◆ 11/12第一回公判のご報告。前を向くために。
ベトナム人技能実習生リンさんの裁判を支援する会
2021年11月16日
当日、私は緊張の余りバス集合時間の1時間前に到着してしまいました。
先発で福岡入りした私達、裁判を支援する会の共同代表・山下海南子とコムスタカの中島代表、弁護団主任の石黒弁護士の3名で皆様から頂いた大切な署名を福岡高裁へ無事に提出させて頂きました。
途中、共同代表の山下が金属探知機に何度も引っかかるというハプニングもありながら……
第1回公判の結果は、1日で結審という唖然とするものでした。
皆様から頂いた署名はchengeと紙の署名用紙を合わせると約5万人。それほど沢山の人々が異議を訴えているにもかかわらず。民主主義とはたった1人の異論もすくいあげるものではないのか?裁判長聞こえますか?!
私達はリンさんと出会ってから、この国の非人道的な理不尽さを心がズタズタになるほど思い知らされています。
そんな中で希望の光にも出会えました。熊本からバスで一緒に来てくれた法学部の若者2人です。記者会見では、入管の職員になってリンさんのような人々を助けたい!と曇りないキラキラした笑顔で語ってくださいました。
さぁ、私達ももう1度前を向いて頑張ります。皆様どうぞ周りの方々へのシェアを宜しくお願いします。
ベトナム人技能実習生リンさんの裁判を支援する会・共同代表 成毛佳季。
以下は裁判の詳細について、熊本地裁での判決前からリンさんを支援しているコムスタカの中島眞一郎代表のコメントです。
注目されたリンさんの死体遺棄罪刑事裁判第1回控訴審は、2021年7月20日熊本地裁での有罪判決以降、2カ月間をかけて、弁護団は、心血を注いで、多くの専門家(刑法学者の方々、弁護士、ベトナムの専門家など協力を得て)などの協力を得て作成した控訴趣意書(46ページにわたる)を2021年10月6日に提出しました。
原審判決を批判し破棄無罪を求めるため証拠調や証人申請を控訴審で求めましたが、第1回控訴審公判で、福岡高裁の辻川裁判長は、検察官の主張通り、「証拠調べも証人調べも必要なし」として却下して、即日結審して判決言い渡しを2022年1月19日(水曜日)午後2時と指定しました。
この結果、高裁判決は、弁護人側の控訴趣旨書のみでの判断されることとなり、無罪判決の可能性は残りつつも、裁判長の訴訟指揮から見て、2022年1月19日の控訴審の判決は、「控訴棄却」の敗訴判決も十分予想されます。
改めて、日本の刑事司法の「厚い壁」を実感させられました。
リンさんの死体遺棄罪事件の原審判決は、
①死体遺棄罪で、「私的埋葬」という実行行為のない「準備行為」を犯罪として有罪とする初めての判決であること、
② 死体遺棄罪の有罪判決で、死産した遺体から離去(立ち去る)ことをしていない事件で有罪判決の例がなく(唯一の例外 名古屋高裁金沢支部の「年金詐欺事件」 母親の年金を死後も継続給付受けるため母親の遺体を1年8カ月間放置していたケース)、リンさんのわずか1日ほどの短期間で有罪とする初めての判決であることなど、極めて問題のある判決です。
弁護団が提出した控訴趣意書は、法的論理からも十分逆転無罪判決を導くことが可能です。
私は、これまでリンさんの刑事裁判で無罪判決を勝ちとるためには、「①原審判決を批判する法的論理の正当性 ②検察官が起訴したら、裁判所も追認して99.8%以上有罪となるこの国の刑事司法に挑むには、この事件の問題を訴え、世論をかえる運動が必要である」という2つを主張してきました。
第1回控訴審公判の結果から、改めて「法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)」の枠内だけで争っていても、「無罪判決」を得ることは期待できないことを思い知らされました。
控訴審の判決日まで約2カ月間の時間があります。リンさんの刑事裁判の問題は、1審判決までの熊本県内の地方の問題から、その後、急速に全国的な問題として支援が広がってきています。
無罪署名が2021年10月から実質1カ月間と10日ほどで4万8000名を超えていること、第一回公判への傍聴希望者90名を超えて集まり、また、公判終了後の記者会見と裁判報告集会にも100名を超える人々が集まりました。
ベトナム人技能実習生(22歳)の女性の「私は無罪です」という主張は、日本社会の中で大きな支持の広がりを作り出しつつあります。
残り2ヶ月間に高裁の裁判官を動かすような「リンさんに無罪の判決」を求める大きな世論のうねりを作り出していくとで、「無罪判決」への道は開けていきます。(高裁の裁判官が恐れるのは、最高裁で否定される判決を書いてしまうことです)、
また、仮に2022年1月19日の控訴審判決で敗訴しても、最高裁で「逆転無罪」を実現していく可能性は開けてくると思います。