《労働情報-特集:“コロナ事態”下の労働運動【農業】》
 ◆ 国連「家族農業の10年」に日本の家族農業壊滅の危機

本田克巳 全日農京都府総連合会


 TPP11や日欧EPA、日米貿易協定等、行き過ぎた「自由貿易」により日本の家族農業は壊滅の危機を迎えようとしています。
 全日農は、TPP体制の本質は、家族農業を潰し、多国籍企業による日本農業の乗っ取りと捉えています。

 日本農家の平均的な時給は約180円と言われています。8時間働いても一日1440円で、これでは農業で暮らしていけないことは明白です。
 しかし、農業収入だけで暮らしていけないのは日本だけではなく、ヨーロッパやアメリカの農民も同じなのです。
 このためヨーロッパの農民は、例えばフランスの農民は、所得の8~9割は補助金で営農しています。


 アメリカの農民も目標価格と市場価格との差額について不足払いを受けています。
 今、世界でもっとも家族農業に冷たい国は、日本かもしれません。

 山田正彦元農林水産大臣によれば、このままでは食料自給率は37%から14%まで下落すると予測しています。
 そこまで下がれば、遺伝子組み換えやゲノム編集、成長ホルモン剤などの危険な農畜産物が増大し、安全な食を選択することができなくなります。

 今回の新型コロナ禍により、行き過ぎた「規制緩和(一部強化)」による医療と雇用や暮らしの脆弱性を浮き彫りにし、ロシア、ウクライナ、ベトナム等の食料輸出国に、食料は自国優先という「食料ナショナリズム」が台頭し、マスク不足騒動が、改めて食料自給の大切さを教えてくれています。
 しかし、コロナ禍で学校給食やホテルの休業などで国内農産物も需要が減り、緑茶の煎茶価格は昨年比の2割減です。

 一方、アメリカで、除草剤ラウンドアップ(主成分グリボサート。元来はボイラー管洗浄剤)でリンパ腫になったジョンソンさんが、メーカーであるモンサント社相手に訴訟を起こし、2018年8月、約320億円(2審で約86億円に減額)もの損害賠償金の判決を勝ち取りました。

 

 


 莫大な賠償金の理由は、モンサント社がラウンドアップでガンになる危険性を隠していたからです。

 この裁判により、世界的にラウンドアップ使用禁止の流れになっていますが、日本は野放し状態です。
 京都はラウンドアップ不買運動に取り組んでいます。
 また、アメリカ等では小麦の乾燥のために、ラウンドアップで小麦を枯らして乾燥しています。
 このため輸入小麦に残留するグリボサートが増大しており、これに合わせて厚生労働省は2017年12月に残留基準を6倍に緩和しています。

 共謀罪対象法277の中に、種苗法、森林法、水道法と規制緩和の分野があり、後戻りさせないと言うグローバル企業の意思を感じます。

 このような中、2018年12月、国連は「小農の権利を守る宣言を採択し、小農・家族農業の価値と役割を再評価し、世界各国に対し、家族農業や協同組合への支援を呼びかけています。
 そして、昨年から国連は2014年に続く、「家族農業の10年」が始まっています。
 私たちは、これに依拠して、日本政府の家族農業切り捨て政治の転換を求めていきます。

『労働情報』(2020年7月)

 

 

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