千葉県習志野市のアスベスト規制違反は、コロナ禍悪用の無法地帯
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2021.09.11 井部正之
アスベスト規制違反 法改正後も約4割 大阪府内のパトロールで発覚
建築物の改修・解体現場におけるアスベスト(石綿)対策をめぐり大阪府などが6月に一斉パトロールを実施したところ、4割近くで法令違反が見つかった。4月の改正大気汚染防止法(大防法)の施行後に指導率が公表されたのは初めてとみられる。(井部正之)
不適正なアスベスト調査の掲示例(黒塗り筆者)。「目視確認」だけで安全を主張。実際にはアスベストだらけのことが多い(本文とは直接関係ありません)
◆一斉パトロールで指導130件
府はかねて6月と12月を「石綿飛散防止推進月間」と独自に位置づけ、建築物などの解体・改造・補修工事の適正化のため、府内で規制権限を持つ25市町村の大気や建築、廃棄物の各部局と連携してパトロールなどに取組んでいる。
6月の一斉パトロールは改正大防法が4月に一部施行された後、府で初めて実施されたもの。府は重点的に実施したかったそうだが、コロナ禍により、各地域で通常1週間の予定が1~2日に縮小して実施せざるを得なかったという。
それでも府内452カ所の改修・解体現場に立ち入りした。工事中だったのは227カ所で、そのうち81カ所で大防法または府条例(府生活環境の保全等に関する条例)違反が見つかり、指導した。指導率は35.7%に上る。
指導総数は延べ計130件。そのうち、アスベストの事前調査報告書を現場に備え付けする義務の違反よる指導が55件(42.3%)でもっとも多かった。事前に建物のどこに使われたどの建材にアスベストが含まれているのか説明を受けていても、現場に報告書が備え付けられていないと作業時に確認できず、不適正工事につながりかねない。
また事前調査結果の掲示義務違反による指導54件(41.5%)と合わせ、事前調査結果の取り扱いに関する指導が8割を占めた。
府によれば、報告書の備え付けがなかった現場には、元請け業者からアスベストの調査結果が自体が知らされていない事例が複数あったという。
さらに周辺にアスベストが飛散しかねない不適正な作業が4件(3.1%)確認されたほか、不適正作業につながった可能性が高いとみられる、事前調査を実施していなかった事例が4件(3.1%)、事前調査報告書を作成していなかった事例が7件(5.4%)見つかった。
府はアスベストの飛散・曝露事故につながるとして、規制遵守の徹底を求めている。
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府事業所指導課は「例年なら指導現場数が6割を超えていたんですが、今回は3割超でした。実施期間が短い結果というのもあるかもしれませんが、少しずつは改正法や条例が周知されつつあるのかなと感じた」と感想を述べた。
しかし、立ち入り検査は各地域でそれぞれわずか1~2日。府でも認めているとおり、通常の7日間より短いことから、単純に指導率の比較はできないはずだ。現場指導を担う側としての希望的観測とも映るが、以前から条例で今回の法改正を実質的に先取りしていた大阪府ならではの事情もあるのかもしれない。なお、府の結果公表は8月4日。
国レベルでは毎年5月と10月ごろに都道府県などの大気部局と建設部局、地域ごとの労働基準監督署が合同で一斉パトロールを実施している。環境省大気環境課によれば、国はこれまで特別なことがあったとき以外非公開としてきた立ち入り結果について、今回は公表する見通しという。
ただし東京都はコロナ禍で一斉パトロールを中止。同省も「実施していない自治体がある」と認めており、どの程度実態を反映したものとなるかは不透明だ。
注記:大阪府内の一斉パトロールの実施主体は大阪府および規制権限を持つ25市町村(大阪市、堺市、岸和田市、豊中市、池田市、吹田市、泉大津市(※忠岡町)、高槻市、貝塚市、枚方市、茨木市、八尾市、泉佐野市、富田林市、寝屋川市、河内長野市、松原市、箕面市、東大阪市、大阪狭山市、阪南市、豊能町、能勢町、太子町、河南町、千早赤阪村)。なお、忠岡町については泉大津市が石綿対策の事務を受託しているため、パトロールについても泉大津市が実施した。