=たんぽぽ舎です。【TMM:No4109】「メディア改革」連載第52回=
 ◆ 支持率急落で「考えていない」緊急事態宣言を発出

浅野健一(アカデミックジャーナリスト)


◎ 2021年も、早くも3週間目に入った。今年も、叛原発運動を頑張り、人権とデモクラシー(人民による統治)を前進したいと思う。私の新年の抱負は「浅野健一のメディア批評 )」にアップしているので、読んでもらいたい。
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/25212652.html

◎ たんぽぽ舎の引っ越しもあり、連載をしばらく休んでいたが、再開したい。
 今年最初のテーマは、菅義偉首相とメディアだ。
 菅氏の記者会見について、1月15日、ハーバービジネスオンラインに「台本を読むだけの“茶番劇”」と題して記事を書いた。
 16日には、「フリー記者を排除し、事前通告された質問と再質問禁止」と題して続編を書いた。
https://hbol.jp/236801?cx_clicks_art_mdl=1_title
https://hbol.jp/236745?cx_clicks_art_mdl=2_title

 ◆ コロナ禍で無為無策の菅政権を追及しないメディア

◎ 菅氏はこれまで、国内で6回記者会見している。


 最初の会見は、昨年9月16日の就任会見(30分)。
 その後、12月4日の国会閉会前日に会見(50分)した。79日ぶりの会見だった。
 菅氏は会見を嫌い、内閣記者会(正式名・永田クラブ)の常勤幹事社(19社)とのオフレコ懇談会(会食)、「グループインタビュー」などでメディア対応をしてきた。
 しかし、新型コロナ感染の第3波で、12月25日に会見(55分)を行い、1月4日には年頭会見(30分)を開いた。1月7日には、「考えていない」と言ってきた特別措置法に基づく緊急事態宣言を1都3県に発出せざるを得なくなって会見(52分)し、13日には対象地域に大阪など7府県を加えるタイミングで会見(50分)した。
 安倍晋三前首相は昨年2月末から6月までコロナで、計6回会見を開いている。

 菅氏は1月13日の会見前のコロナに関する政府対策本部で、7府県に追加発令する際、手元の紙を読み間違えて、「福岡県」を「静岡県」と言った。テレビ中継が入った中での信じがたい言い間違いだったが、その場で誰も助言せず、西村康稔担当相が会議終了後に訂正した。
 会見でも、冒頭発言と同じことを何度も繰り返し、ちぐはぐな返答が目立った。
 菅氏は約8年の官房長官時代、1日2回の会見をこなしてきたので、記者対応に慣れているはずだ。
 しかし、首相の補佐役の会見は事務的でよかったが、国のリーダーは自分の言葉で、国家像を語る必要がある。「回答を控える」「仮定の質問には答えられない」では済まない。
 菅氏は裏方で政治を動かしてきた人物で、滑舌が悪く、社会科学を学んでいないから、スカスカの発言しかできない。会見での言葉が市民に全く響かない。字幕がないと、何を言っているのか分からない
 安倍前首相もプロンプターを使って棒読みだったが、会見前に朗読の猛練習をしていた。菅氏は発生練習もしていないのだろう。


 ◆ キシャクラブ廃止・広報センター設置を衆院選争点に」

◎ 記者との質疑応答でも、質問の時から手元に置いた分厚い台本を読んでおり、回答も朗読するだけの茶番劇だ。
 質問する記者会の記者たちは、官邸報道室へ質問内容を事前に提出している。「前取り」と呼ばれる質問事項の提出をしない記者は、内閣記者会の記者でも指名されない。
 官邸での首相と官房長官の記者会見は、形式上、内閣記者会が主催している。しかし、自前の事務局、スタッフがおらず、HPがないので、クラブの運営はすべて官邸報道室が“代行”している。会見の日時の設定、参加者資格・参加人数の決定、当日参加者の選定などは報道室に丸投げしている。
 首相会見の司会・進行役は山田真貴子内閣広報官(元総務省審議官、安倍政権の13年から15年まで首相秘書官)が務める。
 内閣記者会の規約は、私のブログ「浅野健一のメディア批評」に載せている。規約では、首相会見は記者会が主催すると明記している
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/25279252.html

◎ 1月15日の北海道新聞(デジタル版)によると、菅会見での幹事社以外の質問で、「道新」、「東京新聞」など5社は6回の会見で指名されたことが一度もない
 一方、読売新聞、産経新聞、京都新聞、共同通信がそれぞれ3回ずつ指名されている。
 官邸報道室(仮名)は道新の取材に対し「偶然だ。全く意図していない。出席者がなるべく広く質問できるよう努めている」と説明しているが、とても信用できない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fa116e472949e01cd53d15b76f4247a120af4056


 ◆ 検査・補償拒み、感染者に刑罰科す「公安警察」体質

◎ 昨年末からの医療崩壊は、菅首相が人民の命と暮らしを守ることを軽視し、「経済」維持と東京五輪開催を最優先したための人災だ。
 菅政権は二階俊博自民党幹事長が会長を務める全国旅行業協会のために「Go To」トラベルを強行し、「Go To」イート事業も進め、首相自らが連日、高級飲食店で会食を重ねてきた。
 危機管理能力がなく、いまだに、感染阻止のためのPCR検査の拡大、休業補償はやろうとしない。

 一方、菅政権は12日、特措法の改定原案を自民党の会合で示した。原案では、宣言の発出前に「予防的措置」を新設し、入院受入拒否の病院名の公表、時短に従わない飲食店などに過料を設ける。
 また、感染症法などの改定で、感染者の入院拒否に刑事罰や罰則を設ける方針だ。

◎ 菅政権の中枢にいる杉田和博官房副長官・内閣人事局長(元神奈川県警本部長)、北村滋国家安全保障局長(元兵庫県警本部長)、瀧沢裕昭内閣情報官(元滋賀県警本部長)の元公安警察官僚三人の発想だ。
 菅氏は官邸の一部の職員、スタッフの間で、「もうすぐ特高(特別高等警察)が来る」「いま特高はどこにいる」などと、「特高」というあだ名で呼ばれているという。

 JNN世論調査(9,10日)では、菅内閣を支持しないは55.9%、支持するは41%だった。NHK、時事通信、毎日新聞の最新の調査でも支持、不支持が逆転し、「政府のコロナ対策を評価しない」が60~70%に達している。
 「週刊現代」最新号は「菅さん、あなたに総理は無理だったね」、「週刊ポスト」は「『さらば菅総理』それが最善のコロナ対策だ!」という見出しを掲げている。
 10月までにある衆院選で、自民党は菅氏を「党の顔」として戦えないと判断しそうだ。