◆ 香港の国歌法 (東京新聞【本音のコラム】)

前川喜平(まえかわきへい・現代教育行政研究会代表)


 香港立法会が制定した「国歌法」。
 五日本紙によれば、中国国歌の替え歌を禁止し、学校や公的行事のほか、立法会の議員宣誓などの際に斉唱を義務づけ、違反者には禁錮刑と罰金を科すという
 言論の自由の制約が懸念されるほか、立法会の議員資格や立候補資格を取り消す口実にされるという見方もあるという。

 日本にも一九九九年に制定された国旗国歌法があるが、義務づけ規定や罰則はない
 しかし、学習指導要領は八九年改訂以降、入学式・卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱の指導を義務づけている
 二〇〇三年には東京都教委が「教職員は国旗起向かって起立し、国歌を斉唱する」と通達した。


 一一年には大阪府「教職員は起立により斉唱を行う」とする条例を制定。一三年には府教育長が、起立斉唱を目視で現認(口元チェック)するよう通知した。

 思想良心の自由を侵すとの訴えに対し最高裁は、起立斉唱の職務命令には必要性・合理性があると認めた。僕は文部官僚だったが、個人としては最高裁の判断はおかしいと思っている。

 自民党改憲草案には「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」とある。こんな改憲が行われたら、国旗国歌法に香港の国歌法のような罰則を設けることも可能になる
 自由は普遍的なものだ。自由を侵す法は、香港でも日本でも許されない

『東京新聞』(2020年6月7日【本音のコラム】)

 

 

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