◆ 鳥インフルエンザは鶏の反乱? (週刊新社会)
昨年の末、鶏卵大手「アキタフーズ」(広島県福山市)の元代表が、2018年11月に農相だった自民党の吉川貴盛衆議院議員(当時)に、鶏の飼育に関する家畜福祉の国際規格案に反対するよう現金を渡したと報じられた。
日本で家畜福祉の国際規格案が採択されれば、国内の鶏卵業者の95%が対応できず、経営に大きな打撃を受けるとのことだ。
その後、農水省は規格作りを進める国際獣疫事務局(本部パリ)に反論、その後規格案は修正されたという。
大手鶏卵業者には百万羽近いとてつもない規模の経営もある。
ウインドウレス鶏舎が主流で窓が全く無いのだ。換気扇が唯一の生命線で、鶏は体温が40度もあり呼吸も大きい。盛夏に止まればたちまち熱中症でアウトだ。
鶏舎内はほこりまみれで湿気も高い。それで、呼吸器系の病気も多いと聞く。
狭いケージに閉じ込められた鶏がストレスで仲間の鶏を突かないよう、くちばしは丸く短く焼き切られている。
窓なし鶏舎なので冬も暖かく寄生虫も絶えない。
鶏は動物なのに一生太陽光に当たらない。
薬剤なしでは鶏は生きていけないのが現状だ。
鳥インフルエンザが西日本で猛威を振るっているが、厳重に防疫体制を備えている鶏舎で発生している。
翻って、1000羽以下の小規模な私たちの養鶏は、年中太陽光の届く開放鶏舎。ケージではなく土間での平飼いだ。
一坪あたり10羽以下の薄飼いで砂浴びもできるし、産卵は少し高い所の産卵箱で、就寝は止まり木で。
真冬はマイナス5度に下がるが、鶏は元気で産卵もほとんど下がらない。盛夏の高温には少し弱いが、鶏も夏ばてして当たり前だ。
家畜福祉のすべてをクリアしているわけではないが、うちでは薬剤ゼロでも38年間病気もゼロだった。
鳥インフルエンザに100%罹患しないとは言い切れないが、決して恐れてはいない。
(兵庫県有機農業研究会HOAS理事長 牛尾武博)
『週刊新社会』(2021年1月12日)
アキタフーズ、重要関係者リストに元職含む衆参10人 現職議員が現金受領認める
吉川貴盛元農相(中央)に要望書を手渡す秋田善祺元代表(左)と西川公也元農相=農林水産省の大臣室で2018年11月12日、西川元農相のフェイスブックより
養鶏政策に絡んで元農相の吉川貴盛被告(70)=収賄罪で在宅起訴=が現金を受け取ったとされる汚職事件で、大手鶏卵生産会社「アキタフーズ」が、贈賄罪などで在宅起訴されたグループ元代表の秋田善祺(よしき)被告(87)と懇意な現職や元職の国会議員10人を「重要関係者」としてリスト化していたことが、関係者への取材で判明した。うち1人が取材に秋田元代表からの現金受領を認め、授受の場面について明かした。
リストは2020年5月15日現在の重要関係先とされ、計92人の名前や肩書、連絡先が記載されていた。このうち10人は現職や元職の衆参国会議員で、農水族議員や、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に関心を寄せる議員、アキタ社の地元・広島の選出議員だった。吉川元農相と西川公也元農相(78)も含まれていた。他は、広島の地方議員や農水省幹部職員、養鶏業界の関係者らだった。
国会議員については、秋田元代表が現金提供や接待をしていた相手をリスト化した可能性がある。東京地検特捜部は、こうしたリストや、アキタ社から政界工作のため引き出された資金の記録などを押収し、実態解明に当たったとされる。
◇「お祝いです」差し出した封筒に現金
リストに名前があった現職の自民党参院議員は毎日新聞の取材に、秋田元代表と会食し、現金を渡された経験があると証言した。
この議員によると、秋田元代表と面会したのは18年冬。東京・日比谷の高級中華料理店だった。議員は当時、党の農水政策の役職を務めており、西川氏を通じ、秋田元代表から「党の役職に就いたお祝いをしたい」と誘われたという。
会食の途中、秋田元代表が「お祝いです」と封筒を差し出した。中には現金30万円が入っていた。議員が「現金はいただかないようにしています。そのような立場でもありません」と断ったところ、「ポケットマネーだから受け取って」と押し返されたという。その場にいた西川氏からも「もらっておきなさい」と迫られ、議員は「派閥が主催する次回のパーティー券を買ってください」と応じて場を収めたという。
会食後、議員は30万円分のパーティー券と領収証をアキタ社に届けた。秋田元代表からはその後、追加で派閥の口座に20万円が振り込まれたという。
議員は秋田元代表とはその後も、養鶏業界幹部や他の農水族議員とともに会食した。ただ、要望や陳情は受けたことがないとした。秋田元代表が農水族議員への接近を図ったとみられる。議員は「現金を配れば政治家は喜ぶと思っていたのではないか。近づいてはいけない人だった」とした。
起訴状によると、秋田元代表は吉川元農相に大臣在任中の18年11月~19年8月、3回にわたり現金計500万円を提供したとされる。