◆ 安倍政権による緊急事態宣言、新型インフルエンザ対策特別措置法改正に異議あり! (レイバーネット日本)
海渡 雄一(弁護士)
昨日(3/2)の参院予算委員会で、安倍首相が新型インフル特措法の改正と緊急事態宣言を発すると発言しました。野党の立憲民主党の議員の方々も賛成される方向性だと聞き、大変な危機感を持ちました。
この法律と、それを安倍政権が行使することの問題点について、与野党の心ある国会議員の皆さんは自覚してほしいと考え、次のとおり、意見を表明します。
この法律では次のような措置が可能となります。
全国的かつ急速なまん延により、国民の生活及び経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態となった場合、内閣総理大臣は「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を行う(第32条)。
新型インフルエンザ等緊急事態において、以下の措置が可能になる。
外出自粛要請、興行場、催物等の制限等の要請・指示(潜伏期間、治癒するまでの期間等を考慮) 都道府県知事は住民に対し外出の自粛を要請できる(第45条第1項)。
また、罰則はないものの、多数の者が利用する施設(学校、社会福祉施設、建築物の床面積の合計が1,000平方メートルを超える劇場、映画館や体育館など)の使用制限・停止又は催物の開催の制限・停止を要請することができる(第45条第2項)。
正当な理由がないのに要請に応じないときは、特に必要があると認めるときに限り、要請に係る措置を講ずべきことを指示できる。外出自粛や使用制限の期間は、新型インフルエンザ発生後の最初の1-2週間が目安とされている。
住民に対する予防接種の実施(国による必要な財政負担)
医療提供体制の確保(臨時の医療施設等) 臨時の医療施設を開設するため、土地や建物を強制使用することも可能である(第49条)。
緊急物資の運送の要請・指示
政令で定める特定物資の売渡しの要請・収用
都道府県知事等は、新型インフルエンザ等の対応に必要な物資の売り渡しを業者に要請することができ、不当に応じない場合は収用することも可能である(第55条)。また、不当に売り渡しに応じなかった業者に対して、罰則を適用することもできる(第76条)。
埋葬・火葬の特例
生活関連物資等の価格の安定(国民生活安定緊急措置法等の的確な運用)
行政上の申請期限の延長等
政府関係金融機関等による融資
昨日の投稿でもふれたように、個人の自由や権利の制限につながるおそれもあることから、日本弁護士連合会は2012年3月に反対声明を出しています。この声明を添付します。日弁連声明(pdf)
http://www.labornetjp.org/files/0303seimei
この法律は民主党政権時代に作られました。
第5条において、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものでなければならないと定められていますが、はたして、このような自制が安倍政権の下できちんと働くかどうかをよく考えてほしいのです。
確かに、抑制の取れた政府が、正確な情報を把握したうえで、このような法律を適用することができれば、私も反対しません。民主党政権の時は弊害は出ませんでした。それは、この時の政権には抑制が効いていたからです。
台湾では1月15日に指定感染症に指定し、中国からの人の流れを止めました。
日本政府は強い警鐘があったのに、政令改正は1月31日で施行は2月7日という信じがたいスピードで、批判を浴びて施行だけは前倒しされました。この間、武漢からの観光客まで受け容れていたのです。
それに付け加えて、ダイヤモンドプリンセス号からの下船者を、伝染病予防法で隔離すべきだったのに、隔離しないで帰宅を認めたために、大きな感染拡大をまねいたのです。明らかに政府の失策に基づく人災です。
安倍政権の政策の最大の問題点は、検査させない政策で、まともに感染状況を把握しようとしていません。重症化するまで、検査しないなどという異常な政策が、今も改められていません。
そして、専門家はおろか、文科大臣のいうことも聞かないで、突然全国の休校措置を要請したりしているのです。科学的根拠と関係なく、権力を行使しているのが安倍首相です。
安倍政権は、これまでのコロナウィルス対策の失敗をこの法律改正で吹き飛ばそうとしているのです。
安倍政権にこのような立法を与えることは、あまりにも危険です。政府の対策を批判する集会すら開けなくなります。
当時民主党に属しておられた政治家の多くが、自分たちの作った法律だから大丈夫と軽信するのはあまりにもナイーブすぎます。
安倍政権に強大な権限を与えることは、戒厳令に等しい状況をつくられてしまう危険性があるのです。独裁政権と化した安倍政権の永続化につながる危険性がないかという角度から、慎重に法案を審議していただきたいと思います。
『レイバーネット日本』(2020-03-03)
http://www.labornetjp.org/news/2020/0303kaido
https://wind.ap.teacup.com/people/14754.html
「1・2週間が瀬戸際」を「春休みまで(3週間以上)」とすり替えたことによる絶望的な負担感
◆ <喝!>野党・マスコミは安倍政治判断の事実矛盾を何故指摘しない?
