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3/18(水) 11:30配信AERA dot.
桜を見る会巡る論戦 「料理は無料ですか?」の問いに安倍首相またしどろもどろ〈AERA〉
「桜を見る会」前夜祭について、立憲・福山哲郎幹事長が、ある明細書を示しながら質問すると、安倍晋三首相はいつにも増して動揺した。苦しい答弁に対しては、自民党関係者からも疑問の声が上がっている。AERA 2020年3月23日号の記事を紹介する。
【写真】参議院予算委員会で福山幹事長が突きつけた明細書
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「出さない」のではなく「出せない」のではないか──。
桜を見る会の前日にホテルニューオータニで行われた「前夜祭」の領収書、明細書のことである。
コロナウイルス感染の話題で一色だった3月4日の参議院予算委員会。立憲民主党、福山哲郎幹事長の質問に対し、答弁に立った安倍晋三首相がかつてないほどの動揺を見せる一幕があった。連立を組む公明党のある議員は、振り返る。
「桜関連の問題になると、釈明に追われる場面がしばしばだが、あの慌てようはよほど痛いところを突かれたのだろう」
一体、どんな質問だったのか。
その前に、過去の桜を見る会前夜祭に関する安倍首相の答弁を整理しておく。
「夕食会の主催者は安倍晋三後援会であり、同夕食会の各種段取りについては、私の事務所の職員が会場であるホテル側と相談を行っております。(中略)その過程において、ホテル側から明細書等の発行はなかったとのことであります」(2019年11月20日参議院本会議)
「(夕食会の価格設定については)会場費も含め800人規模、1人あたり5千円とすることでホテル側が設定したものであり、ホテル側において当該価格設定どおりのサービスが提供されたものと承知しております」(20年1月22日衆議院本会議)
この前夜祭の疑惑の核心は「本当に会費は5千円なのか」だ。領収書も明細書も明らかにされていないので確認のしようもないが、仮に1人あたりの額が5千円を上回る場合、その差額を後援会が補填していれば公職選挙法違反。ホテル側が相場を下回る額で提供していれば企業からの寄付にあたるので政治資金規正法違反に問われる。
福山議員が突きつけたのは、同じホテルの同じ場所で開催された600人規模の宴会の明細書だった。ホテル側への配慮もあり飲み物の単価は黒塗りになっている。前夜祭の現場となった「鶴の間」の室料は明細に書かれている通り、18時から20時の2時間で450万円。前夜祭で動いたお金の総額は、会費5千円で800人が参加しているので「400万円」。同日の答弁で、安倍首相は消費税とサービス料は5千円に含まれていると明言。つまり、この時点で800人分の「料理」と「飲み物」の代金がどう考えても捻出できないのだ。
「総理、料理は無料ですか?」
この福山議員の質問の後、答弁に立った安倍首相は明らかに動揺した様子だった。安倍首相の発言をそのまま紹介する。
「このニューオータニのこの明細、これはニューオータニが出したんですか。ニューオータニから直接……。それは違いますよね。(中略)その中においてですね、その中において、この中身についてでございますが、これはですね、基本的にどういうこの中身になっているか」
「料理はタダですか?」という質問の答えになっていない。会場からのヤジも飛ぶ。安倍首相の発言はこう続く。
「つまり、立食なのか、あるいはこれ着席なのかということでこれかなり違うわけでありまして、(中略)言わば立食のパーティー、立食のパーティーでですね、一人一人に相当の量を出さなければいけないものと、着席、着席の量とは、これは、これはかなり根本的に私は違うのではないかということでございまして」
この回答に対して福山議員はこう畳み掛ける。
「これ、2時間の正規の料理、料金なので、立食も着席も変わりません。部屋代ですから、全く施設利用料は変わりません」
会場の与党席からも失笑が漏れる。
「うちも政治資金パーティーなどホテルはよく使いますよ。ただ、明細書もなければ、領収書もない、などということは絶対にありえない。なぜ、この前夜祭だけをそうしたのか。これは、違法かどうかという以前に脱法と疑われても致し方がない」
ある元自民党幹部はこう首をかしげ、続ける。
「自らは潔白だと証明できるのは首相本人しかいない。であるならば、その確証となるホテル側の明細書、もしくは領収書を地元に問い合わせて国会に提出し、自らにかけられた疑惑を払拭すればいいだけのこと」
(編集部・中原一歩)
※AERA 2020年3月23日号より抜粋