コラム
「すべての国の友好と親善」

オリンピック憲章はどこへ

57年前の「第18回オリンピック大会感謝状」


私の手元に古ぼけた感謝状がある。「TOKYO 1964」「第18回オリンピック大会感謝状」という表題で、本文は「オリンピックの準備運営に参会し事業達成に寄与されたことを深く感謝します。」となっている。
私は小学校6年生で、ボランティアというより勤労奉仕だったが、オリンピックにコミットしてい
た。世田谷にいた私は駒沢競技場の内外にある無数のポールに各国の国旗を早朝に掲揚し、夕方には降ろすという仕事を雨の日も風の日も約1カ月間、従事していた
小学生にとっては容易ではなかったが、その当時は小学生に重労働させるのは問題ではないか、ということは誰も言わなかった。私も各国の国旗のデザインを覚えるのが楽しみで不満はなかった。
またコキ使われるだけではなく競技見学の機会もあった。

 

忘れられない棒高跳び、
ハンセン(米国)とラインハルト(西独)の熱戦

 

今でも忘れられないのは旧国立競技場で開催された棒高飛び決勝戦だった。米国のハンセンと西独のラインハルトが深夜に及ぶ熱戦を展開し、最後にはハンセンが優勝した。米国と西独は大応援団を送り込み、観衆の多数を占める日本人も両選手の死闘に大きな声援を送っていた。私はその場にいてスポーツを通してすべての国の友好と親善を願うというオリンピック精神を多少、理解できたような気がする。


それから57年の歳月が流れ、再び東京オリンピックが開会した7月23日、私は千駄ヶ谷駅前でオリンピック中止を要求する集会に参加していた。


これほど非常識で非人道的、腐敗した無様な代物はもはやオリンピックと言えないからである。
2018年にオリンピック・パラリンピック担当大臣に任命された桜田義孝氏はオリンピック憲章を知っているかという質問に対して、話には聞いているが、よく知らない、と答えたが、桜田氏は正直なだけ、まだましな方だった。

 

57年後、オリンピック中止要求集会に参加
 

「オリンピッグ」というテーマで渡辺直美さんが豚に変身するというアイデアを持ち出した電通の佐々木宏氏、障害者を虐待した事実を武勇伝のように吹聴した小山田圭吾氏、ナチスによるユダヤ人大虐殺をジョークにした小林賢太郎氏などが、組織の中枢で企画立案をおこなっているという信じがたい実態が判明した。こうした驚くべき事実にも平然としているのが、組織委員会の実務総長である武藤敏郎氏である。30年以上前だが、武藤氏が大蔵省の課長をしているころ、私は勤務している金融機関の専務理事から武藤氏について聞いたが、評価は決して良いものではなかった。

迎賓館でバッハ歓迎会が開かれた際、抗議活動には私も参加したが、女子学生が「たくさんの人がコロナのために職を失い、重い症状に苦しみ、家族を失っているのに菅、橋本、丸山、小池などがこの宮殿のような建物でバッハ歓迎会を平然と開いている。私はこのことを一生忘れることが出来ない」とスピーチしていた。
 

10万人を犠牲にした「インパール作戦」を連想
 

迎賓館と抗議する市民との間には、多数の機動隊が兵馬俑のように並んでいたが、彼らのなかにはコロナ感染者も出ているようだった。
オリンピックはコロナ感染者が急増しているなかで、強行されているが、それは10万人の戦死者、餓死者を出しながらおこなわれた無謀なインパール作戦を連想させる