《『月刊 救援』から》
 ◆ 「死にたくないけど死んでしまう」
   貧困非常事態宣言発令中!

反貧困ネットワーク事務局長 瀬戸大作


 ◆ 「新型コロナ緊急アクション」設立

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、拡大する貧困問題を解決するために、私が事務局長を担う反貧困ネットワークが呼びかけして、「新型コロナ緊急アクション」を昨年三月二四日に設立、現在では四〇団体の参画で活動をすすめている。
 「新型コロナウイルス災害緊急ささえあい基金」も四月一六日にスタートさせた。現段階で、市民からのカンパで約一一〇〇〇万円が集まり、五〇〇〇万円を給付している。

 ◆ 若者、女性の貧困

 緊急アクションの相談フォームに、連日のように届く
   「所持金か数百円しかない」
   「仕事を解雇され寮から追い出されて、路上生活になった」
   「何日も食べていない」
   「このままては死にたくなくても死んでしまう」
 などの悲痛なメール


 それに対して、私たちは、相談者が待つ現地に向かい、「新型コロナウイルス災害緊急ささえあい基金」から、当面の生活費と宿泊費をお渡しながら、その場でアセスメントをおこない、数日後の生活保護申請同行とアパート入居までの支援や、必要な福祉制度に繋いでいる。
 そこから寄せられる「住まいかない」「所持金がない」などのSOSは、一二月まででのべ三八五件にも及んでいる。
 申請同行せずにひとりで福祉にいくと、収容所のような施設に入所させられ、しばらく施設から出ることかできないからだ。そのような活動をほぼ休むこともなく、九ヶ月も続けている。


 ◆ 【相談者の傾向】

* 所持金が一〇〇〇円を切った状態でのSOSか過半数を超える。

* 年越し派遣村には、二〇代はほとんどいなかった。三〇代もわずかで、圧倒的に多かったのは中高年。しかし今、「ホームレスになった」とSOSメールをくれる中でかなりの割合を占めるのが若い世代。八○%以上が二〇代~四〇代。

* 以前からネットカフェなどで暮らし、日雇い及びスポット派遣て収入を得ていたが、コロナで収入が途絶え、野宿生活を強いられる。当初からアパートを借りる費用がなく、数年ネソトカフェで暮らしながら、生活していた。

* さまざまな背景から公的な福祉サーヒスや仕事・住まいを失ったり、アクセスできない状態におかれ、社会的孤立を抱えている方々の多くが「音声通話可能な携帯電話を失っている」状況であることが判明している。生活が困窮し携帯電話料金を払えなくなった人らを対象に、「つくろい東京ファンド」がスマートフォンの無料貸し出しを始め、「新型コロナ緊急アクション」でも利用している。

* 緊急給付以降、仕事に期待していたが、仕事が入らず、再SOSが来て、生活保護中請をおこなう事例が増えている。

* 生活保護申請における「扶養照会」などで親や親族に知られたくないと生活保護利用を躊躇する人が多い。義務であるような言い回しをする自治体、担当者か多い。

* 無料低額宿泊所、自立支援施設の劣悪な状況に耐えられず、退所、失踪経験者が、相談者も多い。

* 親も貧困で頼れないというケースもあれば、シンクルマザー家庭も少なくない。こうした事実を見ても、やはり「家族」は急速に、セーフティネットとしての機能を失つている。

* 一二月以降、家賃滞納による住居追い出し、強制退去案件が急増している。

* 一人暮らしの大学生の給付か急増している。「コロナ災害」により、バイト先の飲食店が潰れてしまい、家賃の支払いに困っている。

* 女性からのSOSが急増している。全体の二〇%を占める。八○%以上が一〇代と二〇代で占めている。女性は宿泊、飲食、性風俗、小売りといった業種に非正規て就いている割合が高く、コロナ禍による解雇の影響を強く受ける。四〇代~の世代は突然のコロナ災害下の貧困で生活困難に直面している。

 私が緊急支援や生活保護申請同行で出会った方々も、二〇代から四〇代が大半で地方から首都圏にでてきた方です。
 地方では仕事がなく東京にでてきたが非正規や派遣の仕事しかなかった。アパートも借りれず、寮付き派遣て住まいを確保するしかなかった。ネットカフェで暮らすしかなかった。これって「自己責任」でしょうか!

 「自助・共助・公助」菅首相が強調しています。
 「自助」とは「自己責任で自分てなんとかしろ」
 「共助」とは、「一家心中するまで家族で助け合え」「共倒れするまで地域で助け合え」
 「公助」は、「何もかも失わないと公的福祉は機能しないからやっぱり自己責任でなんとかしろ」


 ◆ 所持金が一〇円しかない

 私が「新型コロナ緊急アクション」を起ち上げようと考え、「反貧困緊急ささえあい基金」を起ち上げ、多くの市民に呼ひかけて寄付金を寄せていただいて緊急宿泊費と緊急生活費をお渡ししながら、生活保護や福祉制度に繋げる活動を始めたのは、困窮者に冷たい日本の福祉制度が解っていたからだった。「行政の下請け」を支えあうことで解決しようと考えたわけではない。

 でもあまりにも酷くないか!
 所持金がなくて「死にたくないけど死んでしまう」と悲鳴をあげていて、やっと生活保護申請の窓口に来たのに、様々な理由を並べて追い返すような対応を連発したり、劣悪な貧困ビジネスの温床である無料低額宿泊所に押し込んだり、生活保護決定が下りるまでの間、まともな仮払金さえ拠出せず、民間の善意で寄せられたフードバンクの食糧を少量配り「保存食とカップヌードルを食べて食いつなげ」と言う。
 アパート探しも責任を持っておこなわす私たちに丸投げする。口から出るのは「アパートはありません、施設にいってもらうしかありません」。

 私たちはアパート探しから引っ越し作業、家具什器を揃え、携帯電話まで準備するこれって民間団体がやるべきことですか
 ささえあいの連帯社会を愚弄して、新自由主義で弱者が切り捨てられても良しとした政治の責任です。
 国や政府は、生存権を補償してください。
 困窮者にまず住まいを補償してください!
 私たちは「行政の下請け」組織ではない。
 今日も明日もSOSを受けたら「所持金が一〇円しかない。死にたくないけと死んでしまう」と倒れそうになった人に会いにいく。
 でもこの仕事は政府の仕事です!

『月刊 救援』(2021年2月10日)