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9/18(土) 6:03アジアプレス・ネットワーク

 

さいたま市でアスベスト含有煙突“違法”撤去 業者の仰天言い訳とは?


断熱材にアスベストを含む煙突が法令で定められた対策なしに撤去されたさいたま市浦和区の“違法”解体現場。市の立ち入り検査前のようす。川島浩さん提供

さいたま市浦和区の住宅地で9月7日、アスベスト(石綿)を含む煙突を法令で定められた届け出や対策なしに撤去したとして、市は解体業者に作業の一時停止などを命じた。報告書にアスベストの存在が記載されているにもかかわらず、業者側は驚きの主張をしているという。(井部正之)

【関連写真】建物周辺はアスベストで汚染されていた

◆報告書に煙突のアスベスト記載
不適正作業があったのは同市浦和区本太にある高齢者施設だった建物(鉄骨造2階建て)の解体工事。施工を請け負っていたのはエコ・ベスト(埼玉県狭山市)。

建物北側の道路に面して直径70センチメートル、高さ約7メートルの金属製煙突があり、内側の断熱材にアスベストが使われていた。本来なら大気汚染防止法(大防法)や労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)で定められた届け出や、現場をプラスチックシートで隔離し、アスベストを外部に飛散させないよう減圧して取り除く装置を設置するなどの厳しい対策のうえで施工しなくてはならない。ところが飛散防止措置が講じられないまま、同7日午前10時から午後3時までの間に作業員がガス切断器で固定具だけでなく、煙突を輪切りに2本に切断して撤去した。

現場近くを通った住民が煙突がなくなっていることに気づいて同8日市に通報した。市は同日の立ち入り検査で不適正作業を確認。屋内に煙突の一部が残っているうえ、建物内外にはアスベストを含む断熱材の破片が散乱していたことから、その場で作業の一時停止や清掃などを指導した。翌9日にも市は現場で対策を追加指示している。

同10日、市は「石綿飛散防止対策が講じられないまま、煙突部分の解体工事が行われた」との大防法違反として、改めて作業基準への適合やそれが確認できるまで一時停止を命じた。あわせて記者発表もしている。

まず間違いなく周辺にアスベストをばらまく違法工事といってよい。市環境対策課も「法に定められた対策がなかった以上、(作業時に)飛散した可能性は否定できない」と認める。


しかも元請けのエコ・ベストが不適正作業を認識していた疑いがある

市によれば、発注者からアスベスト調査報告書がエコ・ベストに対して提供されており、煙突の「断熱材」にクリソタイル(白石綿)が10.3%含有していることが記載されていた。しかも届け出や隔離養生をはじめとする徹底した対策が必要な「レベル2(建材)」であることも明記されていた。

 

業者は認識否定の言い逃れか
機械室内の「煙突」に「レベル2」の「断熱材」があれば、法に定められた厳しい対策が必要なのはまともな解体業者なら常識だ。なにしろ2005年から義務づけられていることなのだ。市も「報告書を見れば明らかだった」と認める。

ところが同社は「ボイラー室から外部へ煙突が出ており、室内部分のみ石綿が含有されているものと認識し外部煙突部を撤去してしまいました」と信じがたい主張をしている。

採取箇所は煙突のどこか明確でないのかもしれないが、屋内でアスベストを含む断熱材が必要であれば、屋外でも同様の施工と判断するのが当たり前だ。まして切断前には煙突内部を確認するため、気づかなかったとは信じがたい。

当初現場に掲示された事前調査結果には「石綿含有成形板」しか記載されておらず、届け出などが必要なレベル2の断熱材が省かれていたことからも最初から違法工事をするつもりだったことが疑われる。

市は「疑問なところがたしかにある」と慎重に調べる方針。

調査報告書にはっきり煙突の断熱材にレベル2のアスベストが含まれていることが記載されている以上、同社の主張はあまりにも言い訳じみている。現状では高額な除去費用を浮かせるための露骨な手抜き工事の疑いが濃厚だといわざるを得ない。