《労働情報-特集:“コロナ事態”下の労働運動【新聞】》
◆ テレワーク継続と「知る権利」 減紙に抗し今こそ「報道」を
月岡岳 新聞労連書記長
新型コロナウイルスは、新聞業界も大きく揺るがした。
市民への正確な情報提供や政府、自治体が適切に権限を行使しているかの監視が重要になった一方、新聞に携わる労働者とその家族の安全確保が課題となった。テレワークの推奨、感染時の休暇、賃金補償など、雇用と健康を守る取り組みが相次いだ。
全国87組合が加盟する新聞労連本部のアンケート(約40組合回答)では、記者や広告、販売といった外勤部門は全てでテレワークを導入。ウェブ会議システム、電話による取材などが進んだ。
レイアウトや見出しを担当する整理を含む内勤部門は、作業スペースの分散、複数の班を作っての出勤などで対応。在宅と本社勤務を1~3週間ごとに入れ替えた社もあった。
自身や家族の感染、学校閉鎖による子どもの見守り対応では、特別有給休暇制度を20社以上が新設した。
雇用調整助成金申請に伴う労使協定も10組合近くが締結。
制度上は8~10割支給となるが、事業縮小による休みは基本給や手当を全額保障する内容がほとんどだった。
ただ、これらは緊急措置の意味合いが強く、組合も交渉を持って内容を精査できたとは言い難い。
テレワークは、現場任せの運用が大半。記者クラブ詰めの記者の中には、政府や自治体の会見に出席し、「3密」状態で取材を続けたケースがあった。
「勤務時間の把握や残業取り扱い、休暇の取得法で混乱した」
「繁忙を極める部署がある一方、名ばかりの在宅勤務が中心という部署があり、繁閑の差が大きかった」
などの指摘も寄せられている。
雇用調整助成金活用でも、ある社は社員を二分しての一時休業を提案。その際の給与は6割とする内容で、組合は交渉を続けて全額保障を認めさせたが、こうした提案自体が問題だ。
緊急事態宣言は解除されたものの、第2波を想定した今後が重要だ。
テレワーク継続へ公平性が担保された制度設計、災害対策マニュアルの見直しやガイドライン策定、出社せざるを得なかった従業員への「危険手当」創設など課題は多岐にわたる。経営状況の監視も必要となる。
日本ABC協会加盟社の日刊紙4月部数合計は、朝刊が前月から33万8433部減の3219万1150部。発行部数自体は1990年代後半からなだらかに減少しているものの、前年同月比の減少幅はマイナス5・59%と近年にない状況となっている。
広告も3月のデータでは、前年同月比マイナス10・2%。2桁の落ち込みは、東日本大震災が発生した2011年3月以来となった。
多くの組合はリーマンショック以上の影響があるとみているが、小規模紙、地域紙はより深刻だ。
既にコロナ禍によって経営譲渡を模索している社があるほか、大幅な賃金カットを受け入れざるを得ない組合が出てきている。
新聞労連は4月の定期大会で「安全性」を担保しながら、市民の「知る権利」に資する持続可能な新聞発行・報道の態勢作りを求める特別決議を採択した。それに向けた対応を労連全体で模索していく。
『労働情報』(2020年7月)
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