「再処理工場完成見通せず」
「核燃サイクル八方ふさがり」
東京新聞「行き詰まった核燃料サイクル」(2021.11.7)
◆ 狼(おおかみ)が来た (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
あぁ、やった! 本紙七日朝刊トップ記事。
さほど派手な扱いではなかったが、堂々のスクープだ。寄稿紙を褒めるのは八百長じみるが、素直に拍手喝采。
「再処理工場完成見通せず」「核燃サイクル八方ふさがり」。誰かが先鞭(せんべん)をつけ引導を渡す必要があった。
「実用化できる可能性はない」と断言する原子力規制委員会の田中俊一前委員長に、私は雑誌編集部を通じて取材を要請したが断られ、コロナ禍もあって動けなかった。
六ケ所村(青森県)の核燃料再処理工場は、二〇〇九年に廃液をガラス固化体にする建屋内で、高レベルの廃液漏れ事故を起こした後、ピクリとも動いていない。
にもかかわらず、来年には稼働すると虚言を弄して二十五回も延期させ、今また二二年度稼働を唱えている。
しかし、常識で考えて一九九三年四月に着工してから二十八年、それでもなお試運転さえ成功していないのは詐欺ともいえる。
そんなウソまみれの工場が、一年後に動く保証はない。
「広島型原爆にして三発分の放射性物質が建屋内を汚染した」と小出裕章は著書で語っている。福島原発のデブリのような猛濃度の放射性物質が、手つかずのまま放置されてきた。
私はこの欄で「絶望の再処理工場」とか「世にも不思議な工場」と書いたが、事故を心配して過激に「狼が来た」と叫ぶべきだった。
『東京新聞』(2021年11月9日【本音のコラム】)