皆さま 高嶋伸欣です
「全国一斉休校」で大混乱の学校現場とともに、小学生の子どもだけを家に残せない就業中の保護者達の窮状を伝える新聞・TVの情報に、何もできない自分を歯がゆく思っています。
2日から始まったこの窮状について見聞きしながら、不思議でならないのが、安倍首相の今回の「政治的判断」の明白な矛盾を、マスコミも野党も明確に指摘していないことです。
それは、専門家会議による「これから1,2週間が瀬戸際」とのまとめ(2月24日)を根拠にした安倍首相の「政治判断」の「休業期間」が「3月2日から春休みまで」の、3週間以上にすり替えられているという点です。
この長さが保護者達に絶望感さえ及ぼしていると、私には思えるのです。
① 首相は、ことを急いだ最大の根拠として「専門家の知見によればこれから1,2週間が急速な感染拡大に進むか収束できるかの瀬戸際との見解が示された」ことを繰り返して挙げ、「2日から春休みまで」としたのは「まさに1,2週間ということで判断した」と答弁(3月2日、参院予算委)しています。
② ここで根拠とされた「専門家の知見」とは、政府の「新型肺炎対策専門家会議」がまとめた「見解」の中にある一部分で、それなりに専門家としての判断をまとめたものと考えられます。
③ けれども同「知見」が取りまとめられたのは2月24日です。当然ながら「これからの1,2週間」の日数計算は、2月25日からの「1,2週間」となるはずです。
④ ところが、安倍首相は①にあるように「1,2週間」の起算日を「(3月)2日から」にすり替えているのです。
⑤ さらに本来の25日からの「1,2週間」の期末は9日(月)であるのに、それを「春休みまで」とすり替え、期間を引き延ばしているのです。
⑥ 「春休み」は、都道府県や政令都市別などで、各教委がそれぞれ決めることが多く、開始時期はまちまちです。長野県のように3月17日からというのは例外的で、大多数が3月23日以後です(ネットで「春休み」を検索できます)。
⑦ 安倍首相が当てずっぽうで勝手に「春休みまで」と言い張ったために、2月25日からの「1,2週間」のはずが「4週間」にすり変わってしまっているのです。
でもこの矛盾点を、野党が国会で追及している様子が見受けられません。そして、マスコミもです。
⑧ 小学生の児童だけを家に置いては置けないと、2日からともかく日々を凌ぐのに精いっぱいの、就労中の保護者にとって、本来の「1,2週間」である9日(月)あるいは6日(金)までとりあえず休校(休業)にされているのであれば、気持ちの上での負担感がまるで違うはずです。
其の後については改めて検討するということで、不安感や疲労感さらには頑張りの目安を得ての安心感など、救われるはずではないでしょうか。
⑨ 「春休みまで」という語が示す今回の「政治的判断」の致命的欠陥がなぜ見過ごされているのか、不思議です。
*萩生田大臣や文科省の官僚は官邸にものを言う気概がない?
*文科省記者クラブの記者たちは、「春休み」の期間についての認識がない? 文科大臣の広報係になっている?
*各地の教委の中には、この点を認識していて、「休業期間」を「1,2週間」ではなく、「(2日から)10日間程度」にしているところが少なくありません。
沖縄県内の市町村教委の大半が県教委を見習い、そのようにしています(添付可能なMLにはその一覧表を再度添付します)。
※『沖縄県内の市町村立小中学校の休校期間や卒業式の実施状況』(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/gallery/540998?ph=1
*マスコミは、「一部の学校で1・2年生の保護をうけいれています」などという希少な事例探しに集中しないで、根本の部分で首相の「政治的判断」に異を唱える行動をしている教委が全国に多数存在していることに着目する洞察力を、日ごろから修得しておいて欲しいものです。
*その洞察力から首相の判断の欠陥を突き、「休業期間」の短縮が図られるならば、どれだけ多くの人々が救われる思いになるか、知れないのです。
マスコミや政治家が頼りにならない地域では、児童・生徒と保護者や関係者が、教育委員会に「本来の『1,2週間』で良いはずです」と指摘して、休業期間の見直しを求める「請願書」(住所・氏名さえ記載してあれば書式は自由です)を出しましょう。
*請願はその地域の住民でなくてもできます。遠方に住む孫のために出す
ことも可能です。
以上 高嶋の私見です。
上記の件をすでに指摘している事例がありましたらご教示ください。
転送・拡散は自由です
https://wind.ap.teacup.com/people/14753.html
政治責任はどうなる、政治判断による独善的な全国臨時休校決定
◆ 亡国の内閣 (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
たまたまテレビで、下級生が上級生に手づくりの卒業証書を渡すシーンをみた。今春で廃校の予定だったが、この二日から全国臨時休校。それで、その日、唐突に最後の授業となった。
何年か前、小学校でミサイル訓練があった。児童たちが教室の机の下に潜らされた。
いまではバカげたエピソードのひとつにされているが、危機の宣伝に子どもをダシに使うのはよくない。
今回の臨時休校も戦車に乗ってポーズをとったり、戦闘機に乗ってご満悦、号令好きの首相が、専門家会議に諮ることなく、大向こうを狙った独善的な決定だった。
説明なしの決定だったため不満が高まった。
一月中旬にコロナウイルスが問題になってから一カ月半、ようやく首相が会見にでてきた。
が、演題左右に配置された、プロンプターの文字を読み上げるだけの演技だった。どの言葉にもひとを思う心がこもっていない。首相としての痛みも方針もない。水際での防疫の失敗への反省もない。
子どもを抱えた親たちは仕事をどうするのか。
子守りや食事やこまごまとした生活への配慮は、まったく見当たらない。
耳についたのは、万全の対策をとる決意。盤石な検査、医療体制の構築。最大限動員など、いつもながらの空疎な大言壮語。
大臣たちも危機を危機として感じず、対策緊急会議をサボっていた亡国ぶり。(ルポライター)
『東京新聞』(2020年3月3日【本音のコラム】)
https://wind.ap.teacup.com/people/14752.html