チーム(辺野古新基地反対闘争)


 2.受賞発表会の開催

 受賞者の皆さんをお迎えして、12月18日(土)、東京・連合会館で受賞発表会を開催します。受賞者の方々には講演をお願いしています。参加費は無料です。本年も多数の皆さんのご参加をお待ちしております。

 --コロナ感染症対策についてのお願い--
 会場ではマスク着用をお願いします。発熱等、体調の悪い方は参加を見合わせてください。

 (1) 日時 2021年12月18日(土) 午後2時から5時まで
 (2) 会場 連合会館2階201号室
    東京都千代田区神田駿河台3-2-11
    TEL 03-3253-1771
 (3) 議事
  1.活動経過報告
  2.第33回多田謡子反権力人権賞選考経過の報告
  3.受賞者の講演
  4.反権力人権賞の贈呈

 3.受賞者を囲む交流会

 残念ながら、本年度は恒例の発表会終了後のパーティは行いませんが、引き続き同じ会場で受賞者を囲んだ交流会を開催します。交流会へのご参加もお願いします。

 4.ZOOMでの配信について

 午後2時から5時まで、発表会のZOOM配信を計画しています。ZOOMでの視聴をご希望の方は、下記アドレスに「発表会、ZOOM視聴希望」と明記してメールを送信してください。折り返し、先着順に視聴のためのリンクをお送りします。

 ◎ZOOM配信申し込み先 web(a)tadayoko.net  (a)を@に変えてください。

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 ◆ 第33回多田謡子反権力人権賞受賞者選考理由

 ★ 差別排外主義に反対する連絡会(差別・排外主義との闘い)

 2009年に起きた、埼玉県在住のフィリピン人一家を「追放しろ」という嫌がらせのデモは、「在特会」ら「行動する保守」を標榜する差別・排外主義勢力の存在を浮き彫りにしました。
 多くの人たちが危機感を抱き、街頭とネットで勢力を拡大する彼らへのカウンター行動が取り組まれるなかで、2010年7月、差別・排外主義に反対する連絡会が結成されました。
 メンバーに若い人はあまりいません。だからと言って、〝それがどうした!〟という気概が一人一人の身体に一杯詰まっています。
 集会やイベントの防衛では、圧倒的多数に対して毅然として立ち向い、継続してきたデモ行進では、今は「コロナ禍に乗じたヘイトをやめろ!」という横断幕が掲げられています。
 一人一人が別に闘いの場(沖縄、野宿者、原発など)を持ちながら、この連絡会に参加しています。
 今の社会状況の中、ヘイトにさらされる人々の側に立ち、共に立ち向かっていこうとする者の存在は貴重です。共に考え、共に闘っていく中でこそ、未来を見通す相乗的な関係を拡げていくことができるでしょう。
 しっかりと地に足をつけて非暴力で闘い続ける、差別・排外主義に反対する連絡会に多田謡子反権力人権賞を贈ります。


 ★ フジ住宅によるヘイトハラスメント裁判・原告と支える会
   (社員へのヘイトハラスメントに働きながら反対)
 在日韓国人3世の原告女性が、東証一部上場の大手不動産会社「フジ住宅」の子会社に非常勤採用されたのは2002年でした。「パートにも福利厚生の行き届いた働きやすい職場」は、親会社に吸収されて以降、激変していきます。
 会長名の社内文書に「日本人の誇り」などの言葉が頻出、それはヘイト本などのコピーへとエスカレート。会長の号令で、自治体教委に育鵬社教科書の採択を求める運動までなされましたが、正社員は沈黙。むしろ賛同や礼賛を会長に提出する者が現れ、それらは社内文書として配布されました。
 労基署に行くも「表現の自由」と門前払い。弁護士を立てて配布停止を求めるも無視され、上司からは退職を「提案」されました。止む無く彼女は2015年8月、会長と会社に損害賠償を求めて大阪地裁堺支部に提訴。一審は人格権侵害などを認めて両被告に110万円の賠償を命じましたが、裁判は係争中です。
 勝訴後もやまぬ誹謗中傷のなか、社内に留まりながら、まだ認知度の低いレイシャルハラスメントの違法性や、全人格的隷属を自明とする「企業風土」を問い続ける原告と、署名や街頭宣伝などを通して彼女と共に闘っている『ヘイトハラスメント裁判を支える会』に、多田謡子反権力人権賞を贈ります。


 ★ 桜井昌司さん(冤罪との闘い、冤罪被害者救援の闘い)

 桜井昌司さん(写真)は1967年8月に起きた殺人事件で杉山卓男さんとともに茨城県警に逮捕されました。物的証拠はなにもなく、別件で逮捕した警察の違法、苛烈な取り調べで「自白」を強要された二人は、裁判で「自白を強要された」と訴えましたが、無期懲役が確定しました。
 29年間投獄された後、仮釈放された二人の請求にもとづき再審が開始、2011年水戸地裁は再審ですべての状況証拠の信用性を否定する無罪判決を出して確定しました。再審無罪のために二人は44年間闘わねばならなかったのです。無罪確定から4年後に杉山さんは逝去されました。
 桜井さんの提訴した国家賠償訴訟では、本年、2021年8月、東京高裁が茨城県警と水戸地方検察庁双方の違法捜査を認め、逮捕、起訴からの全期間の損害賠償を命じる判決が確定しましたが、証拠を偽造、捏造、隠蔽した警察・検察はいまだ桜井さんに謝ろうとしていません。
 雪冤を果たした後も、桜井さんは冤罪と違法捜査をなくすため、取り調べの可視化を求め続け、とりわけ全国を飛び回って、今も冤罪で苦しむ人びとを励ます活動を続けています。冤罪を生む社会を許さず、重い病をおして、冤罪を生まない社会のために闘い続ける桜井昌司さんに多田謡子反権力人権賞を贈ります。


 ★ ヘリ基地反対協海上チーム(辺野古新基地反対闘争)

 沖縄は、日本への復帰(1972年)から来年(2020年)で50年目を迎えますが、復帰後も沖縄本島の重要な部分に米軍基地が存在し続け、日米安保条約と地位協定は、沖縄の住民を脅かし続けてきました。
 2012年以来、自公政権は最も危険な沖縄県宜野湾市の普天間基地を県内名護市辺野古に移転するという口実で、辺野古米軍新基地建設を強行してきました。彼らは埋立工事を強行して大浦湾の自然を破壊し、外洋部での地盤の軟弱さが明らかになって、建設は無理とわかっている今も工事を強行しています。
 こうした中で、しゅんせつ・埋立のための土砂運搬のダンプに抗議して、陸上では各ゲート前での抗議行動が、海上ではカヌーによる海上運搬への抗議が続いています。今年4月には、海上保安庁による不当な規制によってカヌーの艘者1名が重傷を負うという事件がおきました。
 コロナ禍の中でも、海上チームは、カヌー艘者とそれを支える海上船、送り出す地上での支援が一体となって闘い続けています。辺野古新基地建設を阻止するために、不当な規制・弾圧をはねかえして活動を続ける新基地反対協海上チームに対して、心からの敬意を表し多田謡子反権力人権賞を贈ります。

『レイバーネット日本』(2021-11-16)
http://www.labornetjp.org/news/2021/1637034777173staff01