自公維の反共攻撃を跳ね返し政権反対党4党の団結を
  31日総選挙で第二自民党・維新をつぶそう
  Kさん結婚報道で消えた総選挙報道の大問題

 

 「メディア改革」連載第80回
  

 浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

眞子さん皇室離脱・事実上の亡命を機に天皇制議論を

 31日投開票の衆院選挙で、自公維は共謀して政権反対党4党に関し、「野党共闘に初めて共産主義が入り込んだ」(甘利明自民党幹事長)などと反共攻撃に力を入れている。麻生太郎副総裁は23日の川崎市での演説で、かつての中国国民党と中国共産党との「国共合作」を引き合いに「どこの国でも共産党と組んだら共産党がリーダーシップを取っている。みんな同じだ」と主張した。

  衆院選に初出馬した時の第一声を「下々のみなさん」と言って始めた麻生氏は、「立憲ナントカ党が連立を組んだ。どこと?共産党。立憲共産党になったんだな」と表現した。「じゃあ聞こう。共産党は日米安保条約反対、自衛隊は違憲、天皇制反対。じゃあ、そういう政党と一緒になったら、内閣はどうするんだ」などと言い放った。


 今回の選挙で、自公批判の無党派票をとるために自民党2軍として活動している維新の代表、副代表も4党共闘を罵倒している。「都構想」にこだわり、大阪の医療崩壊を招いて多数の犠牲者を出した大阪の知事と市長をヨイショした近畿のキシャクラブメディアは万死に値する。

  17日にフェイスブック(FB)に投稿したが、公明党の山口那津男代表は14日の演説で「共産党は、天皇制は憲法違反、廃止すべきだ」と党綱領で言っていると発言。甘利幹事長も16日のNHK「国会討論」での冒頭発言で、「政府の意思決定の中に共産党の意思が入ってくる。自衛隊や天皇制に対する考え方が全く違う。体制選択選挙になる」と強調した。
  
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/27706726.html
  これに対し、共産党の小池晃書記局長は「党の綱領は、『天皇の制度は憲法上の制度』と明記している。荒唐無稽で完全なデマ発言を撤回すべきだ。天皇制を守る」と反論した。
 自公の共産攻撃は時代錯誤で醜悪だが、共産党が「天皇制を守る」とまで言うのもどうかと思った。

  スウェーデン社民党は王室廃止を綱領に掲げているが、第一党となっての連立政権で王室廃止の政策はとってこなかった。連立を組む時には、政党の主張と矛盾することも受け入れる。それが連立政権だ。

  26日には、日本の象徴天皇制を議論する契機となる出来事があった。生まれながらにして、皇室に入れられ、30年間メンバーを務めた秋篠宮家の長女が26日、「民間人」Kさんとの婚姻届けを渋谷区役所に出し、都内のホテルで質疑応答なしの11分間の「記者会見を開いた。キシャクラブメディアはこの女性について、「眞子さま」から「眞子さん」に呼称を変えた。

  宮内庁は27日、眞子さんが結婚で皇族の身分を離れたことを、皇室の戸籍にあたる「皇統譜」に登録する手続きをした。朝日新聞、東京新聞に、27日から「眞子さん」と呼称し、敬語は用いないという「おことわり」が載った。
  共同通信は、26日、「おことわり」と題し、「今後は原則として小室眞子さんと表記し、敬語は使用しません。27日付では表記が混在します」などという記事を配信した。
皇室敬語を使うことがジャーナリズムとしておかしいのだ。

  眞子さんの結婚についてはFBに書いたが、眞子さんが4年前に婚約会見をして、Kさんの母親の金銭問題が起きる前から、海外の拠点をつくるようKさんと計画していたことを明かした。交際中から、皇室を抜け、事実上の亡命のための準備をしていたという発言に驚いた。

  二人をめぐるマスメディア報道について「誹謗中傷」「ものがたり作り」「事実に基づかない報道」「誤った報道」などと何度も批判した。「元皇族」として生きる道も閉ざした。
  
https://www.facebook.com/profile.php?id=100022241222173

  Kさん夫妻、妹の「平穏な環境を」という要請にもかかわらず、NHKを含むテレビでは、眞子さんが国際免許証を取得するため品川区の鮫洲運転免許試験場に出かけた模様や、Kさんが米NY州で受験した司法試験の合否結果が通知されたことを伝えている。最も重要なニュースである衆院選は4、5番目で短く伝えるだけだ。

  私の第一作『犯罪報道の犯罪』が契機になって1984年に誕生した人権と報道・連絡会は日本にも報道被害を扱うメディア責任制度(報道界の統一した倫理綱領、苦情を受け付ける報道評議会・プレスオンブズマン設置)を作ろうと運動してきた。

  眞子さんのアピールは、90年代にあった「人権と報道」議論を踏まえて、再び、議論を展開するための、一つの機会になると思う。
眞子さんが会見での質疑応答をさけることになった問題では、日本で最も閉鎖的なキシャクラブである宮内記者会(15社)の問題もある。

 スウェーデン、英国などでは、王室メンバーや首相が報道評議会に苦情を申し立てることができる。私は2002年から03年までロンドンで在外研究したが、ブレア英首相夫妻やエリザベス女王が英報道苦情委員会(PCC)に報道被害を訴えていた。海外には、誰でも利用できる苦情対応制度があることを、日本の人民にも知ってもらう契機したい。
  元朝日新聞記者の富川泰雄氏は28日夜、FBに、スポーツ新聞の記事を紹介して、「二人は公人ではない。無制限にプライバシーを侵害されていい筈がない。(略)このまま人権侵害を放置していていいのか?人権と報道・連絡会は何をしている‼️」と投稿した。
 
https://www.facebook.com/yasuo.tomikawa

 私は、コメント欄で「天皇制メディアとの問題をずっと取り上げてきましたので、人報連の事務局長らと相談します」と返信した。山際永三事務局長(映画監督)は「Kさんの家柄は眞子さんに相応しくないという論調がしつこく展開され、4年以上経過しても収まらず、全くのフェイク記事もあったのはいまいましい、残念なことだ」と述べる。

  山際氏は「公人にもそれなりのプライバシーはあるという立場でずっと運動してきた。Kさんがらみの過剰報道は、とくに悪質とも言える」とも指摘した。人報連はこの段階で声明などは出さないが、今後も議論していきたい。

  人報連のニュース編集長の中嶋啓明氏は、靖国・天皇制問題情報センター通信の連載「今月の報道」で<表現規制を後押しする眞子結婚スキャンダル>と題し、次のように書いている。
 <天皇制の基盤に無視できない“亀裂”が生じたのも、見逃すことのできない事実ではあろう。(略)コップの中の争いに囚われることなく、“亀裂”の可視化という現実にも介入しながら、天皇制などいらないとの声を強めていきたい>

 日本の皇室は特定の宗教(国家神道)、神話と結びついている。敗戦後に天皇制(皇室)と靖国神社などの神社が存続されたことに問題はなかったか。なぜ皇室メンバー17人には住民票、投票権、パスポートがないのか。
なぜ、国の中に基本的人権が保障されていない人たちがいるのか。憲法と皇室の問題をみんなで考えたい